登校再開!
今日は普段より長いのですが、よろしくお願いします。
私たちが領地に戻ってきて、1日休みをおいて登校を再開することになった。
そして、それが今日なのだ。
今日は、ずっと謝罪の手紙をくれたシャグラン様と話すこともあるし、久しぶりの学校ということで少し緊張した。
でも、隣には変わらずケイがいてくれるので心強い気もしていた。
そうして、今教室の目の前だ。
始めが肝心よね。
と思い、明るくにこやかな笑顔で挨拶できるように気持ちの準備をして、自分に喝を入れて教室のドアを開けた。
よし。挨拶をしましょうか。と思った矢先だった。
急に私の体に何かが飛びついてきた。
え?と驚いたのも束の間、それは、クリスティナからの熱烈な歓迎だった。
「メイベル様。戻ってきてくれて嬉しいです。ずっと待ってたんですよ」
そう、私に抱きついて言ってきた。
まぁ。そんなに喜んでくれて嬉しいわ。と感動したのも束の間。ケイが言葉を紡いだ。
「メイは俺だけの大事な人だから、すぐに離れてくれ」
「ちょ。ちょっと。ケイ。いいじゃない。久しぶりの再会なんだし、同性なのだから、このくらい普通の距離じゃない?」
「メイ。いつどこで誰と恋愛が発展するかわからないんだ。君には人との距離感と恋愛の機微というものの勉強が必要だな」
「まぁ。失礼ね〜。私だって、そのくらいのことはわかっているわ」
「それは、わかっているつもりになっているだけだ」
あら。これは何故かお説教モード開始かしら?と思っていると、救世主の一言によって、そのお説教モードが終了した。
「あら。殿下とメイベル様は仲良くなられたんですね。
よかったですね。殿下。ずっと、メイベル様のことは気にかけていらしゃいましたし」
私は疑問に思い言葉を口にした。
「どういうこと?」
「もう、思いも通じ合っていらっしゃるように見えるので言っても大丈夫ですよね。殿下」
「……あぁ」
ケイは少し逡巡し、肩をすくめながらそう言った。
「実は、私ずっと前からおしゃれに興味があったのですが、"侯爵令嬢は自分でメイクをするものじゃない"という両親の考えからなかなか自分でメイクをできずにいたんです」
「知らなかったわ」
「そうなんです。そして、そんな中で、殿下と出会い、殿下からの"奇跡的に好きなものや、やりたいことを見つけたのだからそれをすべきだ"という一言と、殿下が両親を説得してくれて今は、堂々と好きなことができているんです」
「そうなのね」
「はい。そして、その代わりとして、殿下がある条件を提示してきたのです。その条件は、殿下の婚約者をプロデュースするということでした。私にとっては、こんなに美しい人をプロデュースできるので、条件というより名誉といったほうが正しいのですが」
「あら。そうなのね。でも、ケイはあの遠足の時に好みが変わったのか?という質問をしてきたのよ」
すると、ケイは赤面しながらこう言った。
「……あぁ。アイレス嬢と契約したのは5年前で、メイが元から綺麗なのにさらに綺麗になっていて……
アイレス嬢との契約をすっかり忘れて混乱してしまったんだ。
しかも、他の男にメイを奪われるんじゃないかって気が気じゃなくて……」
それを聞いていると私もどんどん顔に熱が広がっていくのを感じた。
それを見ていたクリスティナは
「もう〜幸せモードじゃないですか。ご馳走様です」
と微笑ましそうに見ていたのだが、そこになんとルーカスもやってきた。
「皆さんで殿下との出会いの話をしてるんですか?いいですね。オレのもさせてください」
とやってきた。ルーカスはクリスティナからの"空気が読めない奴"認定されてしまったが、気にせず話し始めた。
「オレん家は騎士一家だったのに、オレは、幼少期はなかなか剣術が上達しなくて悩んでいたことがあったんだよ」
「そうなのね」
「挙げ句の果て父さんと大げんかをしてさ。正直どうでもいい理由だったんだけど、お互い折れるタイミングを逃してしまって仲直りできなくて、オレは家出したんだよ」
「喧嘩ってだいたいそういうものよね」
「そして、オレは誘拐されかけて、そんなところに救世主登場!殿下が素晴らしい剣術で誘拐犯を一掃してくれたんだ!それに憧れて剣術の練習をしていくうちに上達していったんだ!」
「わぁ。すごいのね」
「ありがとう。そして、その誘拐犯事件をきっかけに殿下と知り合い、護衛騎士となり、今だから言うけど、メイベル嬢を陰ながら守る役に任命されていたんだ」
「えぇ?!そうなの!」
「あぁ。殿下が近くにいなくて、メイベル嬢が1人で解決できない時に守れ。もちろん、恋には落ちるな。と言う命令だったんだ。
いつ守るシーンが来るかハラハラしていたけど、基本殿下はメイベル嬢をずっと見守っていたから、役割はなかったんだ。でも、魔術戦の時はオレも守れなくてごめんな」
「ううん。だって大会だもの。対戦していない人が割って入ることができるわけないわ。あっ。そういえば、魔術戦の結果はどうなったのかしら?」
恋に落ちるな。とも命令していたのね……
ルーカスは攻略対象だったといっていたし、既に手を回していたのね。と思っていた時だった。
いつから話を聞いていたのだろうか。
すっーとオリバーが会話に入ってきた。
「結果としては、殿下が優勝しました。
メイベル嬢はシャグラン王子に勝ったので準優勝ということになっています。
