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領地でのハッピーライフスタート

よろしくお願いします。


「あぁー。このお肉はなんでこんなに美味しいの。

舌の上でとろけているわ。

あぁ。最高だわ。生まれてよかった」


鼻をくすぐる香ばしい匂い。

私の食をそそるわ。


「毎日、美味しい。美味しい。と言いながら、食べていますが、公爵家のお料理も高級食材を多く使って腕のいい料理人が作っているではないですか?」


「ええ。公爵家のお料理もとっても美味しいわよ」


ええ。確かにここに来て毎日、毎食、美味しい美味しい。って言っているわね。

公爵家の料理は、ここの食事に負けないくらい美味しいわ。ただ、前世を思い出したから、前世に引っ張られることがよく起こるのよね。


前世ではこんなに高級な食材を使って一流シェフが作ってくれる料理なんて食べたことがないから、感謝して、毎日美味しいと思って食べているのよね。



そう思っていると、突然執事が扉を開けた。


「メイベルお嬢様、お手紙です」

「あら。お父様かしら?」


思った通り、お父様だった。

お父様はやっぱり過保護だった。

私のことを心配する内容がたくさんあった。


それを省いて内容をまとめると、明日から新しい学校に登校できるということ。

あとは、サプライズゲストが遊びに来てくれるらしい。


あら。このサプライズゲストは予想がつくわ。


第1候補が弟のキースね。

弟と遊ぶのは本当に楽しみだわ。

キースがいるってことはもしかしてお母様も来るかもしれないわ。嬉しいわ。


第2候補がお兄様ね。

お兄様は次期公爵家の当主なのだから、領地の様子を確認するついでに私のところに来てくれるのかもしれないわ。

あら。それを考えたらお兄様の方があり得るのかしら。


サプライズゲストってワクワクするものなのね。

と楽しく想像していた私だったのだが、ふと思い立った。


明日は新しい学校なのよね。

万が一にも悪役令嬢だとか、性悪女だとかいう不名誉な二つ名をゲットすることが無いように……

今、出来ることをしようかしら。

そうね。まずは自己紹介の練習よね。


やるからには本格的にやりましょう。

アドバイザーを集めましょう。


そう思って、ちょうど私の側にいた、アンナ、執事、シェフに診てもらった。


第一印象が大切だから、笑顔を忘れないで、元気よく話すことを意識してみた。


「私の名前は、メイベル・マクガーンです。

特技は、ええと……」


「「「ひぃっっ」」」


あら。私が特技を考えていたらおかしな声が聞こえたわよ。


「あら、みんなどうしたの?」

「お、お嬢様、その恐ろしい顔は今すぐやめてください」


アンナが3人を代表してそう言ったのだが……

私は笑顔で話していた……はずだった。


そう。またしても新事実が発覚した。

笑顔が恐ろしいという事。

またまた、悪役令嬢的な設定が登場してきたわ。

そう。好印象を作るはずの笑顔で悪印象を作れるというスキルが。

正直に言っていらないわね……


きっとヒロインの笑顔だったら、守りたい笑顔や一目惚れするような笑顔、元気が出るような笑顔のはずなのに、どうして悪役令嬢ポジションは笑顔1つからヒロインと差がついてしまうのよっ。

ついつい悲しくなってしまった。


でも、そうね。

笑顔を作るのではなく、笑うしかない状況を作り出せばいいのよ。

そうね。笑顔になれるような微笑ましい出来事を思い出しながら、自己紹介をしてみるの。


「ええと、お嬢様。続きはいかがしますでしょうか?」


あら。考え事に没頭していて、自己紹介の練習を忘れていたわ。

あら。そうだわ。

もう一つ悩んでいたことがあったわ。


「特技はどうしようかしら」

「いつも()()()()が得意だと言っていたじゃないですか」


そうだわ。でも"魔法"が得意ならいいけど"魔法攻撃"っていうのがいかにも悪役令嬢ね。


この世界には、火、土、水、風、光、闇の魔法があるのだが、案の定ヒロインしか使えなさそうな光魔法は、私は使えないのだ。そして、私は、それ以外は全て使えるのだが、その中でも特に、闇魔法がお手の物だった。


もういいわね。ここまできたら……って感じね。


「もうちょっと、ほら。なんか好印象だったり、いかにも令嬢!って感じの特技ってないかしら?」


誤解は招きたくないので言っておくが、魔法が使えるのはとても嬉しい。でも、第一印象が大切で、ヒロインとは言わなくても、悪役令嬢とは想像できないような印象が切実に欲しい。


すると、シェフがすぐに答えた。

そう。このシェフは若くて容姿が素晴らしいのだが、女性扱いまでも上手い。

決してプレイボーイ等ではなく、"天然人たらし"らしい。


「お嬢様は、刺繍が得意と伺ったのですが、そちらはどうですか。令嬢としても、刺繍が得意だというのは誇らしいものではないですか?」


「いいっっ。いいわね。それは最高ね」


あら。シェフの提案の仕方から、女性から人気な理由を垣間見えるわね。

刺繍がうまいのは可愛らしい女性のイメージがあるわ。

前世は不器用だったから忘れていたけど、そうね。今の私は刺繍も得意だったわ。


そんなこんなで、私の悩みは解決して、明日に向けてウキウキしていたのだが、皆さんはお忘れではないだろうか。


そう。私はまだ笑顔問題を解決できていなかった。

1つの問題を解決して、全て解決していた気になっていた幸せな私は、微笑ましいネタを準備し忘れていたのだった。





読んでいただきありがとうございます。

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