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婚約破棄され続きの騎士は想いが重い王女の愛で進撃す!  作者: ふみんのゆめ
漢の怒涛篇

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19.漢の、婚約者とだったの激突・中編(聞く耳は持ちません)

 一度は遅れを取った帝国兵だったが、巻き返す気力はあった。


 陣形の中央まで王国騎兵団を侵入させてしまった。が、体制し直せば敵は自ら陣形内へ飛び込んだきたと捉えられる。火中の栗を拾いにきただろうがそうはさせじ、と意気を取り戻した。

 

 我らの戦乙女を守らねば! と息を吹き返した。


 四方からの攻撃に王国騎兵団は苦戦となった。元々劣勢なところへ、不利な陣形だ。けれども昨日の雪辱で燃えていた。あれほどの惨敗を喫してもなお逃げ出さないあなた方は勇敢です、とかけられた言葉が耳に反芻している。


 我らの王女と共に戦乙女を討つ! と命を燃やして挑んでいた。


 加えてニンジャたちが敵の目に止まらない素早さで援護している。帝国兵はいきなり体勢を崩したり視界が奪われたりするのは、世間に認知されていない四人の活躍であった。


 戦いが激化していくなか、両陣営の女性指揮官同士は剣を挟んで対峙していた。

 一進一退の刃による押し合いが続くなかだ。


 システィアの唇が悪い笑みで歪む。プリムラへ憐れむ調子で投げかける。


「王女。あなたは婚約者のこと、本当にわかっているつもり?」

「動揺させようとしても無駄です。わたくしは戦乙女の首を取る、ただそれだけで来ています」


 挑発などに乗らない、目的を果たすだけ。プリムラの固い決意表明が、システィアにはむしろ強がりに映ったようだ。唇の端がさらに吊り上がっていく。


「確かに動揺を狙ったことは認めるわ。王女様が想像と違っていて、ずいぶんなお転婆に驚いてしまったせいかもね」

「あなたがユリウスさまにとって大きな障害であることは間違いありません。だから消えてもらいます」

「そうね。私はユリウスにとって最初に付き合った彼女であり、最初の婚約者であり、士官学校からの付き合いでもある。王女様よりずっと一緒に過ごしてきた時間は長いわね」


 交錯した剣に微かな動きが出た。


 一瞬だがプリムラの刀身は押し込まれる。だがすぐに気を取り直せば、今度は押し返すだけではない、押し始めた。くっとシスティアが歯を喰いしばったくらいだ。


 黄金の髪が額へかかるプリムラはすみれ色の瞳に怒りを宿していた。


「卑劣な言い回しをしますね。とても気高き戦乙女とは……いえ、違いました。わたくしの気持ちが弱いせいです。例え貴女より時間が短くても共に過ごした日々は、どれほどの発見に満ちていたか。でもまだユリウスさまの魅力は尽きません」

「恋している乙女の目では見えないものよね。その男の真実とするところなんて」

「婚約破棄した貴女の目がユリウスさまを公平に捉えられているとは到底考えられません。悪い印象しか残っていないような方から本質が見えているなどと、わたくしからすれば世迷言です」


 ぐぐっと合わさる剣が一方へ傾く。


 システィアはこめかみに汗が噴き出てきそうだ。どこからこんな力が、と思わされるほどプリムラは強い。さらに押し込んでくる。感嘆も苛立ちへ変われば、無意識のうちに口が廻る。


「そこまで強くなれたのはユリウスから愛されたからだなんて言い出さないわよね」

「もう貴女の戯言には耳を貸さないと言ったはずです」


 交錯する剣が一方へ傾いていく。


 まさかの力負けにシスティアは驚嘆より悔しさが勝る。騎士としての功績を挙げたくて、士官学校まで行った。女性という性別の点以外で戦闘指揮を取れなかった理由はないはずだ。男というだけで騎士になれた連中より、ずっと自分のほうが優れている。


 なのに……訓練なんか受けているはずのない王女に負けている。

 負けている要因がユリウスへの想いからだなんて認めない、そんなの許せない。


 腹立たしさのあまり剣を握る手より口を動かすほうに力が入った。


「かわいそうなものね。婚約者だから自分の都合良いようにしか見えないのよね。ユリウスは王女の思うような人じゃないのよ」

「貴女の言葉はわたくしには届かないと言ったはずです」


 揺るぎないプリムラの声と態度だからこそ、システィアの口は止まらない。


「それでは勝手に言わせてもらうわよ。ユリウスは王女を愛してなんかいない、ただ女であればいいのよ」

「ユリウスさまは女性に対してふしだらな真似はしません」

「確かにね。でもそれは誠実だからじゃないわよ。ただ家族を作りたいから、理想の父親を演じたいだけよ。子供の頃に失ったものの穴埋めできるなら、誰でもいいの。わかる? 結婚相手が欲しいだけで愛してなんかいないのよ」


 激白が剣を突き合わせる二人の時間を硬直させる。


 けれど解けるのも早かった。


 ぷっとプリムラは噴き出せば、たちまちにして声を立ててとなる。堪えられないとばかりの笑いは続く。


 当初システィアは気が触れたかと考えたが、目にしていくうちに気づく。

 プリムラの笑いは紛れもない嘲りだ。憐れみさえ混じえているようだ。

 しかも、だ。


 良かった、とまで言い出してきた。


 何が良かったのよっ、とシスティアは戦乙女の体裁などかなぐり捨てて激昂していた。

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