騎士と命令。
体が寒中水泳をして、ガクガクいってる。
ルウイさんは、私の脱ぎ捨てたコートで体を包んで家まで来たけれど、寒いものは寒い!!
「トーリ、お風呂に一緒に入るよう命令して下さい!」
「え、ええええ??!!」
「早く!!!」
奴隷とご主人様の立場が逆転してない?
でも非常事態だし、仕方ない・・。
「お、お風呂に一緒に入って下さい」
そういうと、首の奴隷紋が反応するように光って、ルウイさんはお風呂場まで私を抱えて入ると、すぐにお風呂場のお湯を出して、湯船にお湯を溜めつつ服を着たままの私をその中へ入れる。
その間に、濡れないようにか・・、ルウイさんがコートや服を脱ぐので驚いて目を丸くする。
「バスタオルも持ってこないとですね・・」
「は、はぁ・・」
「着替えを持ってきますから、とりあえず湯船にそのまま浸かっていて下さい」
「は、はい・・」
まだ体が寒くて、ガクガク言ってるけど・・勢いよく出るお湯にちょっとずつ体が落ち着いてくる。
ホッとした顔になると、ルウイさんも安心したように微笑む。
「少し離れますが、何かあればすぐ呼んで下さい」
ルウイさんがそう話して、私が頷くと小さく笑う。
お風呂場をルウイさんが一旦出ると、私も脱げる物は脱いでおく。
靴下とタイツを脱ぎつつ、命令すれば触っても大丈夫なんだな・・って思った。若干複雑だったけど・・。できれば人間として向き合っているんだから、命令だけは避けたかったけど、今回は仕方ない。
温かいお湯に浸かって、体が少しずつ解れてきた。
温度差でかゆい〜〜。しかし、温めないと風邪を引いちゃうしなぁ・・。
濡れて張り付いている服をなんとか脱いで、浴槽のふちに掛けていくと、お風呂場の外にルウイさんのシルエットが見える。
「トーリ、タオルと着替えを置いておきました。よく温まってから出てきて下さい」
「あ、ありがとう!ルウイさん!」
ルウイさんの方に向けて言うと、小さく「・・いえ・・」と、聞こえた。
お風呂でしっかり温まって、置いておいてくれた着替えを着る。
下着は、いくつか洗面所の棚にしまってあるので、安心して下さい!履いてますよ!!
バスタオルを肩に掛けて、お風呂から出ると・・
ルウイさんがキッチンに立っている。
「お茶を淹れておいたので、飲んで下さい。私も着替えてきます」
至れり尽くせりかよ!!!
カウンターの椅子に座って、温かいお茶が入ったカップを受け取る。
「ごめんね、ルウイさん・・寒かったでしょ?お風呂のお湯入れ替えておいたんで入ってきて下さい」
「・・では、失礼して入ってきます」
ルウイさんも、体が冷えていたろうに・・。
二階へ着替えを取りに行くルウイさんを見て、申し訳ないなぁ・・と、思いつつお茶を飲むと、ようやくホッとした。
と、カウンターの席に着くと、買ったばかりの奴隷契約の本が置いてあった。あ、ルウイさん鞄を拾ってきてくれたんだ。
お茶を飲みつつ、本をパラパラと読む。
良かった・・鞄に入ってたから、そんなに汚れてない。
契約内容について、立ち読みした時はチラッとしか見ていなかったが、ふとある文章が目に入った。
『契約者が命令すれば、奴隷が「欲」を持って触れても電撃は放たれない(ホルス国、トリス国、ガル国の奴隷契約以外)』
へー・・・、やっぱり国ごとに違うんだ。
ホルスとか、トリスとかガルは奴隷文化長いしなぁ・・。
へー・・・、オシムは「欲」を持ってても電撃出さないんだ・・、命令すれば。
・・・命令すれば・・・?
あれ、さっきルウイさん・・、命令して下さいって言ったよね?
もしかして、知ってた・・?それとも知ったの??今??
不意に嫌な予感がして、そっと後ろを振り返ると着替えを持って、二階から降りてきたルウイさんと目が合う。
すっごいいい笑顔でこちらを見ている。
・・んん?何かな〜?!
私は何も分からないなぁ〜?曖昧に笑い返すと・・、ルウイさんはニコニコと柔らかく微笑み・・
「あとでご命令を・・ご主人様」
そう言ってお風呂場へ消えたので、
私はとりあえず二階の自分の部屋へ走って閉じこもった。
え?もう契約終了まで、ここに閉じこもっていたいんだけど、いいかな?いいよね??




