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ありえない勇者が危険に立ち向かう

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

第20話


ウェー放射線


部屋は暗かった。

家の地下。

音を吸い込むような、低い天井。


ドクター・グエンは、

一つのスクリーンを点けた。


白い光。

無数の点。

重なり合い、裂け、

無限に広がっていく。


「……これが、

 今の現実だ」


誰も、すぐには理解できなかった。


太志が、

喉を鳴らす。


美咲は、

無意識に

大輝の袖を掴んでいた。


「観測されたのは——」

グエンは続ける。


「数えきれない数のポータルだ」


「何十億、

 いや……

 それ以上」


スクリーンに、

都市が映る。

パリ。

ニューヨーク。

東京。

知らない空。

知らない星。


「以前は、

 存在しなかった」


「宇宙と宇宙は、

 決して繋がらなかった」


春明は、

腕を組んだまま、

黙って見ていた。


「……だが、

 私の初期実験では

 ワームホールが開いた」


「その時は、

 理由が分からなかった」


グエンは、

指を滑らせる。


映像が変わる。


ノイズ。

光。

見えない壁のようなもの。


「調査の末、

 一つの結論に辿り着いた」


「かつて——

 宇宙と宇宙の間には

 放射線が存在していた」


「私はそれを

 ウェー放射線と名付けた」


その言葉に、

空気がわずかに張り詰める。


「ウェー放射線は、

 干渉を拒む」


「一つの宇宙の存在が、

 他の宇宙に

 触れることを

 許さなかった」


「だから——

 多元戦争は、

 起こり得なかった」


「しかし」


グエンは、

一拍置いた。


「その放射線が、

 消えた」


理由は不明。

時期も不明。


ただ、

結果だけがある。


「壁がなくなり、

 様々な宇宙は剥き出しになった」


「そして今——」


スクリーンには、

無数の侵略の記録。


「無限の宇宙同士が、

 互いを

 滅ぼそうとしている」


沈黙。


誰も、

反論できなかった。


「……止める方法は」

春明が、

静かに聞いた。


グエンは、

頷く。


「ある」


彼は、

別の映像を出した。


巨大な機体ロボット。

異様な輪郭。

人型だが、

どこか

“装置”に近い。


「ジャン=バティストZ」


「このシステムは、

 ウェー放射線の痕跡を

 追跡するために

 設計された」


「放射線が

 かつて存在していた

 “中心”まで

 到達する」


「そして——」


言葉が、

少し重くなる。


「何が原因で

 この変化が起きたのかを

 特定し、

 修正する」


美咲が、

小さく息を吸った。


「……それって」


「戻せる、

 ってことですか」


「理論上は、

 可能だ」


グエンは、

正直だった。


「だが、

 保証はない」


「そして——」


彼は、

全員を見渡す。


「誰かが、

 操縦しなければならない」


「中心は、

 我々の宇宙の外だ」


「帰還できるかは、

 分からない」


その瞬間。


椅子が、

軋んだ。


春明が、

立ち上がっていた。


「……俺が行きます」


即答だった。


「春明!」

桜が声を上げる。


「やめて!」

雛菜が、

一歩前に出る。


早苗、

愛子、

常子。


誰も、

止められない。


「危険すぎる」

グエンが言う。


「分かってます」


春明は、

静かに答えた。


「でも——

 このままじゃ、

 誰かが

 ずっと死に続ける」


「それが

 無限なら……」


彼は、

言葉を探し、

やめた。


「俺は、

 行きます」


デスXが、

わずかに揺れた。


五つの心が、

一つの不安に

染まる。


その夜。


春明は、

夢を見た。


石の壁。

果てのない回廊。


迷宮。


中央に、

立ち尽くす

一人の女。


アリーヤ。


彼女は、

まだ

出口を

見つけられずにいた。


春明は、

声をかけようとする。


だが、

届かない。


ただ、

遠くで

光が瞬いた。


夜は、

静かに続いていた。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードもすぐにアップロードします。

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