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婚約破棄され続きの騎士は想いが重い王女の愛で進撃す!  作者: ふみんのゆめ
漢の怒涛篇

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49.漢の麾下ふたり、ちょっととなる(助けが有難い)

 まだまだ自分たちの認識は甘かったのかもしれない。

 ヨシツネだけでなくベルもしみじみ思う。


 最初は笑っていた。しょうもないで済んだ。


 本気で話し込みだせば、慌てた。俺たち夫婦はどう映った、と龍人(りゅうじん)戦闘頭(せんとうがしら)の問いに対し、俺はサイコーの二人と思ったぞ、と我らの大将が答えている。それで終わらなかった。ひそひそ何やら話しだす。深刻そうに顔を寄せ合っている。


 さすがに前面に展開する十五万の賢國騎兵も再始動しそうだ。後ろからは帝国兵の四十万が押し寄せてきている。


 おまえらナニ考えてんだよー、と非情の四天(してん)なんて呼ばれることもあった二人は叫びたい。


「ヨシツネさん、お久しぶりです」


 懐かしい声に、「よぉ、アスカード」とヨシツネは左手を上げて答えた。龍人騎兵団の副長が戦場に似合わないさわやかな笑顔で近づいてくる。


 もう一人いた副長は? とヨシツネが視線を泳がせたらだ。げっ! となってしまった。


 エルクウィンの名を持つ龍人の青年は両手で相手の両手を包んでいた。お怪我なくて本当に良かった、と目を潤ませ熱く語りかけている。


 相手のツバキは、ぽっと頬を染めていた。男の情熱に打たれているようだ。


 ヨシツネにすれば、マジか、といった場面だ。二人の間へ割って入ろうとした。危うく三枚目を演じずにすんだのは、アスカードが先んじてくれたおかげである。


「エルクウィン。彼女を守るためにも先に為すべきことがあるだろ」


 そうだった、とエルクウィンは名残惜しそうに両手を離す。ツバキさんは決して無茶しないでください、と優しく声をかけていた。なに格好つけてんだよ、とヨシツネは言いかけるが、手を離された女性のしおらしさのほうが癪に触った。


「おい、ツバキ。気味がわりぃーぞ」


 呼ばれて相手は夢から醒めた様子だ。途端に普段の鉄面皮へ戻す。口からは憎らしい台詞が出てくる。


「ご安心してください。もし相手がヨシツネ様だったら、手を握られた時点で殺害しております」

「おぅおぅ、言ってくれるじゃねーか」


 傷の痛みも忘れてヨシツネが反撃開始とする。


 ベルとしては自分の指揮官ばかりでなく僚友まで呑気な様子に絶望しかない。気を持ち直せたのは、偏に龍人騎兵のおかげだ。


 アスカードがユリウスの騎兵たちへ大声で提案する。


「さぁさぁ、例の陣形を築きますよ。散々やり合った者同士だからこそ、一緒になってやれるはずです」


 盾を持つ龍人騎兵隊が帝国兵の向かってくる側へ出ていく。ユリウスに率いられた盾の騎兵も何か納得したように着いて行く。


 龍人と人間双方の騎兵が息もぴったりで地面へ盾を据える。防御陣を築く。


 盾の並びにおいて絶妙な隙間が作られていた。そこへ長槍を構えた双方の騎兵が待ち構える。


 帝国兵は盾に阻まれた瞬間、長槍が突き出されてきた。混乱が生まれたところで、双方の剣戟騎兵が盾の間から飛び出てくる。一斉に斬り伏せられていく。矢も正確に放たれてくれば、助勢に行くこともままならない。


 人間と龍人が呼吸を揃えて構築された陣形に為す術がない。


 帝国兵が不幸だった点は、ただでさえ大多数すぎて統制が難しい。そこへ総指揮官が賢國(けんこく)兵団の背後にいれば伝令すら届けるのが難しい。指揮系統が機能しなければ、個々の動きに任せるままとなる。ひたすら進むだけの攻撃体形を止められない。相手の剣戟隊が退けば、また同じように盾の防御陣へ突っ込んでいく。長槍から始まり剣と矢の餌食になることを繰り返す。


 突撃の三度目が粉砕されたところで、帝国第三騎兵団アスペン指揮団長が叫ぶ。


「なぜ、ここまで見事な陣形を敷ける。同じ騎兵団でないものが、しかも人種が違う騎兵たちが、なぜここまで」


 回答は敵の戦意を挫くとベルは判断した。だから力いっぱいに張り上げる。


「お互い好敵手と認めて、何度もやり合ったおかげだよ。最善策を練っていたら、双方とも最終的に同じ陣形へ落ち着いたわけさ」

「最後の方では模擬戦みたいなこともやりましたしねー」


 思い出すようにアスカードも乗っかってきた。

 二人の声に陣形内の騎兵たちは頬を緩める。双方の騎兵は笑みをこぼしさえする。 

   

 帝国兵側は一部の騎士団長が秩序の回復を努めようとするものの容易ならない。傭兵が半数以上を占める編成は無秩序な攻勢から抜け出れない。結局は敵など少数だとして優位を信じ奮闘するしかない。


 まだ勝敗は決していない。


 でもヨシツネにすれば一時に比べれば、かなり光明が差してきていた。取り敢えずツバキの件は置いておき、エルクウィンへ礼を述べに行く。


「助かったぜ、ホント。まさか来てくれるなんて思わなかったからな」


 にっこり返してきたが、たちまち気忙しく目許を寄せる。


「大丈夫ですか。ずいぶん怪我が酷いように見受けられます」


 そう言うなりエルクウィンは腰元に備えた袋から取り出す。薬品と包帯を出してきた。悪いどころか良い奴であれば、ヨシツネも変な意地は引っ込めた。


「オレはいい。それより、どうしてだ。出陣なんかして問題なかったのか」


 龍人が集うドラゴ部族内において騎兵以外はユリウスに協力出来ないとした意見だった。種の存続を考えれば今後は不戦を貫くとした姿勢を示された。それがいったい何があった? と疑問が渦巻く。


 なぜかエルクウィンが苦笑を浮かべた。


「結局は戦闘頭の一存です。もっとも行き着くところオルフェス様のおかげなんですが」


 ちょうどその時だった。


 うるさい! ユリウスとアーゼクスの二人は声を揃えて挙げていた。


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