騎士、私物につき。
立っているネイトさんを見て、メルクさんは私達をギルドの手前で馬から下りて、先に帰るように伝えてくれたので、有り難くそうさせてもらう。
メルクさんは、ルウイさんから手綱を預かると・・
「・・本当に申し訳ない・・。今度、必ずお礼は致します」
申し訳なさそうにいうから・・、こっちも心が痛む。
アホな騎士さんが来ると、本当に困るよね。
「いいえ、お気になさらず・・、魔狼の方、すみませんがお願いいたします」
ルウイさんが礼儀正しくメルクさんに挨拶をしていて・・、なんかそれだけで感動してしまう・・。さっきのアホな騎士を見ただけに・・と、思っていたら、そのネイトさんがこっちへ向かってくるではないか!!
なんで来るの?バカなの!?あ、アホだった!!
ルウイさんは、さっと私を背後に隠す。
メルクさんは、ネイトさんに「もう帰りますから・・」と、声をかけるがネイトさんは気にする事なくルウイさんを一瞥すると、ビシッと指差し・・
「お前、今までどこへ行ってたんだ?奴隷の身分であるにも関わらず、主人である少女を放っておくとは!!」
魔狼退治に行ってましたけど・・。
周囲にいた警備隊の人達の心が一つになった瞬間である。
メルクさんが、ものすごく頭が痛い・・という顔になっている・・。
「ネイト殿・・、彼は魔狼を・・」
「何!?魔狼が出たのか?」
「いえ、退治してきてくれたので仕事はなくなりました。どうぞ明日は次のギルドへ・・」
メルクさん、また端的に「早よ帰れ」って言ったな・・。
ネイトさんは驚いて、馬車の方を見る。
「まさか・・奴隷が?」
奴隷じゃないって言ってるのに!!!
ルウイさんの後ろから怒鳴りつけたいけど、ルウイさんの腕に阻まれた。
メルクさんは私達に目配せして帰るようにと促してくれたので、私は文句を言いたくて仕方なかったが、大人しく帰ろうとする。
ルウイさんが手を繋いでくれて、家へ歩いて行こうとすると・・
「・・おい!そこの女・・!!」
ネイトさんが足早にやってきて、私の腕を掴もうとした。
瞬間、ルウイさんがネイトさんの足を払って、仰向けに倒れたネイトさんの顔の上に剣を振り下ろし、寸止めする。
あまりの素早さにびっくりして、体が固まった。
いや、固まってる場合じゃない!動け私の体!!!
「・・・・我が主人に、許可なく触れるなら二度目はない・・」
静かに低い声で、ネイトさんを冷たい目で見下ろす。
一瞬、何が起きたか分からなかったネイトさんは、ハッとして・・
「ど、奴隷は、人を傷つけられないんだぞ!!!」
子供か・・。
私はルウイさんの横から顔を出して・・、
「私のルウイさんは、必要に応じて自衛をしていいと許可してありますので覚えておいて下さい」
ネイトさんは、またも目を丸くして私とルウイさんを見ると、メルクさんが可笑しくて堪らない!といった顔をしつつ、他の警備隊に目配せすると、ネイトさんの両脇を二人が抱えてギルドへ引きずるように連れていってくれた。
メルクさんは、わざとらしくため息をついて・・、
「あ〜あ、もうお礼をたっぷりしなきゃだわね!」
そういって、ウインクするとギルドへ向かっていった。
うーん、可愛くてかっこいくて、ゴツイぜ・・メルクさん。あとはアホを頼みました!手を振ると、笑って振り返してくれた。
家に戻ろうと思って、私の壁になっているルウイさんの背中をちょんちょんとつつく。
「ルウイさん、帰りましょうか」
ルウイさんの顔を見ようと、覗き込むと顔が赤い。
なんなら耳まで赤い。
え・・?なんで・・?
ルウイさんは、私を見て・・
「私の・・とは・・」
「え?だって、今は私の奴隷でしょう?まぁ、そうは思ってませんけど」
奴隷じゃなくて、人間な。
そこ間違えないように。
ルウイさんは、ちょっと眉を下げて笑って私を見つめる。
「いいえ、今はご主人様のものですよ」
「違うって言ってるのに・・」
私が口を尖らせて抗議すると、ルウイさんは柔らかく微笑んで私の手を少しキュッと握るのだった。・・・困った大型犬だな。




