騎士、決意。
ルウイさんは、どうも一晩中抱きかかえてくれていたらしい。
ようやく腕を離してくれたルウイさんは申し訳なさそうに私を見て、
「寝てしまって、前のめりに倒れそうになってしまったので・・、勝手に抱きかかえてしまって、申し訳ありません」
・・いや、謝るべきは私であって、ルウイさんではない。
雷の音に弱いせいで・・・!!すみません!!
「いえ、全面的に私が悪いので、ご心配なく。こちらこそ何から何までお世話になりました・・。次回、雷が鳴った時のために耳栓を買っておきますから、ご心配なく!!」
ビシッと宣言すると、ルウイさんは首を横に振り、
「いいえ、またお守りさせてください!」
うーーん、騎士道精神!!
素晴らしいけど、貴方はあくまで同居人なんで!申し訳ないんで寝て下さい!そんな綺麗な澄んだ目で、こちらを見つめてもダメです。
「・・・お願いですから、人間の尊厳と権利を大事にして下さいね・・」
「そう言われましても、私はトーリの犬であり、奴隷ですからねぇ・・」
「待って!!!ちょっと人間の自覚を持って下さい!」
思わず声を荒げた。
人様に聞かれた日には、私の人間としてのアイデンティティーがぶっ壊れそうだから!気をつけて発言してくれ!!!嗚呼、朝から頭が痛いぜ・・。
ひとまず顔を洗ってこよう・・。
そう思って、洗面所へ行こうとすると、ルウイさんが私の手をそっと握る。
「どちらへ・・・?」
なんでそんな不安そうな顔になる。トイレと顔を洗いに行くだけですけど。
ああ、今、声を荒げたから不安になったのかな・・?
心配そうに私を見つめる淡い紫の瞳を見て、ちょっと笑ってしまった。
こんなに大きい体なのに、小さい私の声を聞いて不安そうにするとか・・、騎士団長様しっかりして下さい・・。
ちょっと背伸びして、ルウイさんの髪をそっと撫でると、ルウイさんは、驚いて私を見つめる。
「怒ってないですよ・・、ちょっと顔を洗ってきます」
そういうと、ルウイさんは嬉しそうに微笑む。
「・・ただ、犬と奴隷にはならないで下さい」
そこはきっちり言っておく。
君は人間なのだ。あと、絶対外で言うなよ。絶対だからな!!!そう思って、キッと強い視線で見つめると・・、ルウイさんはそんな言葉を全く聞いてないんだろう。顔がゆるゆるだ・・。
こいつは聞いちゃいないな・・。大型犬なのに、耳が悪いとか・・。
小さくため息をついて、ルウイさんに
「ステイ!」
と言うと、驚いて手を離してくれたので、そのまま洗面所とトイレに行って戻ってくると、目を輝かせて私を待っているルウイさんがいて・・、私はちょっと気が遠くなった。
騎士団長よ、人間であれ。
朝食を食べてから、窓を打ち付けていた板をルウイさんが外してくれて、私がそれを受け止めて離れの方へと持って行くのだが、心配そうに見るルウイさん。
安心してくれ、私は今まで一人で生きてきた。
そしてこれからも生きていく。
板を全部外してから、割れてしまったガラスを取り替えるべく、ルウイさんが予備で取っておいた窓ガラスをはめる。騎士団長って、なんでも出来るんだな・・。
が、手袋をしていたんだけど、どこかで切れてしまったらしい。
ルウイさんの指から血が出て、慌てて以前摘んでおいた薬草を貼って、包帯を巻く。早速活躍したなぁ・・薬草。
ルウイさんも血を流すんだ・・と思ったのは秘密だ。
包帯が巻かれた指を嬉しそうに見るルウイさん・・、どうした?
何が嬉しいんだ??
「どうして嬉しそうなんですか?」
「・・トーリに手当てして頂いて・・、大切にされているように思えて・・」
「えーと、大切ですからね?怪我したら心配しますよ?」
私は、どんだけ鬼悪魔なんだ。
そう答えた私を、ルウイさんは嬉しそうに見つめるけれど・・、当たり前だからね?普通がちょっと分からないけど。




