騎士、拒否する。
森の中で、倒れていた人はルウイさんを知っている人だった。
こんな偶然ってあるの??驚いていると、オーウェンさんは立ち上がって、ルウイさんの腕をガシッと掴む。
「ほ、本当に生きてらして・・嬉しいです!!」
「・・・・ああ」
「ここまで、あらゆる手を使ってお探して・・諦めていたのに・・、ルドヴィク様、さ、ホルスへ帰りましょう!!」
帰る・・?
ドキッとしてルウイさんを見た。
そうだ・・、ルウイさんは帰るんだ・・。急に胸が痛くなって、思わず横を向く。
人間として、最短で安全に戻れるように・・そう思っての契約を終えたら帰るんだ・・。そんなの分かってるのに。急に現実を突きつけられて、動揺してしまった・・。
ルウイさんは、オーウェンさんを静かに見つめ、腕をそっと掴むと・・
「ホルスには戻らない」
「なぜですか!?」
オーウェンさんが信じられない!?といった顔でルウイさんに問いただす。あ、そこは・・補足していいですかね?
「・・・奴隷契約をしたからです」
私がそっと言うと、オーウェンさんは私をすごい勢いで見る。
そして、ハッとした顔になる。
「・・・あの時の契約・・!娘さん、どうか契約者の権利を私にお譲り下さい!もちろんお代は・・」
「えーと、今、半年の契約をしているんですけど、あと3ヶ月で終了します。このタイミングで契約者を変えると、更に半年延長する事になりますよ?それよりは3ヶ月待った方が得策だと思います」
オーウェンさんは目を丸くして私を見る。
いや〜、奴隷契約についての本の翻訳しておいて良かった〜。
ルウイさんは、満足そうに微笑んで私のそばへ来る。
「・・そういう訳だ。探してくれて、申し訳ないが・・オーウェン、お前だけでも帰るんだ・・」
「嫌です!!あなたがいない騎士団など意味がない!!」
「・・・兄上が、いるだろう・・・・」
へぇ、ルウイさん・・お兄さんいたんだ・・。
そう思って、ルウイさんを見上げると苦しそうな顔でオーウェンさんを見つめていた。
「・・・・とにかく、俺はもうあそこへは戻らない」
「・・ですが、婚約者は・・」
「それは、もう解決した」
婚約者。
あ、そうだよね・・、こんだけ格好いいし、婚約者の一人とか、二人とか、三人とかいるよね・・。騎士団長様だし。
そう思ったのに、ボディーブローみたいにじわじわと胸が重く、痛くなる。
あ、あれぇ・・・???
どうした私?
精神年齢50歳だぞ?こういう事もあるよねって、受け入れろよ?なんとか笑って、二人を見る。
「あの・・、ここじゃなんだし、家で話をしませんか?」
「いえ、これ以上ご迷惑を掛けられません・・、ひとまずギルドへ行ってきます」
「え、でも・・・」
ルウイさんは、ちょっと切なそうな目で私を見る。
「・・すみません・・、家へ一度戻って待っててくださいますか?」
・・あまり立ち入った話を聞くのも悪いか・・。そう思い直して、静かに頷くとルウイさんは小さく笑って、オーウェンさんに話をすると、私を家へ送ってから再び出かけて行った。
いえ、別に送らなくてもいいのに・・
そう思ったけど、どこか遠くを見ていたルウイさんに何も言えなかった・・。
家に戻って、木の実をいくつかローストして夜にでも一緒に食べようと思って籠に分けた。
籠に分けつつ、さっきの「婚約者」の言葉がじわじわと胸を占める。
そうだよねぇ・・格好いいしね。
ホルスにいたら、結婚もして・・
強いからきっと武勲とか立てて・・
幸せに生きてたのかな・・
ルウイさんのそばに、誰かがいる事を想像しただけで、胸がまたズキズキする。
ああ〜〜、これなんだろ・・。
前世でこんなのあったっけ?こういうのどうすればいいんだっけ?




