騎士と契約。
ルウイさんは、重い鎧を置いてカウンターの前の椅子にまた座った。
と、鎧を外したおかげか・・首に模様がついてるのに気付く。
あれ・・・、その模様・・。
「失礼なことを聞きますが、ルウイさんは奴隷・・なんですか?」
ルウイさんは、ハッとして首の模様に触れた。
「え、あ・・そ、そうでした・・」
そうでした?
今まで奴隷だったの忘れてたの?ってか、この人が奴隷って全然イメージつかないんだけど・・。
「どなたかの奴隷だったら、契約者の所へ戻らないとですよね?」
「・・・・それが、契約してないんです・・」
「契約してない?!!」
思わず大きな声が出てしまった・・。
お茶を淹れたカップを、静かにルウイさんの前に出すと、ルウイさんはお礼を言ってカップを受け取る。
「普通、奴隷になったらすぐ契約しますよね?ええ?なんで??だって・・契約してないと、その辺の奴隷商人に捕まって適当な所に売られちゃうじゃないですか・・。いや、それだけ格好いいから高くは売れそうだけど・・」
「か、格好いい・・」
ルウイさんは、ちょっと照れているけど・・いや、そんな場合と違う!
そうなると勝手に、契約なしで奴隷を所持している人は罰されるのだ。
ここは田舎だから、大丈夫かな・・とも思うけれど、この訳ありの・・ちょっと天然入ってる感じの人をその辺に追い出すのは、大変危険な気がする・・。
ああ、さっきまでのワクワクが、ドキドキに変わってる・・。
「・・・ルウイさん、もし良ければ私と契約しませんか?」
「・・・え?」
「見た所訳ありっぽいですし、奴隷として契約しておかないと変な奴隷商人に危険な所に売られる可能性もあります。それなら私の側で暮らして、半年過ぎて問題なければ奴隷契約を解消できて普通の一般人に戻れます!」
ルウイさんは驚いて目を丸くする。
「し、しかし・・いきなり会った貴方にご迷惑は・・」
「いえ、奴隷になってくれれば、こちらに危害は加えられない契約になりますし、かえって安全です」
ルウイさん、またまた目を丸くする。
いや、これ本当に急務なんですよ?ここが平和だからいいけど・・
万が一、治安の悪い所かなんかで見つかったら大変だったよ・・。
「・・うちの畑で拾われた縁です。半年の我慢だと思って契約して下さい」
私が頭を下げると、ルウイさんは驚いて私の頭を上げるように声をかける。
「・・そんな、こちらが謝る事なのに、あの、それでは・・契約をお願いしても良いでしょうか?」
ルウイさんが申し訳なさそうにいうと、私はニコッと笑いかける。
「こちらこそよろしくお願いいたします!じゃ、お茶飲んだらちゃちゃっと契約に行きましょう!」
そういって、私がお茶を飲むとルウイさんはまた目を丸くする。
「・・随分、落ち着かれているんですね」
「いやぁ・・、多少はドキドキしてますけど。やっぱりよく考えたら、ちょっと面白いなって思って・・」
・・うん、まさかの裏の菜園に美形が埋まってて、しかも奴隷契約してないとか・・、設定盛りすぎだなって思ったら、笑えてきたんだよね・・。
ルウイさんは、また少し目を丸くして・・
「・・私も、トーリみたいに落ち着かないとですね・・」
って、呟いてお茶を飲んだけど・・。
いや〜・・、私の場合はちょっと特殊な感じなんで・・。
お茶を飲んでから、奴隷紋が見つかるとまずいのでストールを首に巻いてもらって、すぐに役所にある奴隷契約課に行く。奴隷販売所でもできるけど・・、あそこは女一人で気軽には入れない。恐い。
役所だと、事務的に仕事してくれるから大変有り難い。
ビバ、公共機関。
役所の人に、ルウイさんの契約をしたい事を申し出る。
「あ、経歴とか分かります・・?」
こそっと聞いておいた。
なんで奴隷になったかくらいは、知っておきたいし・・。
奴隷紋が入ると、自動的にある程度の情報が共有されるシステムなのだ。これは後日、手紙にて送付してもらう事にした。
そうして役所の人、立会いの元、私とルウイさんは奴隷契約を結んだ。
血の契約?そういうのしないよ。
あれ、漫画とかの世界だけらしい。名前を書いた時点で契約される紙だから痛い事はしない。大変、平凡である。




