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10話

 その後も、春咲さんは石川グループにいじめられた。あの日から春咲さんはボコボコになって屋上に来た。日を追うごとに体の傷もどんどんひどくなっていった。


「大丈夫? 昨日より傷がひどいけど」

「大丈夫。今日も転んだだけだから」


 何度聞いても、返ってくる返事はいつも同じだった。「転んだだけだから、気にしないで」と。そんな誰も信じない嘘を、彼女はずっとつき続けていた。その度に、俺は騙されるふりをした。


「昨日より、派手に転んだんだな。気をつけな」


 言葉ではああ言っているけど、実は知っていた。あの石川グループにいじめられているのだと。それでも、あえて口にしなかったのは、春咲さんがそれを望んでいないように見えたからだ。俺がその事実を知ることを、望んでいないようだった。だから、俺は気づかないふりをするしかなかった。


 そうして数日が過ぎた。


「おい、晴翔。今日こそ一緒に飯食おうぜ」


 雄太は飽きもせず、今日も一緒に放り飯を食べようと誘ってきた。俺はいつものように断り、弁当を持って席を立った。いや、立とうとした。


「な、なんだよ。いきなり」

「ははっ、今日は行かせないぞ」


 雄太は俺が立ち上がられないように、両肩をぐっと押さえていた。俺は無理矢理に立ち上がろうとしたが、運動不足で患者の俺が雄太に力比べで勝てるわけなかった。


「離せ。今日も約束があるっつってんだろ」

「やだ。そろそろ俺とも食え」

「お前、別に俺じゃなくても一緒に食べる人多いじゃん。そいつらと食え」

「あいつらとはもう十分一緒に食ったから。そろそろお前と食う番だ。聞きたいこともあるし」

「いや、無茶振り


「あと、お前ひどくねぇ? 俺が毎日誘ってるのに、毎回先約あるって断って」

「…それは、すまなかった」


 雄太はいつも一緒に食べようと言ってくれていたのに、断り続けたのは俺だった。もし立場が逆だったら、「なんだ、あいつ。うざい」ってとっくに諦めて縁を切っていたと思う。

 なんか悪いね。


「だから今日は一緒に食おう。いいだろ?」


 雄太は顔をぐっと近づけて圧迫を加えた。雄太の粘りに、結局俺は両手を挙げた。


「わかったわかった」

「やった!」

「でも、飯食い終わったらすぐいくから」

「まあまあそれは好きにしろ」


 そう言いつつ雄太は自分の机を俺の机にくっつけた。


 大丈夫だろう。春咲さんいつも俺が食べ終わってから来るから、早くご飯を食べて行っても。


 と思いながら鞄から弁当を取り出した。俺が弁当を机に置いている間に、雄太はすでに弁当を開けて食べ始めていた。俺は取り残されないように急いで弁当を開けた。


「こうやって一緒に食うの、久しぶりだな」

「そうだな」


 俺は短く相槌を打ちながらご飯を口に運んだ。


「で、最近どうなんだ」

「何が」

「春咲さんのことだよ。お前、この前春咲さんのことが好きって言ってただろ」

「…….はあ?!」


 俺は驚いて思わず箸を落としてしまった。

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