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和解

よろしくお願いします。

「失礼します」


私は一言声をかけて、シャグラン様との待ち合わせの教室に入った。

もちろん、ケイは無言だった。


教室といっても、普通の教室とは違い、どこか校長室のような教室だった。

向かい合った高級そうな長いソファーが2つ、そして、その間にまたもやお高めの感じの大きい机があった。

その机には、既にティーの入ったカップが3つ準備されていた。


私は、この気まずい重々しい空気を振り払うにはどの話題を出すのが適切なのか考えまくった。

そうこうしている内に、シャグラン様が重々しく口を開いた。


「メイベル嬢。魔法戦のことに関して、本当に申し訳なかった。謝ってすまないことは承知しているのだが……」


??

私は、未だにこの問題の重さはわかっていない。

なぜなら、シャグラン様も私も魔法戦で戦っただけ。

勝つためにお互い自分の力を最大限に発揮しようとしただけ。


闇魔法を使う事は禁止されていないのだし、確かに"洗脳"は使い方によっては危ないけど……

でも、"洗脳"されていることに気づいたり、魔法戦で勝敗が決まれば、シャグラン様はといていたたはずだからそこまで重くはないと思うわ。


むしろ、"洗脳"にかかってしまった事で、自分の弱さを見つめる機会を得た事だし、ケイの事も思い出せたのだから、この事を加味して考えたら、むしろ感謝しているといってもいいくらいだわ。


私は未だに考えを整理できていなかったけど、言の葉を紡いだ。


「ええと……シャグラン様はなぜそんなに罪悪感を感じているのですか?

お互い魔法戦で戦っただけですよね。

むしろ、私もシャグラン様の魔力を全て吸収してしまい、シャグラン様を気絶させましたよ」


すると、シャグラン様は目を見張り、恐る恐る言葉を発した。


「あぁ。だけど、オレは君を"洗脳"してしまった。

君が……君が、オレの事を愛してくれたら……と願って」


その言葉を聞いた時、それまで静かに様子を見ていたケイが怒りをあらわにした。


「やっぱり。お前はそれが目的であんな事をしたんだな。いつから、闇魔法が使える事を隠していた?」


シャグラン様は整った顔を歪めながら答えた。


「魔法戦の少し前の日だ。決して初めて会った日から隠していたわけではない。しかし、彼女が欲しいと思って使ったのは事実だ。本当に申し訳なかった」


私はその様子を見て、慌てて仲裁役を買って出た。


「ちょっと。ケイ。落ち着いて」

「落ち着いたいられるか。アイツのせいで、メイが気を失ったんだ」

「ケイ……確かにそうだけど、シャグラン様もあの時気を失ったのよ」

「でも、アイツはお前の心を無理矢理奪おうとしたんだ!」


あら。そういえば、私もシャグラン様の魔力を吸収した際に、勝手に心の中を覗いてしまったわよね。


「ケイ。こんなに私のことで怒ってくれて嬉しいし、ありがたいのだけど……私もシャグラン様の心を勝手に見てしまったわ」


私がそう言うと、ケイは、もう一度静観する事にしてくれたようだった。

きっと、ケイは私が自分でこの件を解決したいという気持ちを理解してくれたのだろう。


私は、その事に関して、シャグラン様にしっかり謝ることにした。


「シャグラン様。私は故意ではないのですが、魔力吸収の際に、シャグラン様の感情を勝手に覗いてしまいました。誰だって、知られたくない気持ちはあるはずなのに。私も申し訳ないです」


「いや。実は、魔力吸収の際にメイベル嬢が、オレの気持ちに共感してくれた様子が伝わってきて……

やっと、どこかで、報われたような気持ちがしたんだ」


「そうなんですか。私もシャグラン様に"洗脳"の魔法をかけられた際に、今まで思い出せなかった大切な出来事を全て思い出せたんです」


「……そうなのか?」


「はい。だから、むしろ感謝している気持ちもあるんです」


「そうか。でも、"洗脳"はやりすぎだった。申し訳ない」


「いいえ。大丈夫です。闇魔法は使い方次第で、善にも悪にもなり得るので、お互いちゃんと扱えるように頑張りましょう」


「そうだな」


そう言って、話し合いは終了かな。と思っていた時だった。シャグラン様が話を続けた。


「ケイン殿。申し訳ないがメイベル嬢と2人で話をさせて頂きたい。決して傷つけたりはしないとハン王国の第1王子の名にかけて誓う」


ケイはシャグラン様の誓いを聞き渋々了承した。


「あぁ。わかったが、本当に2度目はないぞ」

「わかっている。もう2度としない」


そう会話を交わして、ケイはしばらくの間教室の外に待っていてくれる事になった。


そんなこんなで、私とシャグラン様は2人で向き合って座った状態になった。

すると、シャグラン様が声を発した。


「メイベル嬢、今回のことは本当に申し訳なかった」

「それは、本当に大丈夫です。お互い様です」


シャグラン様は言葉をつないだ。


「ああ。ありがとう。これだけはどうしても伝えたかった。メイベル嬢が、私の気持ちに共感してくれて、本当に救われた。ありがとう」


「いえ。私もシャグラン様のおかげで今があります」


「そうなのか。オレは、魔法戦の時、君の気持ちは関係なく、君を私のものにしたいという気持ちが強くて"洗脳"をしてしまった。今振り返ると愚かだった。もう2度としない」


「気持ちはもう十分伝わりました。もう気にしてないですよ」


「本当にメイベル嬢が好きで愛していた。君の愛している人はケイン殿なのだろう」


「気持ちは嬉しかったです。ありがとうございます。はい。シャグラン様のお陰で私の愛している人がケイン殿下だとわかりました」


「そうか。あんなことをしてしまったが……

少しでも、君が幸せになれたのなら良かった」


「はい。シャグラン様のおかげです」


「……そうか。オレも、闇魔法を使えるようになって日が浅いため今後使い方に注意する。2度とこんな使い方はしない」


「そうですね。お互い気をつけましょう」


「あぁ。話し合いに参加してくれてありがとう」


そう言って、シャグラン様は私を教室の出口まで送ってくれて、ケイと合流する……はずだった。


教室の扉を開けた、ケイに会うと、今度はケイがシャグラン様に声をかけた。


「お前には言いたいことがある」

「……わかっている。覚悟は決めているよ」


そう言って2人が教室の中に入っていった。


中で何が起きているかハラハラしていたのだが、特に何かが起きた様子はなく、3分後にはケイが穏やかな顔をして出てきた。


シャグラン様の顔が少し腫れ、ケイの拳が少し切れているように見える気がしたけど、2人の会話は2人しかわからない。

でも、2人ともお互いを認め合えているような雰囲気は感じた。


きっと、うまく和解できたのね。良かったわ。と私は安堵した。



読んでいただきありがとうございます。

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