20話
しばらく引きずられるように歩かされて、小さな公園に入った。
ここ久しぶりだな。
昔、子供の頃に雄太とよく遊んでいた公園だった。
なんで急にここに? そう疑問に思ったその時、雄太は肩を組んでいた腕を解き、俺をそのままブランコに放り投げるように座らせた。そして腕を組み、俺の前に立った。
「じゃあ説明してもらおうか。春咲さんとの関係」
あ、そっちか。
それを聞くために、俺をここに連れてきたのか。
「それなら話すことはない。さっき体育館で聞いた通りだから」
「本当に付き合ってるのか!?」
「本当に付き合ってるが、ちょっと複雑なんだ」
春咲さんの付き合ってるのは、彼女へのいじめや噂をなくすためだから。
「詳しく説明しろ」
「嫌だ。面倒くさい」
「せ・つ・め・いしろ」
雄太の雰囲気が少し重くなった。話さないと返してくれない、そんな意思が見えた。
事情を知る人はできるだけ少ない方がいい。だって事情を知る人が増えれば増えるほど信憑性がなくなるし、そうなれば計画が無駄になってしまう。だから、できる限り誰にも話すつもりはなかった。
けれど雄太なら…。
長い付き合いの友達だし、信頼できる人なんだから正直に話してもいいかも。
あと、雄太の協力があれば簡単になくせるかもしれなかった。
なら雄太には言ったほうが得かも。
と思った俺は顔を上げて口を開いた。
「実はさ……」
俺は雄太に春咲さんとの関係について全て打ち明けた。いじめや噂をなくすために、付き合ってる「ふり」をしているって。雄太は隣のブランコに座って黙って話を最後まで聞いてくれた。そして俺の話が終わると、雄太が言った。
「つまり春咲さんを助けたくて恋人のフリをするってわけ? マジで付き合ってるわけじゃなくて?」
「そう」
俺が頷くと、突然雄太がブランコから立ち上がった。
「お前バカか!」
「はぁ!? いきなりなに」
「だからって付き合おうって言うか。イカれてんのか」
「じゃあどうすればよかったんだ。俺は頭悪いから、その状況で思いついたのがそれしかなかったんだ」
少し腹が立って声が荒げてしまった。
「目の前で自殺しようとしてるのに、なんて言えばよかった。頭がいいお前なら、あの状況でどうしたんだ。言ってみろ」
「そ、それは」
雄太は何も言い返せなかった。
「仕方ない状況だったね」
「仕方なかった」
「……」
「……」
沈黙が流れた。ギィーっとブランコの軋む音だけが響いた。
何を言えばいいのかわからなかったし、無理に何かを言い出す必要も感じなかった。
「…本当にそれだけか」
沈黙の中、雄太が聞いた。
俺は雄太を見て「どういうこと」と言わんばかりに首を傾げた。
「実は好きなくせに、あれを言い訳に付き合ってるんじゃないよね?」
「そんなことしねぇ。なんで俺がそんなすると思うんだ」
「だってお前、意外と照れ屋だからな」
「そんなことしねぇよ!」
「ふーん、そっか」
雄太は鼻で笑い、ブランコから立ち上がった。
「じゃ、そろそろ帰ろ」
雄太は俺の前に立って手を差し出した。俺はその手を払い、立ち上がった。
「いらねぇ」
「冷たいな」
雄太がチラッと睨んできた。俺はそれを無視して、歩き出した。
「あ、そうだ。全部話してくれたんだから、お前も手伝え。わかった?」
「まあ手伝うことがあればな」
手伝う、って意味で受け取っていいだろう。
俺は勝手にそう解釈して、再び歩き出した。
「おい、一緒に行こぜ」
雄太は横に並び、肩を組んできた。
「痛ぇよ」
俺は雄太の腕を振り解いた。さっきとは違って簡単に離せた。
俺と雄太は並んで歩いた。
「晴翔コンビニでアイス食う?」
「お前が奢るなら」
「は!? 俺金持ってないが。まあいいっか。奢ってやる。友達の初恋愛を祝う意味で」
こうして俺と雄太はなんの栄養のない雑談をしながら帰った。




