騎士、依頼を受ける。
ルウイさんは、ギルドを見に行きたいというので、昨日カイルを追い返してしまった手前、大変行きにくいけど案内した。
濃い茶色のレンガの建物に、黒い鋳物で剣の模様が描かれた看板が掲げられている。
焦げ茶の木のドアをルウイさんが開けてくれて、中へ入る。
今日は人が出払っているのか、ひっそりしていた。
中に何人かいたけど、話に夢中な様子だった。
「あ、そこに依頼書が貼ってありますよ」
「ありがとうございます」
ニコッと微笑んで依頼書の貼られている掲示板へ一緒に行って、内容を見てみる。
『薬草集め』
『魔狼退治』
『窃盗団退治』
他にも細々とあったけど・・、結構お金が入るのはこれくらいかなぁ〜そう思っていると、玄関のドアから見回りの警備隊が帰ってきたのか、ドヤドヤと声がする。
「あ〜〜!トーリ!!」
はいはい、トーリですよ・・。
じとっと大声で人を指差すカイルを見る。
「・・人を指差さないでくれます?」
「あんだよ!だって昨日・・」
そう言いかけて、ルウイさんを見つめて・・少し後ずさった。
「・・こんにちは、カイル・・さん?」
ルウイさんが、綺麗な顔でカイルに挨拶をする。
けど・・、威圧感とか出してません?なんか・・横にいる私まで、圧を感じるんですけど・・。
カイルがちょっと怯えるように私を見るけど、助けないよ?
すると、カイルの後ろから・・濃い茶色の長い髪を緩く編んで片方に流し、厨二病やってます!!みたいなベルトがたくさんついた服を着て、ごっついヒールのついた黒いブーツを履いた警備隊長がやってきた。
「ちょっとぉ〜、カイル!女の子にな〜にやってるのぉ!?」
ちょっと気だるげな・・太い声の、おネエさんの警備隊長に・・ルウイさんが少し驚いた顔をした。あ、やっぱり驚きますよね?
「た、隊長・・」
「トーリ!今日も可愛いわねぇ!あら〜、なあにとうとう彼氏ができたの?」
カイルは驚いて私を見るけれど、違う違う!!!思いっきり手を顔の前で振った。
「ち、違います!!!ちょ、ちょっと訳あって、今うちで暮らしてもらってるんです!!」
「え〜〜〜二人っきりでぇ〜!!」
きゃっきゃと私とルウイさんを交互に見ているけれど・・
そうだった・・、ごつい見た目なのに、この人・・めっちゃ乙女思考だった。
ルウイさんは、静かにお辞儀をして、
「初めまして、ルドヴィクと申します。こちらの都合でトーリにはご迷惑をおかけするばかりで・・、せめてこちらで何かお仕事をして、支えたいと思って参りました」
そう言って、綺麗な顔で微笑むものだから・・
隊長の目がもう完全に乙女だ。
「まぁああ・・・、ご紹介遅れました。私、メルク・ベルナールと申します。こちらの警備隊、隊長をしております!腕が立つようですし・・、是非ともお仕事お手伝いして頂けたら嬉しいですわ!!」
横でカイルが、「うげぇ・・」って言ってるけど、見つかると腹にパンチ食らうぞ・・。
ルウイさんは、ニコニコ微笑みつつ「ありがとうございます」と、王子様の如く微笑む。うん、すごいな、この隊長さんに満面の笑顔・・!!すごい!!!
ルウイさんは、依頼書の紙を一枚指差して、
「・・この窃盗団というのは、どの辺りで出没するんですか?」
「ああ、これはちょうどトーリの家の方で、昨日見かけたって話があったわね〜」
「え!?そうなんですか?」
私がギョッとすると、カイルがすかさず・・
「だから俺が行ったんだろ!?なのに、すぐ追い返すし・・」
と、言うが、ルウイさんがちろっと見ると、どんどん声が尻すぼみになっていく。
まぁ、追い返しましたね。はい。
ルウイさんは、窃盗団の依頼書を掲示板から剥がす。
「・・それでは、こちらをお受け致しましょう」
「まああ!!助かるわ!そこのカウンターで、是非手続きをなさってください!!!」
隊長のメルクさんは顔を綻ばせ、いそいそとルウイさんのギルドの登録と依頼の登録を済ませてくれた・・。
私とカイルは・・、完全乙女な隊長さんに大分引いてた。




