予想外の展開
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シュグラン様とペアを組んだ授業の終わりだった。
「メイベル嬢、一緒に来てくれ」
「は、はい」
殿下に呼び出しをくらった。
私は毎度のように自分の悪い所を探したけど、よくわからなかった。そうしながら、授業が行われていた所の近くにあった東屋に一緒に行った。
「お願いだから、あの第1王子には気をつけてくれ」
「ええと、はい」
「本当にわかっているのか?彼に近づいたら危険な目にあうのは君なんだから、本当に気をつけてくれ。わかったか?」
「はい。シュグラン様と近づきすぎたら危険という事ですよね。私もなんとなくそうだとは思っていました」
「シュグラン?君は婚約者の俺は殿下と呼び、あの第1王子は名前で呼ぶのか?」
「ええと、シュグラン様にそう呼ぶよう言われたので……」
「俺もケインでいい。そうしないと、俺とあの第1王子のどっちが婚約者なのかわからないだろう。とりあえず、あの第1王子には、授業の時は仕方ないが、出来る限り近づかないように」
「わかりました」
殿下は私の両手を掴みこみ、私の瞳をじっと見つめてそう言った。そして、何故か話が終わっても、何か私の言葉が足りないかのように手を離してくれなかった。
あら?もしかして、いま名前を呼ばないといけないのかしら?もしかして、名前を呼ぶ練習をさせられているのかしら?
そう思い、とりあえず呼んでみることにした。
「ええと、わかりました、ケイン様」
「あ、あぁ。帰るぞ」
そう言って、ケイン様は、ぱっと私の手を離し後ろを向いた。ケイン様の耳は何故か少し赤くなっていた。
それから、1週間が経った。シュグラン様とのペアはそのまま継続しているが、シュグラン様との間に何かトラブルは起こっていない。
しかし、最近、私の周りではおかしな事が起きるようになった。
何故か、教科書がなくなる。
これは隣の席のケイン様が、一緒に見せてくれるので特に問題は起きなかった。
でも、前世、庶民の私からしたら教科書代がもったいなかったわ。家族の皆、ごめんなさい。
そして、廊下を歩く時に躓く事が多くなった気がする。運動能力が低下したのかしら?
大体、廊下は遠足時のグループの皆とシュグラン様で歩いているのだが、ケイン様とケイン様がいない時にはルーカスが支えてくれる。
ルーカスは、
「メイベル様はドジっ子だなぁ」
って、笑いに変えてくれるため、いつもグループに楽しい雰囲気をもたらしてくれる。
ちなみに、スザンヌはシュグラン様をお気に召したのか、ずっとシュグラン様の隣を離れない。
だから、私はシュグラン様と一緒のグループにいても、特に関わることはなかった。
そんな1週間を過ごしている時だった。
私はよく分からない手紙で、学校の大きな湖の前に呼び出された。
初めてみる湖だったので"綺麗な湖ね"と思い、湖に近づいてみると、後ろから誰かの気配を感じ、振り返ってみた。
すると、何故か両手を胸の前に出す、前世風に言うと、手だけ相撲の形をとったヒロイン候補のルイーズ嬢がいて、私が身を乗り出して湖を見ていたからだろうか。それとも急に振り返ったからだろうか。
彼女は、バランスを崩して湖に落ちてしまった。
助けられなかった自分の未熟さを反省しつつ、急いで手を出して救出したのだが、彼女は急に私に攻撃を仕掛けてきた。
「出でよ、光のアロー」
「吸収」
私はあわてて、彼女の光魔法を闇魔法で吸収して、無効化した。
「ルイーズ嬢、急にどうしたんですか?」
「急にも、何でもないわよ。あなたの存在が邪魔なの」
「どうしてですか?」
「婚約者のあなたのせいで、私は大好きな殿下に近づけないじゃない」
「婚約者とか関係なく話すことはできると思いますよ」
「あなたのそう言う所がムカつくのよ。今すぐ消えて。出でよ、光のアロー」
「反射」
「キャー」
「ストームウィンド」
これでは話ができないし、埓があかないわ。
そう思い、私はルイーズ嬢の攻撃を闇魔法で反射させ、彼女に向かわせたが、ギリギリで方向転換させ彼女を傷つける事はしなかった。いわば警告をしたようなものだった。
この思考は、悪役令嬢だからできることよね。
ルイーズ嬢はそれで、攻撃の手を止めた。
「私は運命の初恋をしたの。どうしても殿下じゃないとダメなの」
「そうなのですか。運命の恋は素晴らしいですよね。でも、それで自分を貶めたらダメですよ。
今、あなたは運命の恋をして、そのせいで人として良くないことをしています」
「恋は身を焦がすものなのよ。仕方ないのよ」
「いいえ、やっても良い事と、悪い事があるのと同じです。身を焦がす恋をして、あなたの身を破滅に向かわせても良いのですか」
「それは……」
「私は、こう見えて公爵家の令嬢で、形だけでも殿下の婚約者です。もしかしたら、あなたは殺されていたかもしれないのですよ。あなたは運命の恋をした途端死んでも良いのですか?」
「っっ。すみません。それは、嫌です。でも、好きで、好きで仕方がないのです」
「私は恋愛相談には向かないのですが……
まずは伝えてみて……」
「でも、どうせ振られますわ」
「振り向かせるために頑張ってみるのはどうですか?自分自身を高められますし……」
「きっと、振り向いてはもらえませんわ」
「それは……」
私は、恋愛をした事がなかったため、何を言ったら良いのかわからなかった。
「殿下以外、殿下以外はいらないのです。どうして、こんなに、こんなに好きなのに」
「……」
彼女はそう言って泣き始めた。
私はさりげなく、湖に落ちて、ずぶ濡れのルイーズ嬢を風魔法で乾かした。そして、彼女の背中を撫で続けた。
それから、1時間ほど経っただろうか。
「でも、こんな酷い有様じゃあ、殿下も好きになってくれないですよね。明日、告白をして振られて、踏ん切りをつけれるように頑張ります。殿下に告白しても良いですか?」
「ええ」
私はこれ以上、何も言えなかった。焦がれる恋も、本気の恋もわからない。でも、恋が楽しいものだけではない事は見てわかった。
「マクガーン様のお陰です。これ以上、人として落ちた女にならなくてよかったです。本当にすみませんでした。足を引っ掛けたり、教科書を捨ててごめんなさい。教科書代も弁償します。そして、慰めてくれてありがとうございます」
「ええ、わかりました。ルイーズ嬢は素敵な人ですよ」
「もうっ。そういう所なんですね」
ルイーズ嬢の最後の一言はよくわからなかったが、そんなこんなでルイーズ嬢と別れた。
しかし、私はまだ経験した事のない恋というものを考えたり、今後の事を考え、湖の水面をぼーっ見ていたところ、ケイン様がすっと現れた。
「大丈夫か?」
「ええ。私は大丈夫です」
それ以外話の会話はなかったが、純粋に心配してくれている様子が伝わり、何故か言い表せない安心感を覚えた。
鏡のような水面には、1人の女性とその女性を気遣う男性、そして夕日だけが映っていた。
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