第4回
埼玉文学賞落選作品(笑)
ー「みんな短冊はちゃんと付けたかー?」
「はーい!」
体育館にクラス全員の声が響いた。体育館には、横に倒した状態の竹が1年生から6年生までのクラス分だけ並べられていた。短冊を付け終わったクラスから男の先生の手によって竹は立てかけられていったが、私のクラスである4年2組にもその順番がやってきて、担任の先生ともう一人若い男の先生の2人によってゆっくりと竹は起き上げられていった。最終的にはロープで固定され、その立てかけられた竹を改めて見上げると、横に倒されていた時の印象とはまるで違く、威圧されてしまう程大きな物だと感じた。
「願い事、叶うといいね」
竹を見上げている私の横から、特徴のある高い声が聞こえた。その声の先に顔を向けると、そこには竹を見上げている白矢風月の姿があった。その白矢風月の目線は、大きな竹の更に向こう側を見ているように私には感じた。その姿故に、今のは私に向けてではなく、一人言だったのだろうかと困惑した。
「ね?」
ふいに白矢風月は私の方に顔を向け、その笑顔の口元から左右のヤエバが覗かせた。
「...願ったって叶わないよ」
私は早口で言い放った。そう言ってから『しまった』と思ったが、その気持ちとは裏腹に、私の口が言う事を聞かなかった。
「どうせ叶う訳ないんだ」
今思うと、それは白矢風月に対する照れ隠しだったのかもしれない。というのも、その時の私は、白矢風月に特別な感情を抱いていたから...。
ふと、白矢風月の髪が揺れた。風が吹きつけた方を見ると、一人の低学年の男の子がグラウンド側の扉を重そうに閉めていた。視線を元に戻すと、白矢風月は再び大きな竹を見上げていた。その眼差しは、とても悲しそうだったような気がした。
そんな私に対して、その後、白矢風月はなんと答えたのかは憶えていない。それ程印象に残っていないとなると、もしかすると、何も答えなかったのかもしれない。しかし少なくとも、その時、私を軽蔑した事は確かだったろうー
「普通の子供でしたよ。クラスの人気者でもなく、おとなしい子でもなく...すいません、面白くなくて...」
私は苦笑いをしながら、鈴木さんの方を少し見た。
「いえいえ、僕もそうでしたから。いや、どちらかというと、目立たない方だったのかもしれません...。クラスの人気者の子が羨ましかったですよ。でも僕の場合は、小学校時代が一番楽しかった気がします。懐かしいな〜...。逢沢さんは、同窓会とかって出席された事あります?」
「同窓会...えー、ありますよ」ー
第5回へ続く...




