騎士、再就職先。
キリルとメルクさんが「一緒に飲まない?」というので、テーブル席に移る。
メルクさんは私達を見て・・、
「先日はお疲れ様でした。あんな事があってすぐに雪まつりなんて慌ただしいけれど、よろしくお願いしますね!」
あんな事・・。
ネイトさんか・・、思わず遠い目になると、キリルが可笑しそうに笑う。
「メルクさん、たっかい転移術の魔法を買ってトーラスの王都騎士団までクレームに行ったんだって〜!」
「ちょっとぉ、キリルあんた余計な事言わないの!」
「もう想像したらおかしくって!!」
・・確かに、このゴツイメルクさんが「ちょっとおぉ〜?!」って言ったら、迫力あるな・・。騎士さん達の顔を見てみたかった。
メルクさんは、グビッとホットワインを飲みつつ、
「まぁ、オシムに騎士団を作ろうって思ってるみたいだし、ついでにその話もしてきたわ。一応、一番強いギルドはここだし?」
キリルは、その話を聞くとメルクさんをキラキラした顔で見る。
「え?もう作る話になったんですか?!いつですか??」
「・・食いつくわね〜・・、春にセリの街の北側に昔使ってた要塞があるから、あそこを改良して使う予定よ。と言っても、トーラスからは騎士は希望制で異動させるからどれくらい来るか分からないけど・・」
好き好んで田舎に来る人は・・キリルくらいか?
メルクさんはルウイさんを見て、にっこり笑うと、ルウイさんは何かを察したらしい。
「・・・お手伝いが必要、と?」
「流石ですわ!オーウェンさんもこちらにルドヴィクさんがいる以上は、動かないらしいですし・・。それでしたらお二人でオシムの騎士団を支えて頂けると助かります。どちらにしても、トーリがここにいる以上、こちらにいるんでしょう?」
ブワッと顔が赤くなった。
な、なんだって??あれ?私、メルクさんに何も言ってないよね??
慌ててキリルを見たけど、「言ってないよ」って言われた・・。ええええ、なんで??メルクさんを見ると・・、
「女の勘よ」
バッチリフルメイクのゴツイメルクさんにそう言われたら、
頷くしかない・・。
そうか、女の勘か・・。
ちょっと冷静になれた。ホットワイン飲もう。
ルウイさんは、そんな私の様子を見て小さく笑い、メルクさんの話を承諾した。
そっか・・、契約終了してもそばにいるのか・・。
そっか・・。
だめだ、今度はなんか嬉しくなって緩みそうな口元を両手で隠した。・・・誰も気付きませんように・・。目を逸らして店内を見たけど、なんか三人ともこっち見てない?
見なくていいんだけど・・。
オーウェンさんには、明日ギルドで仕事もあるので、ルウイさんから話をしておく事になり・・、メルクさんとキリルは一足先にお仕事へ戻っていった。
また二人きりになり、私はチラッとルウイさんを見た。
「・・・あの、本当にいいんですか?オシムって小さい所ですけど?」
「トーリがいないと、私には何の意味もありませんから」
ルウイさんが、ニコッと微笑む。
うーん、甘い。
今日も甘い。騎士とは砂糖菓子か何かか?
「・・・トーリは、私がいるのは・・お嫌ですか?」
「・・・・・そういう言い方ズルイです。さっき気付いてたんじゃないですか?」
「・・覚えがありませんね」
ニッコニコ笑うルウイさん・・、大型犬のくせに。
白を切るでない。
ワンコは素直だから可愛いんだぞ。
ホットワインを横を向きつつ飲む。
きっと顔が赤いのはあれだ、アルコールのせいだ。うん、そう思おう。
「・・トーリ、顔が赤いけれど大丈夫ですか?」
「アルコールのせいです」
「アルコールは飛んでいるというお話でしたが・・」
「・・・ルウイさん、ちょっと黙りましょうか?」
全く、いい性格をしているな・・。
そう思ってルウイさんを見ると、嬉しそうに尻尾を振っている様な顔をするので、うっかり絆されそうになる・・。犬の躾け方の本・・、本気で買おうかな・・。




