騎士と一番な居場所。6
子供達がわいわい言いながら街へ戻り、テーブルを片付ける。
「いやぁ〜、まさか窃盗犯がうちに来るなんて驚きですね」
「‥もしかしたら日中、トーリが見かけたのは窃盗犯だったかもしれませんね。恐らくトーリ一人だけかと思ったのかもしれません」
「怖っ!!わざわざ偵察するんですね」
「はい。ですから、やはりそのエプロンをいつでも着けておいて下さい」
「‥それはちょっと」
「何故ですか!そんなに愛らしいのに!!」
‥うん、単純にこんな女の子らしいヒラヒラって気恥ずかしいんだもん。
ポケットに入れた女の子から貰った石をコロコロと手の中で転がしていると、ポンとリビングの真ん中にファティルさんが転移してきた。
「あれ?ファティルさん?」
「なんでもお前のうちでお菓子を配っていると聞いてな」
「どこ経由ですか???」
オシムとホルスでは大分距離ありますよね?!
詳しく聞いたら、メルクさん大好きシルビアちゃんが連絡を受けて喜び勇んでギルドへ行き、お菓子を貰いに行き、ついでに我が家へ来たそうだ。ちなみにシルビアちゃんはメルクさんと一緒にお菓子配りしているらしい。恋に破れても大事に想うシルビアちゃんって偉いね。
「ところで、妖精か‥何かが来たか?」
「「え?」」
私とルウイさんが思わず顔を見合わせる。
吸血鬼と狼の獣人に変装したメルクさんとダリさん、男装したキリルに騎士さん達とカイルとちびっ子くらいだけど?私が首を傾げていると、
「魔術とは、ちょっと違う何かが残っている」
「何か違う?」
魔術を使われたことなんてないけれど‥。
と、さっきの突風のことを思い出した。ルウイさんが風を起こしたのかと思ったけれど、不思議そうな顔をしていた。もしかしてあれって、魔術に似た何かだったってこと?
と、ファティルさんが私のポケットを指差す。
「何か持ってるだろ」
「え?あ、ああ、この緑の石ですか?」
ポケットから取り出すと、ルウイさんとファティルさんが目を丸くする。
「これをどこで?!」
「え、ルウイさんも見たでしょ?黒髪の女の子からお菓子のお礼に頂きました」
「それ、「緑の魔女」の祝福の鉱石だぞ」
ファティルさんからの言葉に今度は私が目を丸くした。
「緑の魔女?!あの魔女??でも子供でしたよ?」
「年齢なんて簡単に操作できるだろ、魔女だし。伝承なんかだと幼い姿で現れたりするしな。前に古代魔術について翻訳してもらった時、載ってたと思うが」
‥あの時は必死に翻訳をしていたので内容は覚えてないですねぇ。
それにしてもそんな鉱石だったの?
私は今だにキラキラと中から緑に光る鉱石をまじまじと見つめると、ルウイさんが嬉しそうにその鉱石を見つめる。
「‥トーリのこの場所はやはり「安らぎの地」なのですね」
「え?」
「緑の魔女が訪れる場所は、人が幸せだと感じる場所です。ここはまさにそうなんでしょう」
ルウイさんの言葉に、なんだか胸の奥がじんわりと暖かくなる。
そっか、そんな場所だって思って来てくれたのなら嬉しいかも。
「大事にしないとですね」
「はい!!」
「仕舞っておくのか?ちょっとは調べてみたいんだがなぁ」
「ダメですよ!ファティルはお菓子で我慢して下さい!」
ニマニマ笑うファティルさんに、ルウイさんが急いでチョコのお菓子を渡していたけれど、きっと調べようなんて思ってないよ。ファティルさんは勝手知ったる顔で我が家のソファーに座って、
「‥まぁ、この場所は確かに安らぎの地に相応しいんだろうなぁ」
そう言いつつ、お茶を飲み出すのでルウイさんと顔を見合わせて笑った。
そうだね、そんな場所でこれからもあり続けたらいいよね。どこかくすぐったい気持ちで、もう一度お茶を淹れようとキッチンへ向かうと、ルウイさんも付いてきて手伝ってくれた。
「ああ、そうだ。トーリ、もちろん続きはお忘れなく」
という一言を付け足して。
そこ忘れてくれて良かったのに〜〜!!
ようやく緑の魔女の話を入れられた‥。
(もっと当初の段階で書こうと思ってたのに、随分と遠くへ来てからになってしまった‥)




