関係ないけど、関係ある
朝起きたら予想以上にブクマと評価がきててびっくりしました…
本当にありがとうございます。
久しぶりに昔の夢を見た。
俺と楓が公園で日が暮れるまで遊んでいる、懐かしい夢だった。
昔はよかった。何も考えず学校に行き授業を受け、男女関係なく友達と遊んで、親や先生の言うことをしっかり聞いていた。
だけど、成長するにつれていろいろと考えるようになってしまって
思春期には女子と遊ぶのが恥ずかしいと思うようになってしまって
そんなことを考えなければ今でも楓と仲良くすることができていたんじゃないかと思う。けど、あまりにも時間が立ち過ぎた。たかが数年かもしれないが関係が変わってしまうには十分だった。
学校での昼休み。信雪と二人でご飯食べながら雑談をする。大したことではないのかもしれないが、俺にとってはかけがえのない大切な時間だ。
「おーい、琉聞いてるか?」
「ああ、最近の流行りの曲はボカロって話だろ?」
「そうそう! 特にこの人が作るボカロが熱くてな……」
そういって信雪は楽しそうに話す。こいつの凄い所は人柄や性格もよく、勉強も運動もかなりできるって所だ。本当に色んな人と話すし友達も多く、先生にも気に入られてる。典型的な優等生って存在だが、それは表向きで、裏では結構なオタクというのが面白い。だから信用できるし、ずっと仲良くできる理由でもあると思う。そんなことを思いながら話を聞いていると昼休みの終了5分前を告げる。
「もう昼休みも終わりかよ……」
「なんか短く感じるよな」
「本当だぜ、まだまだ語り足りないのによ。続きはまた帰りの時に話すわ!」
「はいよ、また後でな」
そう言って信雪は自分の席に戻ってしまった。そして次の授業の準備をしていると隣の席の楓が慌ただしく、机の中や通学バック、リュックの中を探っていた。ひとしきり漁った後ガクッと頭を下げた。
ああ、教科書忘れたんだろうなぁ……と察した。数学の授業に来る先生はいつもチャイムと同時に来る。忘れ物をしたとなれば授業中に先生の元に行く必要があるので全員から注目されてしまう。可愛そうだがでも、俺には関係ないことだ。
チャイムと同時に数学教師である三国洋一先生が来た。そして学級委員の号令で授業が始まった。だけど彼女はなかなか言い出せないでいる。関係ないと決め込んでいたことだが、努力をしている彼女の頑張りが頭に浮かぶ。
自分の持っていた教科書をスッと彼女の机に置く。そして小さな声で使ってと伝える。
嫌われてる相手にこんなことするなんて俺は本当に頭悪いよなぁ……と思いながらも黒板に問題を写している先生の元に行く。
「先生。すいません。教科書を忘れました」
「風見! 初日の授業から忘れ物とは困るぞ!」
「はい……本当にすいません」
「まぁ、人間だから忘れることは仕方ない。正直者には教科書を貸してやる。次回からは気を付けること。いいな?」
初回だからか、優しい注意で終わった。先生もなんだかんだ優しく、教科書まで貸してくれた。授業初日から先生に目をつけられたなと思いつつ席に戻る。その途中、気まずそうな顔で楓がこっちを見ていた。嫌いな相手から教科書を貸され複雑な気持ちなんだろう。俺だって同じ立場だったら複雑な気持ちになるに違いない。
授業中、隣から小さな紙切れが投げられた。とても綺麗な文字で、教科書を貸してくれてありがとう。とだけ書いてある。ありがとうと言われるだけで、少し嬉しくなってしまう。そのあとは何事もなく授業も終わり、放課後を迎えた。
「今日は本当に助かったわ。ありがとう」
「え、ああ、気にしないで」
小さな声でお礼を簡潔に言って楓は荷物を持ち、急ぐように教室を出て行ってしまった。これで少しぐらい関係が戻ればといいなと思っていたがそう上手くは行かないみたいだ。
帰り道で俺は信雪に尋ねる。
「なぁ、信雪。嫌われた人ともう一回仲良くするって難しいのかな?」
「難しいだろうね、どうしても仲良くしたいなら更に嫌われてもいい覚悟で話しかけてみるとかじゃないかな」
「やっぱり難しいか……」
「嫌われてなければ簡単なんだけど、一度嫌われると本当に難しいと思うね」
やっぱり難しいよな。それでも更に嫌われる可能性もあるけど、少しずつ話して行けたらいいなと思った。
「琉ちゃん本当に優しすぎ……本当に馬鹿でしょ……」
私なんかに教科書貸して、自分が忘れたことにするなんて思ってもみなかった。でも、とても助かった。昔から優しいのは変わっていない。
また話せるようになりたい……
そんな彼女の呟きは帰り道に静かに消えていった。
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