騎士、学習する。
カイルがかかった罠のロープをどうすればいいのかな・・。
これは切った方が早いかな・・。
「ちょっと部屋からナイフ持ってくるから待ってて」
「早くしてくれ!!」
「・・はいはい」
まったく注文の多い男だ・・。
ナイフを持ってきて、バケツの上に乗ってカイルの足元の方の縄をナイフで切る。
木の根元の方を切った方が良かったかな?でも、結構グルグルに巻かれてるしなぁ・・。ギシギシと縄を切るたびにすごい音がするけど、ちょっと怖い。
「あ、切れそう・・」
「ちょ、待て!!手、手をつくから・・」
カイルが言った途端、ブツッとロープが切れて顔面から土に顔を突っ込んだ。あ、ごめん・・。
「ごめん、カイル・・一足遅かった」
「んの、アホ!!!うげ・・・、土が口に入った・・」
「・・そこの井戸で顔を洗ってきな」
警備隊なのに、大丈夫かな・・。
顔を洗うついでに、うがいもしているカイルにタオルを渡すと、ゴシゴシ拭く。
「・・あー、えらい目にあった・・」
「まったく、普通に玄関から入って来なさい。あ、あと、報酬金ちょうだい」
「お前なぁ!!!」
カイルがなんか怒っているけど、無視である。
まったくうるさいなぁ・・。まだ仕事があるっていうのに・・。
「はいはい、ほらお茶飲んでくんでしょ?オヤツもあるよ〜」
そういうと、途端に静かになった。
「・・ん?どうかした?」
振り返ると、ルウイさんが帰ってきたのか家の横の小道から歩いてきた。
早いなぁ・・、もう狩りが済んだのかな?
目が合うと、ルウイさんはニコっと笑って手を振りつつこちらへ来る。
「ルウイさん、もう狩り終わったんですか?」
「はい、鹿を獲ったので・・ギルドに渡してきました。こちらで捌こうとしたら、メルクさんが自らやると仰るので・・」
「・・・・あ、メルクさんね・・・」
あの人、ルウイさんに激甘でないか?
いつもだったら、「テメェでやれ!」って野太い声で言うのに・・。ある意味分かりやすい人だ。
そんな会話をしてて、ふとカイルを見ると
なんか・・私の後ろで隠れてません?
「・・・カイル、人を盾にしないでよ」
「し、してねーし!!」
中学生かお前は。
あ、そうだ・・、罠の事を思い出してルウイさんを見る。
「ルウイさん、さっきカイルが罠に掛かっちゃったんで、ロープ切っちゃったんです。申し訳ないんですけど、私も掛かっちゃうかもしれないからあの辺はやめておいて貰えますか?」
「そうですか・・、あの辺も危険かと思ったのですが、もう少し位置を調整しておきますね」
「・・・あ、罠は張るのは決定事項なんですね」
・・この人、結構曲げないんだな・・。
まぁ、位置を調整しておいてくれるならいいか・・。
カイルは、「いや・・そもそも罠を張らないで欲しい」って小さい声で言ってるけど、我が家のルールでいく。
「今、お茶でも淹れようと思ってたんですけど、ルウイさんも飲みますか?」
「はい、ぜひ」
穏やかな微笑みに、ほっこりする。
そして流れるように裏口を開けて、先に部屋へとエスコートするように入れてくれる・・。騎士さんって、エスコートしないと生きていけない生き物なのかな・・。
キッチンに入ると、さっと手を洗ってお湯を沸かしておくと、ルウイさんが昨日教えた食器棚からカップを3つ出してくれた。流石、飲み込み早いなぁ。
「カップありがとうございます」
「いえいえ・・、これくらい大した事では・・」
嬉しそうに微笑むので、うっかり「いい子だね〜!」ってワンコのように頭を撫でてしまいたくなる・・。なんだろう、この人、犬のスタンドでも持ってるのか?
頑張って撫でるのを耐えた。




