何だこれ?
今日もいつものメンバーと集まって、ワイワイ過ごしていた。授業をサボって出かけて、遊んで満足して仲間と別れた帰りに。
普段は周りを見ることなんてしないのに、何故かこの時だけは見てしまった。道路に小さな子供が飛び出すのを。
その子供に向かって行くトラックも。
無意識に走り出して、子供の元へ行き歩道側へ突き飛ばす。そうしないと、轢かれてしまうのが分かっていたから。生きていれば、すり傷や打身程度なら治るから。
子供が歩道に入ったことを確認出来たのを最後に、視界は黒く閉ざされた。
目を覚ましてみれば、そこは辺り一面真っ白な部屋。
部屋であっているのか不思議になるくらい、広さを感じるが部屋だと思う。不自然な光が上から幾つか差し込んでるけど。
見上げていた視界を下げて目の前を見れば、この部屋には不釣り合いに思える木製の机が見える。机はよくテレビとかで見るような、偉い人が使うような感じのもの。
なんだこれ、と思っていると声が聞こえる。
「えっ?なんで君がここにいんの?」
声の主を探せば机の上に肘をつきながら、見下ろしてくる一人の男がいる。姿は光のせいで良く見えないが、声から察するに男。というか私が床に寝転がっていたから仕方ないが、なんかムカつく。見下ろすんじゃねぇ。
「あんた、誰?てか、ここどこ?あれからどうなった?」
体を起こしながら矢継ぎ早に質問をする。病院じゃなさそうなのは目覚めてすぐ分かったから、それ以外に聞きたいことは山積みだ。冷静すぎるかもしれないが、トラックに轢かれたのは分かっているんだから、冷静にならざるを得ないだろう。
「そんな質問攻めされても困るんだけどね!?僕だって理解出来てないんだよなぁ。」
チッ、使えねぇ奴か。舌打ちをすれば、男が立ち上がりツッコんでくる。
「扱い酷くないかい!?僕、これでも神様だよ!?なのに舌打ちしたよね、今さ!」
本当にとことんうるさい奴だ、これが神なんじゃ世も末だ。ここでこの言葉が合うか知らないけど。まぁ、そんなことはどうでも良い、これからどうするのか聞かなきゃな。
「神様ならちっせぇこと気にすんな。…それよりここは天国って思えば良いのか?こんなとこに連れてきたんだから、なんかあんだろ?」
「君って、存外頭の回転が良いんだね…。今までここまで淡々としてるのいなかったから、ビックリしちゃったよ…。」
フー、とため息を吐く。自称神様の男が歩き、私のもとへやってきた。どんな面か拝んでやろうと見れば。
メッチャ顔立ちの良い男。サラサラの銀髪で、鼻も高い。目の色は青、というより水色に近い。所謂、塩顔のイケメン。思ったより身長も高かった。…なるほど、神を自称するだけあるな。
「君、ちょいちょい失礼なこと考えるね!?はぁ…、なんかもう疲れてきたから、話進めることにするよ。」
人の考え読むんじゃねぇよ、変態。
ぶつくさ言いながら、自称神様が指を鳴らすと何も無かった場所に椅子が出てきた。座って、と言うからとりあえず席に着く。それを見届けると神も席に戻って、コホンと一つ咳払いをして、話し始める。
「あー、えっとね、報告書によると君が死ぬ予定じゃなかったみたい。本当は別の人がここに来るはずだったのが、君が代わりに来ちゃったみたい。」
ということは、本来は私じゃない誰かが助けに行って、トラックに轢かれてここに来るはずだったわけか。良いのか悪いのか、よくわかんねぇな。本来通りに行けば私は生きていて、でも代わりに誰かが死んでしまって。善人のつもりはない、だけど少しだけ良かった、と思う自分がいて。死にたい、とは思わないけど、生きたくないと思う自分が生きるより、マシだから。
けど、代わりに来てしまったというなら戻してくれれば済むんじゃなかろうか。
「なら私を戻せば解決するだろ。さっさと戻せ、神。」
まぁ、実際はそうはいかないことくらい理解してるが、この神が無性にムカつくから言ってやる。
が、またしても考えを読んだのか、答えてくる。
「君の思う通り、そうはいかない。なんせ君の体は既に燃やされちゃって、戻せないんだよね。」
…だろうな、アイツらならすぐそうするだろうさ、悪態を吐きながらな。
アイツらは私を邪魔者だとしか思ってない、死んで清々したと笑ってる様子が浮かぶ。
「だから、君に新しい人生を授けるよ。君は喜ばないかもしれないけど…人生って何があるか、分からないじゃない?」
生きることに未練なんてない私に、なんてものを与えようとするんだ、こいつは。ふざけるな。それならいっそ、考えることがないよう私という存在を消してもらった方がマシだ。
そう叫びたいのに、何故か声が出ない。体も動かない。段々と意識が遠のいていくのを感じる。
そんな中、忌々しいアイツが最後に言ったことだけは聞こえた。
「頑張って生きて。大切な人にちゃんと出会って、話すんだよ。」