決勝戦は殿下の不戦勝といったところです」
「あら。そうなのね。少し悔しいわ。私も優勝したかったわ」
「確かに。殿下もお強いですが、メイベル嬢の魔法の才能は素晴らしいので勝算はあったと思います」
「あら。ありがとう」
「ところで、先ほど聞いたのですが、殿下との出会いの話をされていらしましたよね。私も是非させてください」
「えぇ。もちろん」
「私が男爵家出身なのはご存知のですよね?」
「えぇ」
「しかし、8年ほど前はとても貧乏でまともに学ぶこともできませんでした」
「そうなのね」
「はい。私は勉強がとても大好きで、特に魔法座学が大好きなのですが、お金もなく、なかなか勉強できない状況でした」
「そうだったのね」
「そんな中、殿下が私たちの家を支援して下さることになったんです」
「まぁ」
「お金を利子なしで貸してくださり、私に学べる機会を与えてくださったんです」
「あら。よかったわね」
「はい。そして、魔法座学を極めることができ、家の立て直しに必要な学を得ることができました」
「まぁ。よかったわ」
「そして、殿下の条件は、ルーカスと同じで殿下の婚約者に恋に落ちるな。そして、その学を活かして、殿下の補佐をする。メイベル嬢が困った様子がないかその都度確認する。といった内容でした」
「そうなの」
「そうなんです。メイベル嬢は8年前からずっと大切にされているんですよ」
「えぇ。ありがたいわ」
「殿下をよろしくお願いします」
「えぇ。もちろん」
そんなこんなで、ケイが乙女ゲーム開始前にいろいろ動いていたことを身を以て知った時間だった。
私は、ケイのおかげで今の人脈があるのね。ケイは婚約者であったメイベルが悪役令嬢にならないようにクリスティナにプロデュースをお願いし、乙女ゲームが始まらないように手を回した。と知った。
後から聞いたことなのだが、ルーカスやオリバーの悩みはメイベルが解決する予定だったらしい。
そして、乙女ゲームにはハッピーエンドとバッドエンドがあるため、乙女ゲームが開始してしまうと、バッドエンドルートに入る可能性もあり、フラグを折っていたと言う。
メイに合わせる顔がないと思って助けていた婚約者がメイで、今になっては、メイを他の男に取られなくて良かった。と照れながら言っていた。
こんなにも愛されているなんて幸せね。と思ったが、私は自分で何も達成できていないんじゃないかしら?と少し悲しくなったところ、ケイは私の気持ちが伝わったのだろうか。ケイの美しい唇が弧を描いた。
「メイは、1番難しい、悪役令嬢になる予定だったチルダーナ嬢とルイーズ嬢を救ったんだ。彼女たちの未来を明るい方向に向かわせたのだから、もっと誇っていい」
こうやって、さりげなく励ましてくれるところは前世と変わらないわ。と改めてケイの優しさに触れ感謝を示した。
「こんなに何回も助けてくれてありがとう。本当にケイのことが大好きよ。私もケイと並んで恥ずかしくない人になれるようにこれから一層精進するわね」
「もう十分なのだが、そう言ってくれて嬉しい。俺も愛しているじゃ足りないほど愛している」
そうしてお互い見つめあって、微笑んだ。
改めて、私も頑張ろう。と思い、まずは自分の能力を伸ばすためには日々の授業からよね。と思いいつもより集中して学校の授業に参加した。
そして、あっという間に放課後を迎えた。
シャグラン様との待ち合わせの時間ね。と思い、貸切の教室に向かうことにした。
もちろん、ケイは1人で話をしに行かせるのは心配。アイツは本当に許せない。とのことでケイが一緒について来ることになった。
さて。どんな話し合いになるのかしら。
魔法戦で反則をしたわけではないのだし、私は平和に解決したいわ。
シャグラン様に洗脳されてしまったのは私の弱さでもあるのだし、シャグラン様のお陰で前世を思い出せたのだから、感謝の気持ちもあるのよね。
どうやって怒っているケイを説得しようかしら。
そう思いながら、私は貸切教室のドアをこれから始まる話し合いへの覚悟を決めて、ゆっくりと開けた。
異能も少しずつ明らかにしていきますので、今後も読んでくださると嬉しいです。
さて、次回ケインとシャグランと対戦?!スタートです。
見届けてくださると嬉しいです。
ブクマや評価、いいね!をいつもありがとうございます。
完結まで頑張ります!
いいねやブクマ、広告下部の星のタップによる評価ありがとうございます。
とても、モチベーションになっています。
短編書きました。
改稿前
私は魔法を使えるらしいので、最低な婚約者とその相手に倍返しする〜その後の人生は私の自由ですわ〜
https://ncode.syosetu.com/n7508in/
改稿後
初級光魔法で婚約破棄してやります!(※ただし、禁忌の闇魔法をバレないように使いますわ!)〜その後の人生は私の自由ですわ〜
https://ncode.syosetu.com/n2738io/
上の作品は今作品の連載を終えたら、連載しようか悩んでいる作品です。
改稿前と後はキャラ設定が違います。
この作品と世界観は少し似ていますが、内容は全然違います。
お時間ある時に、2つの作品を投票気分で読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。




