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婚約破棄され続きの騎士は想いが重い王女の愛で進撃す!  作者: ふみんのゆめ
漢の怒涛篇

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50.漢、本当にしゃべっていただけの模様(離縁と言われた真相も)

 ともかく二人は、カンカンだった。


「邪魔をするな。我が人生の一大事を相談している最中だ」

「おまえたち、婚約を破棄どころかしたこともないようだ。聞いてわからないのか、この胸が裂けるような苦しみを。いい加減に、わかれっ!」


 怒り心頭が全身にみなぎるアーゼクスに、本人以上に錯乱しているかのようなユリウスだ。


 負傷で前に出られないヨシツネは戦況を見守るしかない。当初は自分らと龍人(りゅうじん)の混成が上手くいくかどうかが心配で、後方へ意識を集中していた。いきなり聞こえてきた怒声には、そう言えばどうしているのかな、くらいの感覚だった。前方の賢國兵団に対し、指揮官であり強者の二人に任せておけばとしていた。動きがあれば、なにか指示を出してくるだろう。なんだかんだ文句は言いつつも絶対的な信頼を寄せている。


 放っておいても、うちの団長と龍人の大将ならば、どうにかする。

 まさかの、なんにもしていなかった。


「おいおい、マジか。本当にしゃべっていただけかよ」


 吹っ飛ばした賢國(けんこく)兵へ二人が本気で怒っている。襲撃を受けてやっと大剣を繰り出したと想像がつく体勢だった。


 きっと賢國側はユリウスとアーゼクスがいつまでも会話しているから攻撃へ出たに違いない。ヨシツネからすれば敵に同情したくなる。


「ユリウス様と戦闘頭(せんとうがしら)は攻めてこられれば受けて立ちます。援護を求められない限り、好きにさせたほうが力を発揮しそうな気がしませんか」


 龍人騎兵団の副長エルクウィンが冷静な分析を披露してくる。


 そうだな、とヨシツネは同意しつつもいちおう懸念を呈す。


「オレもそうは思うけど、でもいくら強くても二人だけってのもなぁ」

「それに関しては今回、別働隊を用意してます」


 エルクウィンが剣先に赤い布を結けば頭上へ掲げる。くるくる回せば、帝国と乱戦を演じている一部の龍人兵が動く。合図を受け取って、こちらへ向かってくる。


 先頭の龍人にヨシツネは驚きが隠せない。


「おおっ、あれ、部族長じゃねーか」

「ええ、ドラゴ部族の長であり我が父でもあるダイロンです。後に続く騎兵はダイロンが戦闘頭であった時期に従っていた者たちです。前任者が登場すれば、さすがに現在の戦闘頭もうかうかしていられなくなるでしょう」


 エルクウィンの明晰にヨシツネは脱帽した。やるじゃねーか、と口にしそうになったが、ツバキが先を越して称賛を投げたため閉じてしまった。やっぱり面白くない。


 こちらへ向かってくるダイロン以下龍人騎兵はブランクを感じさせない強さを見せていた。中途で絡む帝国賢國の兵を文字通り蹴散らしてくる。早々に近づいてくれば、エルクウィンはユリウスとアーゼクスの援護を求めるべく口を開きかけた。


 俺は戦士だ! かつての戦闘頭ダイロンの怒号にも似た叫びを発してきた。ここまでは問題なかった。続く誰に向かってか、わからない訴えが息子の口を開けたままにする。


「妻から部族長になってから魅力がなくなったと言われた挙句に、エルクウィンが女性と付き合わないのは、情けない父親の姿を見ているせいだと決めつけられる。この怒りをどこにぶつければいい、おまえたちだっ」


 こうして賢國の右翼を担う騎兵たちは、気合充分の龍人古参騎兵からのとばっちりを受けるはめになる。ははは、とヨシツネでさえ笑いが乾くほど激烈な攻勢を展開していく。息子のエルクウィンと言えば、身内の大活躍にも「父さん……」と頭を抱えていた。


