騎士と口紅。
劇は終わったが、見回りは終わらない。
ルウイさんは見回りに行くので、私はホットワインを貰ってキリルとギルドでお留守番だ。キリルと一緒ならば文句もあるまい・・・。それでもちょっと寂しそうだったけど・・。
騎士団長、ワンコではないんだ・・。
あなたは人間だ・・。
そういう顔されると、胸が痛むからやめてくれ・・。
ホットワインをちびちび飲みつつ、キリルを見る。
さっき劇をしていたので、化粧をしたままで・・、隊服を着ているけれど綺麗だ。
「キリルって、そのままでも綺麗だけど、お化粧すると更に綺麗だね〜」
「え、なに、突然!トーリもすればいいじゃん!!」
「・・・やった事ないから、わかんないよ」
前世もやったっけ・・?
口紅くらいは塗った記憶があるけど・・、薄っすらしか覚えてない。
「なんですって・・・?やった事がない・・?」
野太い声が、ヒールの音と共に聞こえて、キリルと振り返ると・・メルクさんが、金色のラメがビッシリついたポーチを持っている・・。すごい、それどこで買ったの?売ってるの??
「ちょっとぉ?トーリ!!乙女が何もしないって、罪よ!?」
「な、何でですか?!するもしないも自由じゃないですか!」
「お黙り!!こんなに可愛いのに!!もっと可愛くしたいでしょ!!」
「う、ううん・・・??そ、そういうもの?!」
メルクさんの理屈は、道理がぶっ飛ぶ勢いだな?
私とキリルが座っているテーブルの席にドカッと力強く座ると、ポーチを開ける。
「・・・・キリル、トーリ押さえて。やるわよ?」
「はい!!隊長!!!」
「え、何、私・・殺されるんですか・・?」
キリルに突然、後ろで肩を押さえつけられ、嬉しそうなメルクさんが迫ってきて、・・これは確かに、前列に座っていたちびっ子泣くなぁ・・と思った。
メルクさんに散々おもちゃにされ、「これ一式あげるわ!!」と可愛らしいお花のポーチに化粧道具を入れてプレゼントしてくれた・・。
女子、完全に女子だよ姐さん!!
そうこうしていると、見回りから戻ったルウイさんと、くっ付いて歩いていたのか・・オーウェンさんと、クレオさんも入ってきた。
「あ、ルウイさんお帰りなさい!」
ルウイさんを振り返ると、ピタッと私を見て動きを止めた。
クレオさんが「ほ〜?」ってニヤニヤ笑ってるけど、何かいたの?横のキリルを見ると、ルウイさんの前に押し出された。
「ルウイさん、何かありました?」
「・・・・いえ、トーリ・・その、お顔を・・」
「ああ、キリルとメルクさんに・・、お化粧してもらいました。なんか、違和感があって・・」
唇とか・・普段何も塗らないから、違和感があるんだよね。
指で唇をいじってしまう。
き、気になる・・。
ルウイさんは、私の唇をマジマジと見つめると顔をじわじわと赤くする・・。
「あの・・、ちょっとこちらへ・・」
「はい?」
ニヤニヤ笑うキリルが、手を振るけど・・何?何かあるの??
ルウイさんに、そっとギルドの控え室へ誘導される。
室内に入ると、テーブルと椅子だけの部屋に二人きりだ。
「・・・ルウイさん、どうかしました?」
「・・・・トーリが・・、とても綺麗で・・、誰にも見せたくなくて・・」
うん・・?
私が綺麗・・??
ちょっと意味が分かりませんね〜?
「・・・綺麗なら、ルウイさんの間違いでは?」
「・・いえ、いつものトーリもとても魅力的ですが、今のトーリも素敵です」
ルウイさんはちょっと照れ臭そうに私を見つめる。
・・あ、そ、そうなの?ふ、ふーん・・・?なんだか私まで照れ臭くなって、俯いてしまう・・。
「あの・・、触れてもいいでしょうか?」
「あ、はい?」
手を繋ぐの?
そう思って、「触れていいですよ」そう言って手を出すと、手をぎゅっと握られたかと思うと、そのまま体ごと前に引っ張られて、静かにキスをされた。
んん・・・??
慌てて体を離すと、ルウイさんが逃がさないとばかりに手を握る。
「・・もう少し、触れさせて下さい・・」
「む、無理です!!無理ですって!!!」
赤くなった私を愛おしそうに見つめるルウイさんの唇に、私の口紅がついている。
それを見ただけで、顔が更に赤くなりそうなのに・・、ルウイさんがそれを自分でペロッと舐めとろうとするので・・、真っ赤になった。
む、無理〜〜〜〜!!
本当に無理〜〜〜!!!目があちこち泳ぐ私の唇から口紅を全部取ろうとしているんじゃないか?って、くらい・・ルウイさんは、何度もキスしてきて、控え室からしばらく私は出られなかった・・。無理〜〜〜・・・・・。




