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無人の時代  作者: 荒里あゆむ
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07章

 ドローンは夜の新東名を遡って行く。眼下には高速道路の街灯が点々と連なっている。

 道路の両側は塗りつぶしたような漆黒の闇だ。浜田はその風景をタブレットのウィンドウを通してモニターしている。遠くからハイビームの乗用車が急速に近づき、あっという間に下方に過ぎ去って行った。


「どうも、インターを降りてすぐの辺りで止まってるっぽいな」

 佐藤が自分のタブレットで十号車の位置を確認して言う。

「ドローンの画面にも赤い点が出てますが、きっとこれですね」


 浜田のタブレットに表示されているカメラ映像の右下には小さな半透明の地図が表示されており、その中に動かない赤い点とその点に近づきながら移動する緑の点が表示されている。

 十分ほど経ったであろうか、ふいにカメラの映像が右に逸れた。高速道路の街灯が見えなくなり、映像は真っ黒な闇の海に変わった。浜田はふと、子どもの頃に見た闇の世界に吸い込まれてしまうアニメを思い出した。


「そろそろか? 俺もカメラモードに切り替えるか・・・ん? なんだ真っ黒だぞ、確かライトを点けられたはずだが」

「ちょっと待って下さい、えっと、これかな」

 浜田が『ライト点灯』アイコンをタップすると、カメラ映像がぼうっと明るくなった。それほど強い明かりではないらしく遠くまでは照らせないが、画面の下方には寂れた片側一車線の道路がぼんやりと浮かび上がっている。


 前方から一台の車のヘッドライトが近づき、あっという間に後ろに通り過ぎる。

 辺りには建物は見当たらず、道の両側は延々と雑草が生い茂っている。人影は全くない。数分もすると前方にトラックの後部らしきシルエットが小さく浮かび上がった。その箱型のシルエットはみるみる大きくなり、後面に書かれた『スーパージェット運輸』の文字とジェットちゃんの歯を剥いたイラストがはっきりと映し出された。


「これだな」

「これですね」

「よし、周囲を探索」

「らじゃ!」

 浜田が敬礼をしながらおどけて答えるが、佐藤も興奮しているのかスルーする。


 探索モードを選択すると、ドローンはホバリングしながらゆっくりとトラックの斜め上方から周りを周回する。闇を背景にトラックの外観がぼんやりと映し出された。

 側面に派手なフォントでスーパージェット運輸と描かれている。可愛いと評判のジェットちゃんがドローンの薄暗いライトに照らされて、意地の悪い悪役キャラのように見えた。


 続いて運転席は・・・無人。車両前部も、特に異常なさそうだ。

 後部は・・・荷台の扉は閉まっている。

 ドローンがトラックを二周したところで、佐藤と浜田は顔を見合わせ、ほとんど同時に肩をすくめた。

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