 徐々に賢國兵団から焦りが漂いだしていた。


 うおおぉおおおー! 雄叫びに乗ってユリウスの大剣が唸る。


 賢國騎兵は盾を密集させた防御隊で受け止める。何度かの交戦から導き出された対応策だ。決して昨日今日で構築可能な陣方ではない。これまで効果を挙げていた。


 今は予期しなかった力が加わっている。


 おおおぅー! アーゼクスの大剣がユリウスの大剣に続く。


 大陸一、二の剛腕が振るう大剣をほぼ同時に打ち込まれる。話しの邪魔する者を先に片付けようと息を合わせていた。


 これに賢國の防御隊は為す術がない。次々に粉砕されていく。


 しっかりせんか、とウイン皇弟の叱責の声がした。痺れを切らしたような調子は、どこか怯えを隠せない。しかもまずいことにユリウスへ本来の目的を思い出させた。そうだった、あの野郎を討つんだったな、と言えば、アーゼクスも思い出したようだ。プリムラが生死を彷徨っている旨は聞き及んでいるとし、「まずはあれだな」と会話より討伐の優先を提案した。


 ようやく本来の意義に基づく戦いとなった。


 ユリウスとアーゼクスは正面突破を図る。前面の陣は崩れだしている。左翼に展開していた賢國騎兵が急いで加勢に向かう。右翼はダイロン率いる二千の龍人古参騎兵と交戦で動けない。


「では私もユリウス様と我が戦闘頭の加勢へ向かいます」


 右手に剣を左手には盾を持ちエルクインが駆け出しかけた。

 提供された薬品を塗りながらヨシツネはその前にと訊く。


「なぁ、ホントにおたくらの戦闘頭、離縁しそうなのか?」


 ちょっとエルクウィンが意外とする顔で足を止めた。そのようなことに気を止めるような者とは考えられていなかったせいだろう。そう思われて仕方がない。なにせ訊いた本人が一番に驚いている。


「まさか。アーゼクスとオルフェスのつがいが離れるなどあり得ません」

 

 それじゃなんで、となるヨシツネへ、笑みをにじませながらの説明がなされた。


 一度はユリウスに協力はしないとした龍人が集うドラゴ部族だ。が、帝国の王国侵攻が再考を促す。恩人に対する後ろめたさもある。他に帝国兵団の遠征は賢國の協力も疑われる。亜人を敵視する連中に龍人は傍観とする立場で本当にいいのか? とする議論を呼ぶ。


 アーゼクスは大剣の再刃にドワーフの鍛冶工房へ自ら赴いている。賢國がどのような主義でいるか、噂を耳にしている。帝国が賢國の教義を受け入れれば、亜人に対する迫害はこれから本格化する怖れが充分にある。


 ドラゴ部族の将来を賭けると言ってもいい決断が迫られた。


 どうやら部族内ではユリウスがいる王国支援の方向へまとまりつつあったらしい。


 ところが真っ先に賛同するかと思われたアーゼクスが躊躇を見せる。戦場という万が一でも妻を置いて逝く選択などしていいものか。だがユリウスの加勢にはいきたい、すごく行きたいが妻のことを考えたら、と周囲の目も憚らず懊悩していたらしい。


「それはもううざったいくらいでしたね、我らの戦闘頭の優柔不断ぶりは」


 思い出し笑いが止まらないエルクウィンへ、ヨシツネは察しがいいところを見せる。


「悩み真っ最中のおたくらの指揮官へ、恐妻はなんて言ったんだ」

「それもう可愛らしく『そんなあーくんはキライ』だそうです」


 ちょっとヨシツネは考え込んでからだ。


「えー、他には何を言われたんだ?」

「それだけです」


 微笑むエルクウィンの即答に、思わずヨシツネは立てた右の中指を額へ当てた。まさかそれだけで離縁される結論へ至れるのか。世の中にはいろいろな者がいる。うちの団長もそうだしな、と自分を納得させる言葉が洩れ出た。


 それに何となく面白くない出来事も起こった。


 わたくしも、とツバキが参戦の意思を示す。対してエルクウィンは渋い様子を見せたが、自分から離れない約束でやっと了解した。二人は気持ちを通じ合わせて援護へ向かう。


 オレもとヨシツネは行こうとするが、ちょうどよく激痛に見舞われた。イテテ……、と胸の傷口を押さえれば、ルゥナーがからかってくる。モテても嫉妬するんだな、と。反論するには無茶してきたツケで返事も億劫なほど身体はしんどい。しゃくだが、大人しくしているしかなかった。


 ちょうどその頃、ダブル攻撃を次々と決めていくユリウスとアーゼククスの前へ、賢國の将軍がやおら立ち塞がった。


 私と戦え、と亜人の猛将だけに要求してきた。

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