騎士、命に代えても。
雪の女王の配下のオーウェンさん、大変な大根役者っぷりだったが、ちびっ子を恐怖のどん底に叩き落とす演技は、最高であった。
わんわん泣くちびっ子を笑いながら宥めるお母さん達は、雪の女王の弟のルウイさんに見惚れている。うーん、カオス!
ルウイさんは、苦しそうに・・
「なんという事だ、愛しい春の女王をどうすれば目覚めさせてあげられるだろうか・・」
そういうと、ルウイさんの後ろからカイルが真っ黒い髪のカツラを被って、ぎこちなくやって来る。
「こ、この薬を飲ませれば春の女王は、目覚めるが・・その代わりにお前は溶けてしまうが、それでもいいのか?」
大根役者第二弾だ。
カイルは棒読みでセリフをいうと、手に持っていた薬の瓶をルウイさんに渡す。
ルウイさんは、静かに頷き
客席の私を見る。
「たとえ会えなくても、彼女のいない春は、もはや春でない・・、命が尽きても構わない」
お、おお〜〜・・格好いいな。
クレオさんがニヤニヤして私を見ながら「嬢ちゃんに言ってるぞ?」っていうけど・・、ええと静かにしようか?周囲の女性客はなんていうか目が完全に乙女になってますし・・。
そうして、再び現れたオーウェンさんと雪の女王のメルクさんに、阻まれつつ戦うルウイさんが、寝ているキリルに傷つきながら薬を飲ませると、そのまま力尽きて倒れ・・、
キリルは、むくりと起きると周囲には誰もいない・・
「・・あら、いつの間にか春が来ている・・。大変、春の歌を歌わないと・・」
そういって、春の目覚めの歌を歌うけれど・・、雪の女王も雪の精のルウイさんも溶けていて・・、気持ちを伝える事なく春が始まる・・。
警備隊の人も歌い出すと・・、歌を知っている住人の人も一斉に一緒に歌い出して、大合唱をすると・・静かに舞台の幕が閉じられた。
「っは〜〜〜〜!!こんな劇だったんだ〜〜」
クレオさんが、拍手しながら私に話す。
いや、すみません・・、私も見るまですっかり内容忘れてましたわ〜・・。同じく拍手しながら頷く。ふと、おばあちゃんに教えてもらった事を思い出す。
「春先に、「雪の花」っていう白い花が咲くんです。それを、雪の精の初恋って言うんです。なかなか素敵でしょう?」
クレオさんは、私の話を聞くとニコッと笑う。
「春の女王が、いつか知ったらいいな!」
あ、確かに・・。
小さく笑って頷く。ルウイさん達が舞台から出てきて手をあげると、一斉に黄色い悲鳴と泣き叫ぶ子供の声が聞こえる・・・。大変カオスな劇だったけど、本来は違うからな?情緒豊かな話だからな?
見ていた人達は、思いおもいの場所へ行き・・私とクレオさんは舞台の袖の方へ行くと、ルウイさんが微笑みながら、こちらへやって来る。
うんうん、頑張ったね〜!・・・って、それ大型犬だ。
ルウイさんは人間だ。
「ルウイさん、演技素敵でしたよ!雪の精だったんですね」
「ありがとうございます!見て頂けて嬉しいです」
いえいえこちらこそ・・。
と、カイルが舞台袖から片付けのために荷物運びをしていると、舞台に荷物をぶつけた拍子に積もっていた雪が落ちてきた!
「トーリ!!」
「嬢ちゃん!!」
あ、
ルウイさんの手が瞬間止まった・・
クレオさんがグイッと私の腕を引っ張ると、雪がどさっと足元に落ちた。せ、セーフ・・。
はぁ・・っと、息を吐いてクレオさんを見上げて、
「あの、ありがとうございます」
「お〜、気をつけろよ!」
クレオさんはそういうと、メルクさんに呼ばれてそちらへ行ってしまった。
私はルウイさんにもお礼を言おうと思って、ルウイさんを見ると・・
すごく寂しそうに私を見つめる。
「・・・どうしたんですか?どこか痛いんですか?」
「・・今、咄嗟にお守りできなくて・・・」
あ、そうか、電撃・・。
だから一瞬止まったんだ・・。
「大丈夫ですよ、ルウイさんはいつだって守ってくれてますよ」
「・・いえ、今度は電撃を喰らってもお守りします」
「・・・ぜひ、まずは自分の体を大事にして下さい」
私を優先する前に、自分を大事にしてくれ。
無理かもしれないが、まずそれが第一条件だ。大変不服そうだが、そこは譲れない。
あっという間に100話・・。
早くない?私、早くない??すみません・・。甘いのはまだ続きます。




