表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/20

15話

 彼女を見た瞬間、無意識のうちに足が彼女の方へと動いていた。


「なんでここに…」

「……いで」


 春咲さんは自分の顔を覆った。


「見ないで!」


 突然の叫び声に、驚いて思わず足が止まった。その際に、春咲さんは勢いよく立ち上がり、逃げ出してしまった。


「てめぇ、待て。戻って来いよ!」

「春咲さん!」


 呼びかける声にも、春咲さんは一切振り返らなかった。


「クソッ、あいつ、よくも私を無視しやがって」


 隣で誰かが腹立ったように吐き捨てた。こいつが石川ってやつか。

 俺は鋭く石川さんを睨みつけた。


「な、何よ」


 石川さんは戸惑った様子で後ずさった。俺はそれを無視し、春咲さんの後を追って走り出した。


 どこへ行った。


 学校内に入ってから、完全に春咲さんを見失ってしまった。


「春咲さん、一体どこへ」


 右左を見回しても春咲さんの姿は見つからなかった。俺はゆっくりと歩きながら考えた。


「春咲さんが行きそうな場所…」


 まずは教室に行ってみよう。

 俺は階段を駆け上がり、教室のドアを勢いよく開けた。


「春咲さん!」


 クラスの全員の視線が一斉に俺に集まった。だが、今そんなことは気にする場合じゃなかった。


「……いない」


 教室に春咲さんがいないことを確認した俺は、すぐ次の場所へ向かった。


「ここにはいると思うんだけど」


 急いで来たはいいものの、中に入ることはできなかった。だってここは女性トイレだから。


「中を確認するわけにもいかないし、どうする」


 トイレの前で途方に暮れていると、どこか見覚えのある女子生徒が一人通りかかった。


「確か、同じクラスの」


 この前、雄太に挨拶したあの子だ!

 名前は思い出せないが、間違なかった。俺はトイレに入ろうとするあの子の腕を掴んだ。すると、あの子はびっくりして振り向いた。


「だ、だれっ…なんだ、あんた高橋でしょ? いきなり何」

「お願いがある。中に春咲さんがいるか、確認してくれ」

「はあ?! あんた変態かよ」


 あの子はキモいと言わんばかりに眉間に皺を寄せた。


「事情があるんだ。頼む」

「うーむ、まあいいけど。その代わり、私のことどう思うかと聞いてくれ」

「わかった」


 俺は迷うことなく即答した。すると、彼女はニヤッと笑い、トレイの中へ入っていった。

 しばらくトイレの前で待っていると、あの子はトイレから出てきた。


「中にいなかったよ」

「じゃあ、どこへ行ったんだ」


 もう思いつく場所はないんだけど。


「どころでさ、あんた春咲のこと好き」

「まさか、そこか」


 一つ、思い当たるところがあった。そこにいるか確信はないが、迷っている時間はなかった。

 俺は全力で廊下を走り出した。


「ちょっと、待ちなさい!」


 背後から俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、応える暇はなかった。

 俺はしばらく走って階段を上って、ドアの前に立ち止まった。


「まさか、ここにいるとは思わないkど」


 でももうここしかなかった。

 俺は荒い息を整えて屋上のドアを開けた。

 静かな屋上、真っ先に目に飛び込んで来たのは、屋上のフェンスを背にしたまま、危うげに立っていた。春咲さんの後ろ姿だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