騎士、微笑む。
見回りに来る騎士さんに当たり外れがあるのだが、メルクさんの顔を見ると今回は「ものすごいハズレ」っぽい。
また改めて来た方がいいかな・・そう思っていると、
メルクさんが私達を見つけて、手招きする・・。はーい・・、今、行きます〜・・。
メルクさんは、若干やつれた顔をしている。
「ごめんなさいねぇ・・、そろそろルドヴィクさんと魔狼退治に行きたかったんだけど、今回騎士さんが来ちゃって・・・」
騎士さんは、視察に来ても情報共有して問題がなければすぐ次のギルドに行くんだけど・・、今回は違うのかな?
「今回の騎士さんは、滞在が長いんですか?」
そう聞くと、メルクさんはちょっと声を潜めて私達にちょっと近付く。
「あ〜・・、魔狼の事を聞きつけて・・、なんかやたらと張り切ってるのよぉ、私の出番だなって!・・でも、あんまり実力がなさそうなんだけどね・・」
「メルク殿!!!」
大きい声に、私もメルクさんもドキッとして体が跳ねる。
ええ、何?でっかい声で・・。
そう思って、メルクさんの後ろを見ると20代くらいのお兄さんだろうか・・、短く切った薄茶の髪をしてちょっとツリ目の騎士さんがギルドからやってきた。
「・・・ネイトさん・・、そんなに大きな声で呼ばなくても聞こえます・・」
メルクさんがちょっとじろっと睨むが、ネイトさんとやらは気にせず「そうですか!!」と頷くだけだ。・・・うん、こりゃ大変そうだ。ネイトさんは、ルウイさんと私をジロジロ見る。な、何・・?不躾な奴だな・・。
「メルク殿、こちらの方は?」
「ああ、さっきお話していたルドヴィクさんです。前回、魔狼退治で活躍されて・・、今回も協力して頂く予定なんです。なので、ネイトさんも次のギルドに・・」
メルクさんが端的に「はよ帰れ」と言ってる・・。
しかしネイトさんには、全く通じてないのか、ルウイさんをまたもジロジロ見て、ハッと鼻で笑った。
「こんな図体だけデカイ男が一人で、魔狼を退治?にわかには信じられませんね?」
うわぁ・・・、若さって怖いな。怖いものなしだな。
メルクさんの据わった目に気付けないんだもん。
私はルウイさんを心配して見上げると、ふふっと優しく私に笑いかける。・・さすが、団長様は違うぜ!この余裕っぷり!
ネイトさんは、そんな私達の様子が気に入らないのか、
またもジロジロ見ると、ルウイさんの首元を見て突然襟を引っ張った!
「なんだ、こいつは奴隷じゃないか!」
ハハっと笑ってルウイさんを指差した途端、私は一瞬で頭に血が上って、ルウイさんの襟を掴むその手を思い切り叩いた。
「奴隷だからなんですか!?失礼です!!」
「なっ・・!!」
ネイトさんは驚いて私を見るけれど、すかさずルウイさんが私の前に立つ。
ちょ、ちょっと待ってよ!私はそいつをもう一発殴りたいんですけど?!
「・・・私の主人にこれ以上の無礼は控えて頂きたい」
低い・・、静かな怒りを孕む声に、ネイトさんがビクリと体を震わせた。
メルクさんがすかさずネイトさんの肩に手を置いて、「今回は話しておきますから」といって、ギルドの中へ促した。
ギルドへネイトさんを押し込むように入れたメルクさんが、すまなそうにこちらに視線を送ると扉を閉めた。
な、な、な、なんだあいつは!!!!
今まで来た騎士の中で、ワーストブッチギリナンバーワンで嫌なやつだ!!!前世でも多少嫌な奴はいたけど、なんなのあれ!!?おがくずが脳みそに詰まってるんじゃないの?!
って、頭に血が上っていてうっかりしてた!
ルウイさんは大丈夫かな?いきなり奴隷なんてギルドの前で大声で言われちゃったし・・、慌てて後ろ姿しか見えないルウイさんのシャツをちょっと引っ張る。
「ルウイさん、あの大丈夫・・?」
心配して聞いたのに、振り返ったルウイさんは満面の笑みである。
え?なんで笑ってんの?なんでそんな尻尾をブンブン振るかのような笑顔なの??こういう時、どういう顔をすればいいか分からないから、笑ったの???




