15話
彼女を見た瞬間、無意識のうちに足が彼女の方へと動いていた。
「なんでここに…」
「……いで」
春咲さんは自分の顔を覆った。
「見ないで!」
突然の叫び声に、驚いて思わず足が止まった。その際に、春咲さんは勢いよく立ち上がり、逃げ出してしまった。
「てめぇ、待て。戻って来いよ!」
「春咲さん!」
呼びかける声にも、春咲さんは一切振り返らなかった。
「クソッ、あいつ、よくも私を無視しやがって」
隣で誰かが腹立ったように吐き捨てた。こいつが石川ってやつか。
俺は鋭く石川さんを睨みつけた。
「な、何よ」
石川さんは戸惑った様子で後ずさった。俺はそれを無視し、春咲さんの後を追って走り出した。
どこへ行った。
学校内に入ってから、完全に春咲さんを見失ってしまった。
「春咲さん、一体どこへ」
右左を見回しても春咲さんの姿は見つからなかった。俺はゆっくりと歩きながら考えた。
「春咲さんが行きそうな場所…」
まずは教室に行ってみよう。
俺は階段を駆け上がり、教室のドアを勢いよく開けた。
「春咲さん!」
クラスの全員の視線が一斉に俺に集まった。だが、今そんなことは気にする場合じゃなかった。
「……いない」
教室に春咲さんがいないことを確認した俺は、すぐ次の場所へ向かった。
「ここにはいると思うんだけど」
急いで来たはいいものの、中に入ることはできなかった。だってここは女性トイレだから。
「中を確認するわけにもいかないし、どうする」
トイレの前で途方に暮れていると、どこか見覚えのある女子生徒が一人通りかかった。
「確か、同じクラスの」
この前、雄太に挨拶したあの子だ!
名前は思い出せないが、間違なかった。俺はトイレに入ろうとするあの子の腕を掴んだ。すると、あの子はびっくりして振り向いた。
「だ、だれっ…なんだ、あんた高橋でしょ? いきなり何」
「お願いがある。中に春咲さんがいるか、確認してくれ」
「はあ?! あんた変態かよ」
あの子はキモいと言わんばかりに眉間に皺を寄せた。
「事情があるんだ。頼む」
「うーむ、まあいいけど。その代わり、私のことどう思うかと聞いてくれ」
「わかった」
俺は迷うことなく即答した。すると、彼女はニヤッと笑い、トレイの中へ入っていった。
しばらくトイレの前で待っていると、あの子はトイレから出てきた。
「中にいなかったよ」
「じゃあ、どこへ行ったんだ」
もう思いつく場所はないんだけど。
「どころでさ、あんた春咲のこと好き」
「まさか、そこか」
一つ、思い当たるところがあった。そこにいるか確信はないが、迷っている時間はなかった。
俺は全力で廊下を走り出した。
「ちょっと、待ちなさい!」
背後から俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、応える暇はなかった。
俺はしばらく走って階段を上って、ドアの前に立ち止まった。
「まさか、ここにいるとは思わないkど」
でももうここしかなかった。
俺は荒い息を整えて屋上のドアを開けた。
静かな屋上、真っ先に目に飛び込んで来たのは、屋上のフェンスを背にしたまま、危うげに立っていた。春咲さんの後ろ姿だった。




