騎士、恋と情熱とスポ根 8
二日目の騎士団。
ルウイさんと一緒に騎士団で仕事をする週なので、大手を振って騎士団へ向かった。ええ、もう心配しかないし。
騎士団へ行って、早速執務室から演習場を見ると、今日も雪がちらつく空の下、ムキムキの騎士さん達と一緒にまず走り込みをしている。ちなみにシルビアちゃんが先頭だ。
「すごい‥!!シルビアちゃんって体力ありますね?!」
「ルベル様から剣の練習をして頂いておりますから‥」
オーウェンさんがちょっと心配そうな顔をしつつ、外を見ながら教えてくれた。ルベルさんって、ルウイさんの2番目のお兄さんで剣がめちゃくちゃ強いって人だよね?メルクさんに憧れて剣の練習をしていたって聞いてたけど、まだ練習してたんだ!?シルヴィアちゃんって本当、努力の女だな‥。
「シルビアちゃん、すごいですね‥」
「とはいえ、まだ幼いので心配で‥。あと、昨日からちょっと気になることもあって‥」
「気になること?」
まさか、またトーラスから何か嫌がらせみたいな事をされているとか?
思わず眉を顰めると、オーウェンさんが演習場を指差した。
走り終えた生徒さん達がそれぞれ魔術を遠くの的に当てようと練習するけれど、生徒の女の子が威力を間違えてしまったのか、魔術を放った途端後ろに倒れそうになったその時、サッとロルタ君が生徒さんを後ろから支えた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
「もう少し魔力を弱めてみましょう。手に触れますよ?」
そういうと、生徒さんの手に触れると、二人の手が淡く光った。
「これくらいの魔力です」
「は、はいっ!!!」
女の子がちょっと赤い顔で返事をすると、ロルタ君はいつものようにふんわり微笑んで「怪我に気をつけて下さいね」と優しく言葉を掛けるので、女の子はますます顔が赤くなっている‥。
「‥‥もしかして心配って、」
「はい、あれです。ロルタさんは一切悪くないのですがあの通りお優しいので‥、教えれば教えるたびにシルビア嬢の顔がどんどん曇っていって‥」
「‥オーウェンさんも知ってたんですね」
「‥お恥ずかしながら、キリルに気をつけて見て欲しいと言われて気付きまして」
ちょっと照れ臭そうに話し、「私は本当に朴念仁でして‥」というオーウェンさんが大変可愛い。しかし、そうかぁ〜〜、確かにあれは気になっちゃうよね。シルビアちゃんはただでさえ年齢差が大きいし。
「どうしたもんですかね‥」
「私も心配なんですが、こういった事は本当に不得手で」
「その割にはキリルをすぐに射止めたじゃないですか」
「そ、それは!!その、キリルは、絶対に失いたくなくて‥」
モジョモジョと口ごもりつつ、顔を赤くするオーウェンさん。
やばい、すごく可愛いな?
と、思っていると、後ろからキリルが足音を立てずに部屋に入ってきた。
「キリル、顔がすごく赤いけど」
「ちょっ!!!トーリ!!!」
「き、キリル、殿‥!!」
思わずニマニマしてキリルに声を掛けると、赤い顔のキリルに睨まれた。ちなみに聞かれていたことに気付いて更に顔が赤くなったオーウェンさん‥。これで「鬼神夫婦」って呼ばれているんだから人生って面白いなぁ。
「き、キリル殿、その、今のは‥」
「聞いてないです!!」
「えー、聞いてたから顔が赤いと思います」
「こら!!トーリ!!」
キリルが私の口元に手を当てると、オーウェンさんがキリルの横であたふたするので非常に面白い。いつもキリルにからかわれているから、こんな時くらいやり返しておかないとだし。
「まったく!いいからトーリは仕事しなさい!!」
「はーい」
「それとお昼は作戦会議するよ!」
「え?」
「‥このままだと、まずいでしょ」
誰の‥と、言わない辺り、キリルだなぁって思う。
シルビアちゃんですよね。もちろんこのままでは私もまずいと思います。
まぁロルタ君が誰を想うかは自由だけど、シルビアちゃんの小さな恋も応援したいし、何よりこの1週間は一緒に訓練する仲間だしね。
「‥キリルも忙しいのに、本当優しいよね」
「トーリもそうでしょ。翻訳まだ結構残ってるのに」
「うっ、仕事のことは言わないで」
「はいはい、早く終わらせなよ」
私の頭をポンポンと撫でるキリルにふふっと微笑みかけると、ルウイさんが執務室に入ってきて、私とキリルを見ると、
「トーリ、私も撫でても?」
「開口一番それかーーい!」
うん、うちの夫は本当にブレない。
呆れたようにルウイさんを見上げると、すぐさま私の頭を撫でたかと思うと、撫でやすいようにと自分の頭を下げるルウイさん。キリルとオーウェンさんに生暖かい視線を贈られながら、私は赤い顔でルウイさんを撫でるほかなかった‥。
クリスマスだろうが更新です!!