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27話

 学校に変な噂が広まってから、私の生活は180度変わった。噂は次第に事実であるかのように人々に受け入れられていった。そのため、親しかった友達も一人、また一人と私を避けるようになり、結局私はひとりぼっちになってしまった。

 朝、教室に入ると先に来ていた友達が迎えてくれていたのに、今では誰も私を迎えてくれなかった。目が合うと視線を逸らされ、まるで透明人間のように見て見ぬ振りをされた。

 噂を消そうと努力しなかったわけではなかった。そんなことしてないって、私はそんな人じゃないっていくら解明しても、彼らの頭の中ではすでに噂が事実して固まっていて、誰も私の話を信じてくれなかった。

 一人でいくら解明しても説得力ないことに悟った私は、仙石くんに助けを求めたこともあった。


『仙石くんお願い。噂が嘘だって、みんなに言ってください』

『俺が? なんで?」


 返ってきた返事は冷たかった。


「なんで俺が、告白を振った人の頼みなんか聞かなきゃいけないんだ」

「でも、このままじゃ」

「ふーむ、春咲助けてほしい?」

「そりゃもちろん」

「じゃあ、俺と付き合え」

「な、なに?」


 戸惑った。聞き間違いだと思った。

 仙石くんの要求はこうだった。自分と付き合えば学校中の噂は全部嘘だって、美鈴が嫉妬に目がくらんであんな噂を流したってみんなに解明してやるから、自分と付き合えって言った。


『どうだ。悪くない話だと思うが』

『あんた最低だね。あんたみたいなやつと付き合うことなんて絶対ないから』


 あんな人に告白されていたことが恥ずかしくなるほどだった。

 結局仙石くんの協力を得られなかった私は一人で解明し続けた。あの噂は嘘だって、私はそんな人じゃないんだって、そんなことしてないって。でもやはり信じてくれる人は一人もいなかった。そして噂はどんどん膨らんで元とは全く違う変な噂を生み出してきた。


『春咲って男好きだって』

『前ある男子と歩くの見てた』


 そんなあり得ない噂が学校中に広まった。そのため、私に変な要求をしてくる男子生徒もいた。


『春咲って男に飢えてるんだろ。俺はどう?」


 そのたびに私はいつも黙り込んで無視した。そんなこと言われて下手に反応したらむしろ毒になるため、ただ無視するしかなかった。

 これ以外にも色々あったけど、最も耐え難しかったのは石川のイジメだった。

 最初は教科書を隠されたり、上履きを捨てられたりする程度だった。しかしだんだんエスカレートして、机に暴言を書かれたり、水をかけられたり、集団リンチされたりするのがいつの間にか日常になっていた。


『美鈴許して。私が全部わるっ」


 私の言葉が終わる前に、水酢は私の腹を思い切り蹴った。私は痛みにお腹を抱えた。


『春咲何回家ばわかるの。名前で呼ぶな。気持ち悪いから」


 石川は私の髪の毛を掴んで右の頬を叩いた。痛みが治る前に美鈴は脚、肩、腹を次々と殴りつけた。私は抵抗すらできず、サンドバッグみたいに黙って殴られるしかなかった。


 こうして私は完全にひとりぼっちになった。


 友達との会話はなくなり、学校で話す時間も減った。笑うことも少なくなった。一人でご飯を食べることが増えた。私をみる周囲の視線も変わった。冷たくて、怖かった。

 毎日が地獄だった。死にたかった。学校へ行くのが怖くて嫌でたまらなかった。トイレで一人泣いたことも何度あった。それでも家族には心配かけたくなくて家ではわざと明るく振る舞った。放課後は、その日にできた傷を隠し涙の跡が消えるまで外で一人時間を潰してから家に帰った。その度に私は「友達と遊んでた」と無理矢理笑ってごぼかした。


 そんな地獄のような一年が過ぎて私は三年生になった。石川グループとは別のクラスになっていじめは多少減ったけど、完全に消えた訳ではなかった。お昼休みに呼び出されて殴られたりお弁当を奪われたりしていた。

 そんなある日だった。お昼休みに石川に呼び出される前に、逃げようと初めて思った。それでお昼休みのチャイムが鳴ると同時に、私は教室を飛び出した。でもどこへいけばいいのかわからなかった。とにかく人通りの少ないところに行きたかった。どこがいいか考えていた中、一つ思いつく場所があった。屋上につながる階段だった。

 行き先を決めた私はすぐに足を向けた。しばらくして私は屋上のドアの前に座り、息を潜めた。


 よかった。誰もこない。と思った瞬間、下から誰かが上がってくる気配がした。


「ど、どうしよう」


 慌てて周囲を見回したとき、鉄製の屋上ドアが目に入った。


「鍵がかかってるはずなのに」


 しかし、ここに隠れる場所はなかった。足音はだんだん近くなるし、もう行き場はない。

 私は藁にもすがる思いで、屋上のドアに手を伸ばした。


「お願い、開いて」


 そう願いながらドアノブを回すと、カチャリと音を立ててドアが開いた。


「開いた!」


 当然、鍵がかかっていると思っていたのに。私はきょとんとしながら屋上へ踏み込んだ


「あ、閉めないと」


 ドアから聞こえる笑い声に、私は慌ててドアを閉めてゆっくりと屋上を見渡した。白いタイルが太陽の光を反射して眩しく、運動場で遊ぶ生徒たちの声がかすかに聞こえた。

 私は屋上をぐるりと見て回った。


「誰もいない」


 屋上には誰もいなかった。これを確認した瞬間、頭に一ついい方法が思い浮かんだ。


「ここなら、石川から逃げられるかもしれない」

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