騎士、口説く。
ネイトさんはお店から出てきて、ニヤニヤしながら私の側へ足早に来る。
「・・・お前、奴隷はどうした?」
開口一番それか、気になるのか?好きなのか?
「・・・・ギルドでお仕事だと思いますけど?」
「なんだ!自分の奴隷の事を把握してないのか?!」
お前こそ把握してないのか?
会わせないようにメルクさんが配慮してるのかな・・。
ちょっと小さくため息をついて、さっさと離れるべく、会釈してとりあえずどこかお店に入ろうとすると、ネイトさんが付いてくる。何なんだよ!!??
「・・・・ネイトさん、お仕事は大丈夫なんですか?」
「ああ、今日の仕事は済ませたし、明日行商が隣の街へ行くまでは大丈夫だ!私は優秀だからな!!」
何がどういう訳で優秀なんだ。
国語の勉強をしてくれ。
「トーリ!!」
声がして、振り返ると、オーウェンさんとキリルが見回りをしていたのか、こちらに手を振ってやってきた。
た、助かった〜〜〜!!
ささっと走って、キリルの所へ行くと・・オーウェンさんが私を後ろに隠してくれた。・・あ、なんかルウイさんに似てるなぁ。そう思ったら、なんか安心した。
キリルは、ネイトさんにさっと敬礼をして、
「失礼します!」
そういうと、ネイトさんは眉をひそめつつ、違う店に向かっていった。
早く帰ってくれ・・・。
キリルがこちらへ向いて、ちょっと小声で・・
「なんで、街に来たの?あいつ、ウロウロしてるのに!」
「まさか会うなんて思わなかったし、しかも付いてくるんだもん!!不可抗力です!!」
二人でヒソヒソ喋ってると、オーウェンさんが可笑しそうに笑う。
・・あ、背中を壁がわりに使っちゃって、すみません・・・。
オーウェンさんは、面白そうに笑って・・
「ひとまずギルドへ行きましょう。ルドヴィク様も、一度トーリ様の家にお戻りになる予定でしたし・・」
「あ、はい・・」
頷いて、一緒にギルドまで行く。この二人の安心感もすごいわ。
ギルドへ着くと、中でメルクさんとルウイさんが話をしていた。
ルウイさんは私がギルドに来るなんて予想してなかったのか、ちょっと驚いた顔をしていた。
「トーリ・・、どうして・・」
「散歩してたら、ネイトさんにちょっと付きまとわれて、キリルとオーウェンさんに助けて貰いました・・」
そう言うと、ルウイさんが苦虫を噛み潰した顔をして・・、私の側にやって来て、羽織ってたマントをちょっと広げて隠すように中に入れられた。え、ちょ、ちょっと??!
メルクさんは、そんな私達を見てふふっと笑う。
「今、ルドヴィクさん帰ろうとしてたのよ。トーリが心配でね」
「え?そうなんですか?すみません・・ルウイさん忙しいのに・・」
「・・いいえ、とんでもないです・・」
ニコッと微笑むルウイさん。
いやでも忙しいなら無理しなくていいのに・・・。
メルクさんは、キリルとオーウェンさんがいるから、「今なら帰っても大丈夫よ〜」と言ってくれたので、ルウイさんは私を家まで送ると譲らない・・。分かったよ、お願いしますよ・・。
ルウイさんとギルドを出ると、手を繋いで歩き出す。
溢れ出る騎士道精神健在だ。
「・・マントの中に入ってたから、ちょっと寒いですね」
ふふっと笑うと、ルウイさんはちょっとマントを傾けて・・
「入りながら歩きますか?」
「それじゃ、くっ付き過ぎて・・足元が危ないですよ」
「・・・本当は、隠してしまいたいくらいなんですが・・」
隠す?私を??
不思議そうに見上げると、ルウイさんは小さく笑って・・、
「大事なものは、隠しておきたくなるんです」
大事なもの・・って、私?
それはまた随分と驚きのセリフだ・・。どうせお世辞だろうとか、社交辞令だろうとか思うのに・・、なんか胸がドキドキしてしまう。・・・ルウイさんの甘い言葉は、心臓に悪いな。
「・・・・なんか、口説かれてるみたいです」
赤い顔で、目を逸らして話すと、ルウイさんが小さく笑う気配がする。
「・・はい、口説いてます」
びっくりしすぎて、思わずルウイさんを見上げてしまった。
見上げたルウイさんは、いつも変わらない綺麗な顔で私をじっと見つめていた。多分、私と同じ赤い顔で。




