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自責の念

よろしくお願いします。

私が、目覚めたのは魔法戦から3日後だった。


話によると、ケイン様が私を救護室に連れて行ってくれたらしい。

そして、私の家族が学校から連絡を受けすぐに迎えに来てくれた。


私の家族は、私が優勝することを疑っていなかったので、先に領地のマクガーン家の屋敷でパーティーの準備をしてくれていたらしい。


それを台無しにしてしまい悲しくなった。


そして、私は前世のことを完全に思い出したのだった。

私の前世の名前は、五十嵐 芽依(いがらし めい)

そして、私が好きだった人の名前は一条 圭(いちじょう けい)


そんな彼とは幼馴染みで小学校から高校までずっと一緒だった。

そんないつも一緒だった私たちに終わりが来たのは、同じ大学に入学するという日だった。


目の前に小さい女の子が現れ、トラックが走る道路に飛び出してしまった。

私は何も考えず、女の子を守るため慌てて飛び出した。

そう。優しい彼が私を守ってくれるということを想定すらできずに……

そして、私は彼と共にひかれてしまった。

彼が私を包み込む形で……

私は、彼の人生まで奪ってしまったのだった。


後悔がずっと襲ってくるし、悲しくて、申し訳なくて、もう2度と会えないのに謝ることすらできない。


そんなこんなで、後悔と自責の念に苛まれている時だった。

ウィル兄様とキースが私の部屋をノックした。

私は、まだ考えたいこともたくさんあったけど、家族にはかなり心配をかけたわね。と思い、顔を見せることにした。


「やぁ。ベル。大丈夫か?」

「ベル姉様。心配しました」

「ありがとうございます。少しは元気になりました」


「そうか。でも全快というわけではないんだな?」

「はい……」

「やっぱり、そうだよな。"洗脳"されたんだしな……」

「いえ。シャグラン様はれっきとした闇魔法で勝負をしてきたので、それは関係ないです。むしろ大切なことを思い出しました。」

「そうか」


「ベル姉様。何か思い出して疲れてらっしゃるんですか?」

「ええ。そうなの」

「それでしたら、ゆっくり心を休めるのも大切ではないですか?1ヶ月くらい休学して、一緒にお出かけしませんか?」

「お出かけ?」

「はい。お出かけというよりは、母上の里帰りについていくと言う方が近いですね。母上の出身のカラ王国に遊びに行くんです。

僕が、母上と一緒に行くことになってたんですが、一緒に遊んでくれる人がいなくて……

一緒に行ってくれませんか?」


キースのうるうるの瞳の上目遣いを見ると、断るという選択肢は無くなるみたいだ。

私も、ゆっくり心を整理する時間が欲しかった。

でも、キースと心置きなく遊ぶことは今のところできそうにもないわ……


「一緒に行きたいのだけど、キースとたくさん一緒に遊べるかはわからないの……」

「ベル姉様が一緒にいてくれるのなら何だっていいです。ベル姉様はゆっくり心も休めてください」

「ありがとう。キース」


子どもは人の感情を読む能力に長けているのかしら?私は、キースに助けられたみたいね。


そんなこんなで、私もお母様とキースと一緒にカラ王国へ行き、1ヶ月ほど滞在することになった。


出発前に、学校に心配をかけたことに対してと休学する旨を伝えておいた。



今の私はというと、かなり心の整理ができている。

彼には本当に申し訳ないことをした。

でも、ここでずっとウジウジウジウジしていたら、彼に合わせる顔がない。

彼が"あの時、守ってよかった"と思える自分になりたいと思った。


大切な人の命を奪ったのだから、悪役令嬢という言葉では片付けるには、足りない罪を犯した私だけど、今度こそ周りの人と、他の人を守れるようになりたい。


まず、カラ王国に着いたら現地の神殿に行って、彼に謝ってみましょう。

届くかわからないけど、誠心誠意をもって謝罪と守ってくれたことに関しての感謝の気持ちを伝えましょう。

そして、

「私のエゴだけど、あなたに誇れる私になれるように頑張る」

という決意も表明しましょう。


心が決まったので、お母様にまずは神殿に行きたいことを伝えた。すると2つ返事が返ってきたので、すぐに行動に移すことができるようだった。


馬車に揺られてかなり経った。

カラ王国の神殿に着いた。


私たち3人で降りて、神殿の入り口に向かった。

お母様が元王女だったこともあり、まずは神殿の案内をしてくれるようだった。

神殿の広場に案内され、そこで少し休憩することとなった。


私は、神殿の広場の一部の小さな白い花が咲いている野原に立っていた。


そうすると、聞こえるはずのない声が聞こえた。


「メイベル嬢!メイベル嬢!」

「っっ。ケイン様」


なんと、ケイン様が目の前にいた。

なぜ、ケイン様がここに?

私が悪いことを?

あぁ。実際、圭に悪いことはしたわ。

圭が私に恨みを持っているのなら、悪役令嬢認定されて、家族は巻き込まずに、私1人だけ断罪されるのも悪くないのかもしれない……


ケイン様と出会って、プラス方向に行っていた思考がマイナス方向になってしまった。


自分のしでかした罪の大きさに怖くなって、何故か、ケイン様と会話をすることができそうになかった。


他の人からの自分の罪を責める言葉を聞くには、まだ覚悟が足りていないようだった。


私はそう思考して、逃げ出したくなり、行動に移した。


すると、また思わぬ声がした。


「めいっ。待ってくれっっ」

「えっ??」


私は驚いて足を止めた。


今、"めい"と呼んだ?

私の愛称は"ベル"で、この世界で私のことを"めい"と呼ぶ人なんてありえないわ。

ケイン様はどうしたの?

このタイミングで何故"めい"という言葉が出てきたの?


"何かがおかしい"


私はそう漠然と感じた。

読んでいただきありがとうございます。

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