騎士、俳優になる。
メルクさんは、真っ白な毛皮を着ていて・・、ルウイさんは白い隊服を着ているけれど・・、何でだろう?
ルウイさんは、私を見つけるとすぐそばに来た。
・・隣にいるクレオさんには、ジトっと横目で見るのを忘れない。
「・・クレオ、仕事はいいのですか?」
「大丈夫!副団長、優秀だから!それより、何でそんな格好なんだ?」
「ああ、これは春の目覚めの劇をするそうで・・」
春の目覚めの劇・・・?
ルウイさんを見上げると、ちょっと眉を下げて笑う。
「警備隊が毎年・・余興で劇をやっているそうで、急遽頼まれたんです・・」
「なるほどぉ・・・」
見た事あったような、ないような・・。
ダメだ・・、いつも屋台で買い食いしている思い出しか出てこない!!誤魔化すように笑うと、ルウイさんはちょっとおかしそうに笑う。
「そろそろ、スケート場の側に劇のスペースを作ったらしいので・・、良かったら見て下さい・・。と、言っても急に決まったので、ちゃんとできるか分かりませんが・・」
「いや、多分大丈夫だと思うんで見に行きます」
ルウイさん、何でもできそうだし・・。
そういうと、ルウイさんは嬉しそうに笑う。
「じゃあ!嬢ちゃん、俺と一緒に観ようぜ!!」
「クレオ、半径5mは離れて下さい」
「それ、ほとんど他人の距離じゃん!!」
「貴方と、トーリは完全に他人です」
落ち着いてルウイさん。
言葉がクレオさんに随分と鋭利だな?
キリルが、私達を見つけると・・
「ルウイさん!!劇、始まりますから!!早く来て下さい!!」
そういって、引っ張っていった・・。キリル、流石だ・・。ルウイさんも女性には強く出られないのか、ブスッとした顔で劇のステージまで歩いていった。・・騎士団長・・しっかり。
クレオさんは、そんなルウイさんを笑いながら見ていた・・。
「はー!あいつ、あんな顔すんの?!いつも?」
「・・・いつもではないですけど、表情は豊かだと思いますよ・・」
「へー!!ずっと胡散臭い笑顔じゃないのか!!」
・・胡散臭い・・?
割と、雄弁に感情が伝わる笑顔だけどな・・。
不思議そうな顔をすると、クレオさんはおかしそうに笑いつつ、舞台袖から睨むルウイさんの視線を物ともせず私の隣の席に座る。・・まぁ、いっか・・。
劇が始まる頃には、辺りは大分薄暗い。
今日は一番冬が長い日だしな。
松明が劇の舞台の両脇でパチパチと音を立てて燃えて・・、舞台の中心にメルクさんがバッと出てくる。それだけでちびっ子が泣いた。すごい存在感だ・・。
「あたしは雪の女王!!春など来ないように、春の女王を眠らせてやったわ!!」
クレオさんが、冷静に「女王・・?」って呟くから私は口を押さえた。
やめてここは大事な所なはずだ。
笑ったら台無しになる。
舞台袖から、ルウイさんが出てくると女性客の黄色い悲鳴が一斉に聞こえる。・・すごい、こちらも存在感すごい。
「姉上、冬の次は春が来る流れを変えてはなりません。どうか考えを変えて下さい!」
「うるさい!あんたは春の女王が好きだからでしょう?残念ね、私の氷の魔法で春の女王は永遠の眠りについている」
高笑いする横に、キリルがベッドに寝て出てきた。
あ、キリルが春の女王なんだ・・。
ルウイさんが、雪の女王のメルクさんに戦いを挑もうとすると、真っ黒な衣装を着たオーウェンさんが出てきてガチガチに固まりながら・・
「雪の女王を邪魔する者は、弟君といえど、ゆ、許さぬ〜〜!!」
って、棒読みで剣を振りかざすけれど・・
目の傷に、松明で照らされた顔が怖かったのか、前列のちびっ子は大泣きだ。いいぞ、劇としてはバッチリだ。クレオさんは爆笑してるけど・・。




