私が選んだから
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
第21話
玉座の前で
最終防衛線は、
すでに崩れかけていた。
空は裂け、
重力が歪み、
異なる宇宙の残骸が
重なり合う。
敵は、
終わりなく現れる。
この戦いの目的は、
ただ一つだった。
春明を守ること。
ジャン=バティストZが
起動するまで。
その間、
誰一人として
彼に触れさせない。
「……行くな」
美咲の声は、
震えていた。
大輝は、
包帯に覆われた腕を
見下ろし、
そして顔を上げた。
「ごめん」
短い言葉。
「でも、
行かなきゃならない」
「俺は——
メカマニアックだ」
それだけ言って、
彼は振り返らなかった。
太志が、
無言で並ぶ。
デスXが、
前に出る。
五人の少女も、
何も言わず、
戦場へ戻っていく。
守るための戦い。
逃げるためではない。
一方、
別の場所。
巨大な影が、
空間そのものを
圧迫していた。
ジャン=バティストZ。
人型だが、
神殿に近い。
春明は、
その内部にいた。
ウォー・メタルと共に。
「システム、
安定」
「予測不能事象、
逐次演算中」
ジャン=バティストZの
声は、
感情を持たない。
だが、
嘘もつかない。
「……開ける」
春明が言う。
ポータルが、
開いた。
無音。
向こう側には、
星がない。
文明の痕跡もない。
「生命反応、
確認できず」
放射線の痕跡が、
細い糸のように
続いている。
それが導いた先は——
赤い惑星。
鉄のような色。
血のような地表。
「……レッド・ジャイアント」
春明が、
名を与えた。
ジャン=バティストZが、
警告を出す。
「進路は、
上位位相に存在」
「到達には、
膨大なエネルギーが必要」
「……分かった」
春明は、
即座に答えた。
「テイクオーバー、
起動」
惑星が、
沈黙する。
いや——
支配される。
エネルギーが、
吸い上げられ、
流れ込み、
構造が組み替えられる。
次は、
宇宙。
そして——
多元。
ジャン=バティストZは、
力を蓄え続ける。
ついに、
道が開いた。
上位次元。
そこには、
何もなかった。
ただ一つを除いて。
巨大な玉座。
誰も座らないまま、
長い時間を
待ち続けた椅子。
「……ドクター・グエン」
春明は、
通信を開く。
「中心に、
誰もいません」
「原因は……
もう存在しない」
沈黙の後。
ジャン=バティストZが
補足する。
「だが、
ウェー放射線は
再起動可能」
「有機的エネルギーを
媒体として」
その意味を、
全員が理解した。
戻れない。
ここに、
留まる必要がある。
「いや……」
桜の声が、
崩れる。
雛菜が、
泣きながら首を振る。
早苗も、
愛子も、
常子も。
「やめて……」
「お願い……」
春明は、
目を閉じた。
かつて、
彼は
“個人の犠牲”という
考え方が
嫌いだった。
美談にされ、
消費され、
忘れられる。
だが——
今は違う。
これは、
誰かに
押し付けられた
役割じゃない。
自分で、
選んだ。
太志という友がいる。
大輝という友がいる。
そして——
五人の少女との
確かな繋がりがある。
「……やっと」
「守りたいって
思えるものを
見つけた」
春明は、
微笑った。
「愛してる」
それだけ言って、
通信を切った。
「……二人は、
戻れるかもしれない」
春明が言う。
ウォー・メタルが、
即答する。
「否定」
「我々は、
相棒だ」
ジャン=バティストZも
続く。
「本機の任務は、
ここに留まること」
春明は、
小さく息を吐いた。
「……ありがとう」
彼は、
玉座に座る。
世界が、
反応する。
光が、
集まる。
意識が、
拡張されていく。
神の視座。
彼は、
ウェー放射線を
再構築しようとした。
その瞬間——
足音。
誰かが、
そこに立っていた。
迷宮を抜けた者。
アリーヤ。
彼女は、
静かに
春明を見ていた。
――続く。
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