騎士、延長希望。
あっという間に喧嘩を、手刀一発で終わらせてしまったルウイさん。
ズルズルと引きずられていったおじさん達・・、喧嘩さえしていなければ美味しく飲めたのに・・。
ルウイさんは、ニコニコしつつ私の方へ戻ろうとすると、パッと女性達がルウイさんの前に立って、何やら話し始めた。「怖かったです」とか「素敵ですね」とか・・。
手刀一発で黙らせる男に、よくそう話しかけられるな・・、私だったら怖いけど。
ちょっと、ルウイさんが困ったように話しながらこちらへ来ようとするけれど、苦戦してるな・・。お姉様方も、お酒が入ってるからいつもより積極的なのかな・・?
とはいえ・・・ね、まぁ、ちょっと面白くないというか。
せっかくルウイさん、一週間お仕事頑張って一緒に回ってるのに。
いくら格好いいとはいえ、私と一緒にいる姿を見ていただろうに・・。なんか木の杯を持たされて、一緒に飲もうとか言われてるし・・。
「あれ〜?トーリ、こっちに来てたの?」
ものっすごい気の抜けた声が聞こえて、振り返るとカイルが木の杯を持ちながらお酒を飲んでいる・・。
「・・・カイル、あんたまだ飲んでるの?」
「メルクさんに、もう終わっていいって言われたし・・」
・・それは戦力外通告ではないのか?
足元がおぼつかないくらい飲むなよ・・。呆れてカイルを見ると、早速よろけるから咄嗟に体を受け止めた。
「ちょっと、大丈夫?!」
その途端、後ろでバリン!!という音が聞こえて振り返ると、ルウイさんが木の杯を握り潰していた。
え?あれって握りつぶせるの?
周りの女の人達もびっくりしてルウイさんの手元を見てる。
ルウイさんは、その隙にさっと私の所へ来ると、半分気持ち良さそうに寝ているカイルを腕で抱えてくれた。
「あ、ありがとう、ルウイさん・・」
「・・・いえ、カイルさんでかえって良かったかもしれません・・」
「?なんで・・??」
「・・独り言です・・」
謎な独り言だな・・。首をひねりつつ、ルウイさんの後をついていった。
ルウイさんは、カイルを担いでギルドの受付に持っていくと、メルクさんが野太い声で「起きろ、このアホ!」って言ってげんこつを食らわせていたが爆睡してた・・。あいつは本当に大物だ・・。
明日の片付けもあるので、今日は早めに上がっていいと言われたので、ルウイさんとお祭りのランプを貰って綺麗な明かりを下げつつ夜道を歩いて帰る。
お菓子が沢山入った籠を持って、一緒に歩くルウイさんをちらりと見る。
なんか色々あったお祭りだったな。
リボンを買ってもらったり、
首輪が欲しいとか、
手刀で黙らせちゃうとか、
絡まれちゃうルウイさんとか・・
・・これは、ルウイさんが帰っても思い出しては、笑えそうだ。
小さく笑うと、ルウイさんが不思議そうに私を見る。
「・・ルウイさん、今日はお疲れ様でした」
「・・・大変疲れたので、ぜひとも頭を撫でて頂けると嬉しいです」
「・・・なぜ、犬を目指そうとするんですか・・」
思わず笑ってしまうと、ルウイさんもちょっと笑う。
今、この瞬間・・、綺麗なランプの明かりをルウイさんが持ってくれて、一緒に夜道を歩いた事も思い出になるのか・・そう思うと、なんだか切なくなって・・、ルウイさんを見上げる。
「今日はいい思い出ができました。ルウイさんと契約終了しても、今日の事を思い出して楽しめそうです」
「・・・延長してくだされば、引き続き思い出を作れますが」
「・・人間に早い所、戻りましょうね」
そこは譲れん。
なぜ、人間へ戻ろうとするのを拒否するのだ。
延長はしませんよ?そう思って、ルウイさんを見上げると、大変不服そうである。いやなんで不服???




