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24話

「ご、ごめん。今なんて言った」


 聞き間違いだと思った。いや、聞き間違いであってほしかった。けれど私の願いと裏腹に、仙石くんは同じ言葉をもう一度口にした。


「春咲さんのことが好きです。俺と付き合ってください」


 仙石くんは漫画でよく出るのように深く頭を下げて丁寧に告白した。普通は告られたら喜ぶと思うが、今の私にそんな感情は一切なかった。

 戸惑い。それを超える困惑。

 この二つの感情が入り混じって、頭の中をごちゃごちゃにしていた。


 友達の好きな人に告られたことだけでも十分困る状況だったけど、数日前美鈴にあんなこと言われてさらに困惑していた。


『ゆづき私決めた。私明後日告白する』

『ええ!? こ、告白?』


 あまりにも突然で、かなり戸惑っていた。


『うん。こんな曖昧な関係もううんざりなんだ。だから、私が告白する」


 すごい、と思った。告白ってしたことがないからよくわからないけど、自分の想いを言葉で相手に伝えるのが簡単なことじゃないことくらいわかっていた。

 断られた時のダメージが相当なはずなのに。


『ゆづき前に言ったよね。私を手伝うって』

『うん。言ってた』

『じゃ私を手伝って。告白できるように』

『いいけど、どうやって』

『大したことじゃないよ。告白する日、仙石くんを呼び出してほしい}

『それなら簡単だね。任せて』


 私は美鈴の告白を手伝うって約束した。だってこの時は、自分が仙石くんに告白されるなんて、夢にも思っていなかったから。

 なのに仙石くんの好きな人が私だったと?! 冗談でしょ?

 あまりにも衝撃で頭が真っ白になって呆然としていた。


「あの春咲さん?」

「は、はいっ」

「驚くのはわかるが、返事を」

「あ、そ、そうだよね」


 混乱しすぎて、返事することすらうっかり忘れていた。


「ごめん、まさか仙石くんが告白するとは思わなくて。どころで、仙石くんって美鈴が好きなんじゃなかった?」

「ん? どういうこと」

「二人よく話してたし、仙石くんが美鈴に優しく接するからてっきり美鈴のことが好きなんだと思ってた」


 もちろん、直接見たわけじゃない。全部美鈴から聞いたことだった。


「それは春咲さんと仲良くなりたかったから」

「え? 私と?」

「うん。実は廊下で偶然春咲さんを見かけた時に一目惚れしたんだ。それで、石川と仲良いって聞いてから、石川と仲良くなると自然に春咲さんとも仲良くなれると思って」


 じゃあ美鈴のことを好きだったわけでもなかったってこと?

 さらに混乱してきた。混乱の中、仙石くんの声が聞こえた。


「で、春咲さん返事は」

「ごめん。あなたとは付き合えない」

「どうして? もしかして好きな人が」

「そういうわけじゃないけど…とにかくごめん!」


 そう言い捨てて私は振り返ることもなくその場から逃げ出した。

 曲がり角を曲がろうとした瞬間、そこに立っていた人と目が合ってしまった。


「み、美鈴」


 壁の陰に、美鈴が立っていたのだ。

 

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