二人の賢預言者の共通の夢
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
数週間が、
静かに流れた。
若者たちは、
アン・グエン博士の家で暮らしていた。
博士は、
ほとんど家にいなかった。
家は広く、
どこか空洞だった。
夜になると、
会話が生まれる。
不思議と、
深い話ばかりだった。
太志、春明、大樹。
三人は、
テーブルを囲み、
世界について語った。
「外の世界は、嫌いだ」
大樹は、
静かに言う。
「人は、人を傷つける」
視線は、
どこにも向いていない。
「善意は、
だいたい裏切られる」
春明は、
少し考えてから言った。
「社会ってさ、
人類の兄弟愛だとか言うけど」
短く、
鼻で笑う。
「嘘だと思う」
「一部の連中が得をするための
仕組みだ」
「過労死だって、
その一例だろ」
言葉は、
冷たかった。
太志は、
二人を見て、
首を振る。
「……それでも」
声は、
柔らかい。
「今ある社会じゃなくて、
“なり得る社会”を
見ることもできると思う」
「可能性まで、
捨てなくていい」
その夜。
夕食は、
ラーメンだった。
スープの湯気。
炭酸の音。
誰も、
深刻な話はしなかった。
笑い声も、
少しあった。
そして、
眠りについた。
深夜。
春明は、
目を覚ました。
――違和感。
天井が、
違う。
隣を見ると、
太志も起きていた。
「……ここ、どこだ?」
部屋は、
博士の家の中だ。
だが、
見覚えがない。
気づく。
他の若者たちも、
全員いる。
桜、日向、早苗、愛子、常子、
大樹、美咲。
だが――
皆、目が虚ろだった。
夢遊病者のように、
静かに立っている。
部屋の中央。
巨大な、
水槽。
中には、
魚はいない。
代わりに――
星があった。
小さな、
光る星たち。
無数の星が、
動き回っている。
星たちは、
何かを作ろうとしていた。
光のネットワーク。
だが――
多すぎた。
意見が合わない。
形が定まらない。
光が、
絡まり、
もつれ――
突然。
爆ぜた。
眩しい光。
そして、
静寂。
残ったのは、
八つの星。
少ない。
だが――
寄り添っている。
互いを、
大切にしている。
小さな、
美しい光の網。
完璧ではない。
それでも、
確かに存在していた。
朝。
自分たちの部屋で、
目を覚ます。
春明は、
太志を見る。
「……夢、だったのか?」
太志も、
同じ表情だった。
「……でも」
二人とも、
覚えている。
同じ星を。
同じ光を。
夢かどうか、
分からない。
分からないまま――
朝は来た。
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