太陽になりたい勇者
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。新年おめでとうございます!
夕暮れの商店街を、**太志**は一人で歩いていた。
スーパーのアルバイト帰り。
エプロンは畳んでリュックの奥にしまってある。
足は少し疲れていたが、歩く速さは一定だった。
道の向こう側で、子どもたちが遊んでいる。
ボールを蹴って、転んで、笑っている。
その笑顔を見たとき、
太志の胸の奥で、何かが静かに軋んだ。
——ああ、いいな。
それは羨望というより、
確認に近かった。
子どもは、本来こうあるべきなんだ。
太志の子ども時代は、そうではなかった。
彼の両親は、あるカルト宗教に属していた。
外から見れば静かで、礼儀正しく、信心深い夫婦だった。
ある日、二人は自ら命を絶った。
幼い太志だけが、部屋に残された。
彼のそばには、一枚の紙があった。
「この子を守ってほしい。
大きくなるまで。
そして、この世界がどれほど醜いかを、
自分の目で見る日まで。」
それが、太志の“始まり”だった。
彼は幾つもの里親の家を渡り歩いた。
最後に辿り着いた家には、
ニヒリズムを信奉する哲学者が住んでいた。
その男は、酒を飲みながら言った。
「ニーチェはこう言った。
世界は美しくなどない。
意味も、救いもない。
それでも生きるしかないんだ」
太志は黙って聞いていた。
ならば——
意味がない世界に、
意味を置くのは、誰だ?
太志は考えた末に、一つの結論に辿り着いた。
自分が、光になろう。
世界に善がないのなら、
自分が作ればいい。
だから彼は、優しくする。
受験生に無料で勉強を教え、
現場で働く人間の荷物を持ち、
一人で生きる老人の話を聞く。
それは使命感ではなかった。
恐怖だった。
もし善が消えたら、
世界の意味は本当に終わってしまう。
だから、彼はやめられなかった。
そのときだった。
交差点の向こうで、
一台のトラックが蛇行している。
運転席の男は、明らかに正常ではなかった。
——危ない。
太志の視線の先に、
小さな女の子がいた。
信号を見ていない。
ただ、歩いている。
世界が、ゆっくりになる。
考える時間はない。
太志は走った。
女の子を、思いきり突き飛ばした。
次の瞬間——
衝撃。
本来なら、
太志の身体はそこで終わっていた。
だが、終わらなかった。
衝突の刹那、
太志の内側で、何かが展開した。
骨格が、再構築される。
超高密度金属に覆われた
機械骨格。
関節が軋み、
骨そのものが武装へと変わる。
さらに、その外側。
生体金属の装甲が、
皮膚の上に這い上がる。
——コモドドラゴンの姿を持つ外骨格。
それらは一つになり、
太志の身体を包み込んだ。
名は——
《プラグ・ファントム(Plague Phantom)》
トラックは、太志を跳ね飛ばした。
だが、砕けたのは路面だった。
静寂。
煙。
女の子の泣き声。
太志は、立ち上がっていた。
身体は、無事だった。
理解は、追いついていなかった。
……生きてる?
彼は自分の手を見る。
金属と、生体装甲。
異形。
どうして……?
だが、答えは出なかった。
ただ一つ、はっきりしていた。
——守れた。
太志は、女の子の方を見る。
彼女は、泣きながらも生きている。
その光景を見たとき、
太志の胸に、温かい何かが灯った。
世界は、確かに醜い。
でも——
それでも、光は要る。
その夜、
新たな“選ばれし者”が誕生した。
このエピソードを楽しんでいただけたら嬉しいです。次のエピソードもすぐにアップロードします。新年おめでとうございます!




