騎士、粘る。
結局、キリルもカイルもしっかりガッツリお昼を食べてから、帰っていった・・。
まぁ、楽しかったしいっか・・。
そろそろ夕方になるけど、ルウイさんはまだかな・・。
時計を見つつ、ちょっと仕事場で翻訳の仕事をしていると、玄関のドアの開く音がする。玄関を見に行くと、ルウイさんがこちらを見て嬉しそうに微笑む。
「・・ただいま戻りました」
「おかえりなさい!お疲れ様でした」
寒かったのか、ルウイさんの鼻先がちょっと赤い。
お茶を淹れるか・・。
キッチンに行こうとすると、ルウイさんが私の服を少し引っ張る。
なんだろうと振り返って、ルウイさんを見上げると・・、ちょっと腕を広げている。あ、はいはい・・。
頭を撫でた。
「・・違います!ハグがいいです!」
「いやぁ・・、そんなホイホイできませんってば・・」
前世は、奥手で有名な日本人だよ?
海外だったら問題なかったんだろうけど、無理です。外見は、こっちの世界の人だけど・・、精神年齢は50近いけど、控えめなのは変わらない。
ルウイさんは、ちょっと拗ねた顔をする。
「・・・抱きしめたいけれど、今、間違いなく電撃を受けそうですし・・、トーリからじゃないと・・触れ合えない・・悲しくて、心が凍りそうです」
「お茶淹れるので、温めて下さい・・・」
そう言われても無理なものは無理だ。
お湯を沸かすと、ルウイさんは拗ねつつもコートを掛け、手を洗って、お行儀よくカウンターの椅子に座る。流石騎士様・・。
偉いねとばかりに、ポンポンと優しく頭に触れて、笑いかけると・・ルウイさんはしょんぼりと項垂れる。
「辛い・・、こんなに近くにいるのに、触れられない・・」
大型犬が、切ない声で鳴いている背景が見える・・。
くそ・・、人の良心をチクチクと・・!!
「ルウイさん・・、ケーキ食べます・・?」
「・・はい?」
カイルのお母さんのケーキをフォークで一口大に切って、ちょっと顔を赤くしつつ差し出すと、ルウイさんの顔がパッと輝いた。
よし!!!いける!!
「はい、アーン・・」
誤魔化すことは成功した!
しかし恥ずかしい事には変わりはない!!これ、困ったな?!
ルウイさんは嬉しそうに食べて・・、夕食前だけどぺろっと一切れ食べてしまった・・・。そうだった〜・・、この人、めっちゃ食べる人だった・・。
早めに夕飯を作りつつ・・、ふと思い出す。
「あ、そういえば・・ルウイさんギルドで雪まつりの話は聞きましたか?」
「はい、メルクさんから伺いました。来週でしたっけ、街の中心で雪像を作って遊ぶんですよね?」
「そうなんです!あとスケートもできるんです!!ルウイさんできますか?」
スープのお鍋を火にかけつつ尋ねると、ルウイさんは少し考えて・・、
「そういえば、スキーはしますが、スケートはあまり・・」
「え?!そうなんですか??意外!じゃあ、一緒に滑ってみますか?」
「・・・一緒・・!!」
ルウイさんは、パアッと顔が明るくなった。
もうちょっとすれば、すぐそこの川も凍るしね。そうしたら、一緒に滑ってもいいかも。
けど、スキーはできてスケートはした事ないのか・・。
あっという間にスケートも覚えてしまいそうだな・・。ルウイさん・・。っていうか、なんでもできそうだな・・。
「・・・ルウイさん、得意じゃないものって、あるんですか・・?」
思わず聞くと、ルウイさんはちょっと考えて・・、
「トーリの心を掴むのは、まだ不得意ですね・・」
「いやいや、そうじゃない・・」
私の心は大体、掴めないからね?固形じゃないからね??
ルウイさんは、ニコニコ微笑みながら私を見て・・、
「私の心は、いつでもトーリのものですからね」
「待って!!!自分で言うのもなんだけど、これでも奥ゆかしい方だから、ちょっとそういう言葉をいきなり言われると、恥ずかしくて悶えちゃうから!!!!さ、サイレント!!!して下さい!!!」
普通という枠外で生きてきたけれど、恋愛事への耐性が限りなくゼロだった自分・・。無理です!!本当に無理です!!ひとまず口に指を当てて、シー!!って言ったら、嬉しそうにニコニコ笑われた。聞いてくれーーー!!!




