騎士、所望する。
お茶をしながら明日の話をよくよく聞くと、一日がかりらしい。
「え・・じゃあ、明日お弁当持っていかないとですね。作っておきますよ」
「いえ・・それは・・」
「ギルドからお弁当、支給されるんですか?」
「・・・いえ・・」
何故そこで遠慮する・・。
それをやめろといっているのに。じとっとルウイさんを見ると、少し申し訳なさそうにこちらを見る。
大型犬の「怒る?怒る??」みたいな表情はやめなさい。
撫でたくなるから!
「夕飯のついでに仕込みしておけばいいだけだし、大した手間じゃないんですから、遠慮なく言ってくださいよ。明日は何時に家を出るんですか?」
ルウイさんは、眉を下げて・・
「6時です・・」
「あ、じゃあ、全然大丈夫です。お肉もりもり弁当にしますね!」
ニコッとルウイさんに笑うと、ようやく小さく笑う。
悪い事したわけじゃないんだから、笑っていればいいのだ。
「楽しみにしてます」
よろしい!!思わず頭を撫でたくなる衝動を我慢して、ニコッと微笑んだ。ふー!私は大人!!自制しろこの右手・・と、心の中で静かに自分にツッコミを入れた。
そうして、あっという間に翌日である。
少し早めに起きて、硬めのパンにマスタードとチーズ、噛み切りやすい厚さに切った塩胡椒をして焼いた肉を挟んだ。塩でソテーした野菜を別の入れ物に入れて、袋に包む。
甘い物もあった方がいいかな・・。ドライフルーツ渡してあげたら喜んでたし、袋に一緒に入れておく。
「おお・・、なかなかいい出来ではないか?」
見栄えもいいし、これはメルクさん辺りが見たら「やだ〜!可愛い!」っていうやつだ・・。思わず笑ってしまう。
と、川からルウイさんがやってくるのが見えた。
今日は長剣を持っているだけなので、訓練でもしてきたのかな?ルウイさんは、静かに微笑みつつキッチンへ入ってくる。
「おはようございます。朝からお疲れ様です」
「おはようございます・・、お弁当ありがとうございます」
「いえいえ、これ・・持っていってください。朝食はこっちです。手を洗ったら一緒に食べましょう」
そういうと、嬉しそうに笑う。
尻尾見えてるぞ、騎士団長様・・。パタパタ振ってるぞ。
一緒に朝食を食べると、さっと立ってお皿や食器を洗ってくれた。出かける日くらい、別にいいのに・・。騎士さんっていうのは、本当に仕事熱心だな。
すぐに出かけるのかと思ったらハンドクリームの瓶をカウンターに置いて、ニコニコする。
あ、塗れと。
なんか綺麗な人が嬉しそうにこちらを見てる姿が面白くて、小さく笑ってしまう。椅子に座ってもらうと、ハンドクリームの蓋を開けて、薬をすくって塗り込む。
「まだちょっとカサついてますね・・」
「昨日よりは、幾分赤みは引きましたよ・・?」
「そうですか?じゃあ、マメに塗りましょうね」
そういうと、ルウイさんはパッと顔が輝いて嬉しそうに微笑む。
犬・・・大型犬がここにおる。
グッボーイ!!!って言って撫でてぇ!!!いや、耐えろ!私、相手は人間だ!騎士団長様だ!!失礼なことはあってはならぬ!!
自分の少ない理性を無理やり引き出して、欲望に投げつけた。
よし・・・!耐えた。
私は自分の理性を褒め称えつつ、ルウイさんの大きな手に薬を塗り終えると微笑んだ。これが精神年齢50近い大人だ。
ルウイさんは、ニコニコ笑って・・
「帰ったら、撫でてくださいね」
「いや、今耐えた所なんで、ちょっと無理ですね。あとルウイさん人間の尊厳を大事にして下さい。」
ルウイさんは不思議そうな顔をして、私を見て・・、
ちょっと首を傾げて微笑むと、
「ご褒美で・・、お願いします」
え?どうしたって?
理性がどっかに行ったんで、私は欲望のままルウイさんの頭を撫でた。
帰ってからのご褒美だったはずなのに、先に撫でてしまった。
大型犬、恐るべし。理性は、ルウイさんを見送ったらノコノコと帰ってきた。耐えろよ、私の理性!!!




