第13回
埼玉文学賞落選作品(笑)
ー風月の願いが叶ったのは、それから4年後の10月。お互い25歳の時だった。
私は、結婚式場の新郎新婦の控室で着慣れないタキシードに身を包み、花嫁である風月が別室で衣装に着替え終わるのを一人椅子に腰掛け待っていた。すると部屋の扉が開き、そこからウエディングドレス姿の風月が現れた。私はとっさに立ち上がると、しばし風月のその姿に見とれてしまっていた。すると風月はそんな私にゆっくりと近づき、ハニカミながら、そして照れを隠すかのように私に言った。
「願い事、叶ったね...」
純白のウエディングドレス姿の風月はとてもキレイだった。俺が風月を一生守る。絶対に幸せにするから。心の中でそう強く誓ったが、私はあえてそれを言葉にせず、ゆっくりと頷いたー
外からの子供達の声もやがて聞こえなくなり、次第に薄暗くなっていく空を窓越しから眺め、私の頬には自然と涙が流れていた。私はそれを拭う事もせず、ただ空を眺め続けた。鈴木さんはそんな私に気づいたが、そっと私に背を向け、黙ってベットに横になった。それが鈴木さんの私に対する優しさだった。そんな私が涙を流している理由を鈴木さんは知っているー
ー「信じていれば...必ず願いは叶うからね...だから...」
それが妻である風月の最後の言葉だった。救急車で病院に搬送される際、ようやく病院が見えたと思ったその時、風月はそう言い残し、静かに息をひきとった。それは結婚してからわずか3年後の、そう、あれは暑い8月。風月が28歳の、早過ぎる死、いや、別れだったー
第14回へ続く...




