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赤い腕章に誓う話  作者: ラノ
隊長になるまでの話
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故郷からの手紙

 元気にしていますか?


 こっちは季節外れの雪ですが、元気にやっています。私もお父さんも毎日腰が痛いと言いながら、除雪に励んでいます。

 ルークの子が四匹生まれたので、手紙と一緒に同封しました。お相手はローズさんの家の子のパルコちゃんです、あなたにも懐いていたものね。


 そちらはどうでしょうか。新聞に敗戦の言葉を見ないよう願いながら、無事を祈っています。


 愛する我が子へ、母より


 ***


 手紙に書かれた文字が懐かしい。

 同封されていた写真には、子犬を睦まじく抱え込む犬の夫婦の姿が写っていた。

 ルークと呼ばれたのは、実家にいる愛犬であり牧羊犬だ。

 別の写真には他の牧羊犬たちが、雪の中で転がって遊んでいる風景が写されている。

 山々に囲まれた平原の中で放牧された牛や羊たち。

 それを世話していた幼少期が懐かしく、写真を手紙の封筒に戻しながら静かに体を横にした。

 眠れない夜の中で、ふと読み返したくなる母の手紙。

 だが、俺からは返信をあまりしてない。


 家族からの手紙などは、軍が検閲してから駐在中に届けられる。

 こちらからも手紙を送る時には検閲が入る。仕方がないことだが、中身を見られると思うと返信を書く手が進まなかった。

 それに、自分の現状を説明するのはあまり気が乗らない。

 両親は知らないのだ。

 戦地に送った息子の姿が、大きく変わってしまったことを。

 それをいつまでも打ち明けられず。様々な隊に『疫病神』と言われ続け、転々としている存在だということに。


 でもこれでいい、俺がそう望んだんだ。


 そうやって片目しか見えない俺は狭い視界を閉じるように、いつかくる眠気を待ちながら目を瞑り続ける。



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