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婚約破棄され続きの騎士は想いが重い王女の愛で進撃す!  作者: ふみんのゆめ
漢の怒涛篇

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17.漢ではなく、現婚約者が進む(調べはついてます)

 プリムラはウイン皇弟と帝都で二度ほど面合わせで話し込んでいる。


 舞踏会におけるダンスの相手で、それからユリウスが獄に繋がれて不在とする合間を狙って来たようだ。ウイン皇弟の公的な能力はわからない。けれども為人(ひととなり)はつかめた。


 あの性格なら陣形の最奥で身の安全を図る。


 実際、帝国兵団は侵攻が目的なはずなのに攻勢よりも守勢を選んだ。総指揮官に危険が及ばない陣形の構築を他の何よりとした。出会って得た印象から想像がつく。ユリウス率いる騎兵団の狙いがなまじっか読めてしまっただけに、絶好の好機を逃している。


 だが、まるきり全てが失敗だと言い切れない。


 確かにウイン皇弟の予想は当たっていた。

 ユリウスの騎兵団は敵の総大将だけを目がけて、四十倍では利かない敵兵へ向かっていく。紛れもなく無謀とする作戦を実行する。


 きっと、とプリムラは推測する。


 兵団を指揮する任へ当たる者のなかに出てくるはずだ。ユリウス率いる騎兵団の背後を突こうと考える者が。


 そして、それは的中した。


 ただ指揮していた人物が意外だった。 


 戦乙女と呼ばれているシスティアだ。


 ユリウスの最初の婚約者であれば、プリムラは調べ上げている。


 下級貴族ストレリツィ男爵家の次女として生まれている。才気煥発で上級学府より騎士を目指して士官学校へ入る。当時、新設された戦略科へ籍を置く。ユリウスと同年齢であり、知り合った場所でもある。婚約するまで卒業から数年を待たなければならず、学生時代は友人同士で収まっていたようだ。


 システィアの目標は戦場で功績を上げて、女性初の指揮官を目指す。


 しかしながら兵役に就くことは叶わなかった。


 人事側に多少は性差別の意識があったかもしれない。だが現実的に兵として送り込めない納得の理由があった。戦役に従事する者の大半は男性だ。まれに女性の参戦はあるものの、捕虜となった場合の処遇はたいてい性の慰みものになる。帝国において士官学校へ入学した初の女性として、大きく世間で取り上げられている。高い注目を浴びたため、何かあった場合に揉み消すのが難しい。助けられなかった、捕虜にさせてしまったとして、兵団に対する悪い印象を与えかねない。


 リスクを避けた結果、システィアの野望とも言い換えられる夢は潰えた。


 卒業後に再会したユリウスと婚約するまでの仲へなった。けれども結局は破棄を申し出る。別れてからしばらくしないうちにヴァーハン侯爵家の跡取り息子リチャードと婚約した。ユリウスの婚約破棄された理由は別の相手が出来たためと判明する。ただし新たに結んだ婚約も早々に解消となる。リチャードの女癖は悪く、耐えられなくなったみたいだ。


 その後、ある宗教団体へ入信した。帝国に寺院を置くが、教えはグノーシス賢國(けんこく)教皇の説く内容に近い。帝国と賢國の休戦協定はこの宗教団体が深く関わっている。そうプリムラは睨んでいる。ならばシスティアの抜擢もうなずける。


 彼女が盲信の徒を生み出す手管に長けている点も納得できる。


「でももし神様がいるとしたら、信じるに関係なく皆へ等しく微笑むみたいね」


 誰ともなしにもらすほどプリムラにとって思いもかけない好機が訪れていた。


 現在の帝国兵に精神的な部分で最も影響力を与えられる戦乙女が標的とできる位置まで退がってきた。ウイン皇弟が討たれた直後をまとめられるとしたらとする人物が、自ら近くへ寄ってきた。システィアまで失った帝国兵団は瓦解までいかなくても大きな混乱へ陥るに違いない。


 目的を果たしたユリウスが戻ってこられる可能性が、ぐんと上がる。


 プリムラは気力が満ちていく。だから突撃の命令を出す前に最後の確認した。騎乗する馬の傍で控える二人へ視線を向ける。


「ローエン、ミケル、本当にいいのですね」


 はい、とローエンの返事は明快だった。


 ミケルのほうはやや複雑さを表情に刻んでいる。


「今でも王女様が戦場に出るのは反対です。だけど出ると決めた以上は、命を懸けて守ります。ユリウス様……ユリウス団長の信頼に絶対応えたいです」


 たぶんユリウスが命を散らせたくない想いでプリムラの護衛と置いていった二人だ。それを無駄にする決定をしてしまった。もしかしてユリウスの下で突撃したほうが命を長らえられたかもしれない。


 それでもプリムラには、ユリウスだった。……ありがとう、とどうにか感謝の一言を絞りだすだけだ。


 馬に乗った戦乙女システィアが陣形の一番後ろまで下がってきた。戦況を見渡すべく踵を返す、背を見せる。


 突撃! プリムラは剣を掲げて号令を響かせた。


 王国騎兵は声を上げながら襲いかかっていく。


 奇襲に帝国兵は驚いていたものの、悲愴感などない。

 先日の戦いで王国騎兵の弱さがわかった。最初は勇ましかったが、交戦が進み、命のやり取りとする様相がはっきりしだすと、脆さを露呈し始めた。味方だけでなく敵の死傷に対しても動揺を露わにし、逃げ出す者まで出始める始末だ。戦場を知らない連中の寄せ集めにすぎないと知った。しかもこのたびはやたら人数が少ない。


 帝国兵は侮りが敵に利する行為と気づくまで、直だった。


 出撃前にプリムラは共に行こうとする王国騎兵へ言う。

 残った貴方たちは勇敢です、と。戦場の惨さに当てられても、なお戦う姿勢を失わない。全員が初陣で敗北を味わえば逃げ出して当然なところ、踏み止まれている。わたくしは敬意を払います。ここにいる者は他国より秀でた王国騎兵だと信じて疑いません。


 指揮官プリムラは従える騎兵に勇気を与え、自尊心を取り戻させた。

 現に昨日と打って変わって強さを発揮する。少数精鋭とする活躍が打ちひしがれていた分だけ自信へ結びついていく。帝国兵は油断しており、王国騎兵は勇猛果敢に戦う。

 途中、指揮官の洞察により一点突破を図る。見事に帝国兵の隊列を突破した。

 

 ついに戦乙女システィアへ辿り着く。

 プリムラは目的の相手との対峙を果たした。


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