28話
お昼休みに屋上のドアに鍵がかかってないことを知る人はいないのか、屋上には誰もいなかった。だから、ここならお昼休みの時間に、石川に呼び出されることなく隠れていられると思った。
可能性が見えた。残りの一年をいじめられずに済めるという可能性が。
しかしすぐ翌日。
「春咲そんなに急いでどこに行くの?」
石川と彼女の友達は教室を飛び出そうとした私の前に立ちはだかった。
「い、石川」
「私たち話すことあるじゃん。ほら、おいで」
優しい声とは裏腹に石川は私の髪の毛を掴んで体育館の裏に引きずっていった。しばらくして体育館の裏に着くと、石川は私を壁の方へ押し付けた。そしてニッと笑いつつ近づいてきた。
「春咲昨日私が呼んだのにどっこ行ってた?」
「そ、それが」
顔が笑っていたが、その笑顔の裏面を私は知っていた。
怖くて体が震える。一年間のいじめの恐怖が骨の髄まで刻み込められていた。
だが、だからといって屋上にいたとは口が裂けても言えなかった。あそこのことを言ったらもう逃げ場がなくなってしまうから、絶対に言えなかった。
「トイレで」
「はあ!? ふざけるな!」
石川は私の左頬を叩いた。
「トイレになかったことくらい知ってる。素直に言え」
「それがぁ…」
私はそっと目を逸らした。すると石川は私の顔を掴んで無理矢理自分を向けさせた。
「言えよ。昨日どこに行った」
「……」
「言えっつのっ!」
石川は私は突き飛ばした。私は抵抗せず倒された。
「聞こえねぇのか。それとも無視? どこ行ったんか早く言えって」
「……」
私は答えなかった。いや、恐怖で声が出てこなかったかもしれない。ともあれそんな私の態度に、石川はさらにむかついたのか顔が赤くなっていた。
「このやろがあ!」
くる。いつものように私は手を上げて防御の構えを取った。だが、数の多い相手の前では無駄な抵抗だった。石川の行動を合図に、彼女と彼女の友たちは一斉にリンチし始めた。
「言えっ! 言えよっ!」
踏まれ蹴られ無理矢理に立たされて殴られた。
終わりの見えない痛みに意識が飛びかけてた時。
「美鈴、こっちに先生が来てる」
見張っていた侑芽の声がかすかに聞こえた。
「は? チッ、逃げよう」
そう言って石川グループは先生から逃げ始めた。
終わった…。
私は地面に手をついて立ち上がった。全身が痛みが走っていた。視界もぼんやりしていた。
こんな格好見られたくなかった。だから私は誰もいない屋上へと足を運んだ。
屋上には誰もいなかった。私は静かに壁にもたれかかって座った。
「痛い」
体の傷が自分の存在を主張していた。
思わず涙が出てきた。傷は痛いし、怖くて、寂しかった。
「いっそ死にたいぃ…」
もう限界だった。よくない考えが頭の中を支配してきた。
死ぬ方がマシだって。その方がずっと楽だって。ここで飛び降りたら全てが終わるって。だから死のうって。
「あの…大丈夫?」
その瞬間だった。見知らぬ男子の声が聞こえてきた。突然の声かけに驚いて顔を上げた。ぼんやりした視界の中に見たことない男子が入ってきた。彼は心配そうな顔をして私を見つめていた。




