5 王妃クリ−ク
戦に勝利し、血の玉座に就いたシュレッケン=ナハトは、王妃としてクリ−クを迎えた。
それはナハト王国にとって、かつてないほどの盛大な祝祭の日であった。
戦勝と戴冠、そして婚儀。
城門から街まで続く石畳には、王国中の民が詰めかけ、歓喜と喝采がこだました。
白金と紅で飾られた王都の空の下、新王と新王妃がテラスから手を振る。
王妃クリ−クのドレスは深紅の薔薇を思わせ、まさに“深紅の薔薇姫”の名にふさわしかった。
だが、テラスで微笑むその裏に、彼女の心は揺れていた。
(私の愛した人が……父を殺した)
その記憶は夜ごとに甦る。だが――
それでも彼女は、自らの運命と愛に忠実であろうとした。
王妃として国を支えるために。女として、ひとりの男を信じるために。
初夜、彼は荒々しかった。
まるで獣のように彼女を求めた。
だがその中に、言葉では表せない「孤独」や「焦がれ」を感じた彼女は、それすらも愛おしいと感じた。
日が経つにつれ、夫婦としての時間は減っていった。
政務に追われているのか、あるいは――
彼の心がどこか遠くに行ってしまったのか、クリ−クには分からなかった。
そして噂が広がる。
“グリュック国の奥地に、幸運と富をもたらす蒼き精霊がいる”
最初はただの民間伝承かと思われた。
だが、シュレッケンは突如としてその噂に興味を持ち、兵を率いて遠征に出る。
クリ−クの胸には、説明のつかない不安が灯った。
(何かが……変わってしまう)
そして、その不安は的中した。
彼は帰ってきた。だが、隣には――あの蒼い少女がいた。
ブルーバード。
蒼い髪、蒼い目、そして背中には輝く蒼の羽根。
「名前は、トリだ」とシュレッケンは言った。
王は彼女に執着した。
その瞳は、もはや王妃クリ−クさえ映していなかった。
かつて自分のすべてを注いだはずの男が、
今は別の女に心を奪われている――
クリ−クの中に、燃えるような嫉妬が芽生えた。
トリは何も知らない顔で、無垢に微笑む。
自分に見向きもしないあの少女の存在が、王妃の誇りを踏みにじる。
(私の目の前から、消えてもらわなければ)
「もう王に愛など求めてはいないわ……けれど!」
王妃の瞳に、深紅の薔薇と同じ、毒の色が宿った。
「また、あの蒼い鳥に……トリなどという、取るに足らない名前の癖に……!」
その目は、宝石よりも冷たく、血よりも深く赤かった。
「タクティク。私に忠義を誓うなら、あの鳥を、引き裂きなさい。王が飽きる前に、私の手で終わらせるのよ」
「御意――お后様の紅の望み、必ず叶えましょう」
コレから改善すること
1夫婦生活の内容が薄い
2感情の動きが唐突