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14話

「今日も来ないのかな」


 俺は屋上のドアを眺めながら静かに呟いた。

 あの日以来、春咲さんは屋上に来なくなった。理由はわからない。どうして最近来ないのか聞きたくても、聞くことができなかった。クラスで話しかけようと近付くだけで、春咲さんはトイレに逃げてしまうのだから。


「まさか、またあいつらに…いや、それは違うよな」


 もし石川グループにいじめられているせいで来られないんじゃないか。そう思って、何回も校内を回ったことがあった。でも、どこにも春咲さんの姿は見つからなかった。


「一体どこに行ってるんだ」


 頭が痛くなるほどだった。

 結局今日も来ないのか。と大きくため息をつき、空になった弁当箱を片付けていると、スマホが震えた。


 誰だろう。


 スマホを取り出し、確認した。雄太からのメールだった。


『バスケやるけど、一緒にやろ』


 バスケか。あまり気が進まなかった。それに、バスケみたいな激しい運動は控えたほうがいいって、医者にも言われてた。


「やらない」


 と返信して、俺は屋上に寝転がった。しばらくじっと空を眺めているとーー


「暇だな」


 暇すぎて耐えられなかった。春咲さんと出会う前は、一人でも平気だったのに。

 結局退屈に耐えられず、俺は勢いよく起き上がった。


「バスケ…観に行こうか」


 どうせ今日お春咲さんは来ないだろうし、いいだろう。

 そう思いつつ、俺は体育館へ向かった。


 しばらくして、体育館に入ると、もうバスケは開始されていた。

 俺は適当な場所に座ってバスケを観た。周囲には、やけに女の子が多かった。


 あいつら全員雄太を見にきてるのか。


 そう思っている中、ちょうど雄太がボールを持った。雄太はドリブルでディフェンスを抜き、見事にシュートを決めた。


 やっぱり運動神経いいな、あいつ。

 昔からあいつはなんでもきた。運動も、勉強も。


「きゃあああああ!」


 び、びっくりした。

 雄太のシュットに、女の子たちから大歓声が上がった。耳が痛くなるほどだった。俺はすぐ立ち上がって、体育館の外に出た。


「マジで耳が死ぬかと思った」


 未だ耳が痛かった。しかも中から逃げてきたのに、まだ微かに聞こえてくる気がした。


「……いや、これ中の声と違う」


 さっきの歓声とはなんか違った。歓声というより、笑い声に誓った。


「なんの音だ」


 気になった俺は、その声を辿って歩いていった。

 しばらくして辿り着いたのは、体育館の裏だった。俺は気づかれないように、そっと顔だけ覗かせて様子を伺った。そこには六、七人ほどの女性生徒か、一人の人を囲んでいた。人々に遮られて、中心にいる人の顔はよく見えなかった。


 誰だろう、とさらに身を乗り出した瞬間、突然その人が蹴られ、そのまま力なく倒れた。


 な、なんだ。今の……。


 びっくりした。目の前であんなふうに人が倒れるのを見るのは、映画や漫画でしか見たことがなく、実際に見るのは初めてだった。


 これ、巻き込まれる前に、早くここから離れないと。


 と思って背を向けたその瞬間、予想もしなかった名前が背後から聞こえてきた。


「春咲、てめぇふざけんなよ。無視すんのかよ」


 春咲って、まさか…?!

 その名前に俺は思わず振り返った。そしてその瞬間、地面に倒れている人と目が合ってしまった。


「…春咲さん?」


 ちょっと距離があったが、一目でわかった。そこに倒れていたのは、春咲さんに間違いなかった。

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