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国友鉄砲鍛冶衆の娘  作者: 米村ひお
迷い込んだ先
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イマジン

 走り抜けていく視界に広がるのは、田畑と、畦道の背の高い木。その合間にぽつんと生えている柿の木は枝をしならせ、ほんのり色付いた柿の実を吊る下げている。


「小谷城の天主、かっこいい……!」


 たくみの過ごしてきた日常にも小谷山はあった。けれど天守は現存せず、神父に連れられて小谷城址を訪れ、過去に存在したであろう建物をイマジンして思いを馳せていたのだから、胸中は感動の嵐だ。


「天守だ天守だぁ!」


 わぁあああい!

 糸の切れた凧の様に走っていたたくみだが、あるものを見つけて足を止めた。


「うし……」


 稲穂が頭を垂らして香ばしいような青臭いような独特の香り漂う田んぼでは、農夫が腰を折って草むしりに精を出し、畦には牛が佇んで尻尾をぱたぱた動かして蝿を振り払っている。道の先には荷車を付けた小ぶりな馬もいて、その傍に落とされた排泄物には金銀の蝿が元気に舞っていた。

 そういうものに興味を見出す年頃のたくみは適当な棒を手に。


「んぉぉ、意外と柔ぁらかい」


 畦にしゃがみこんでつんつんつんつん、気が済むまで “それ” を突いて遊ぶのだった。



 *



 国友にほど近い姉川の堤に座っているのは、頭の天辺がつるつるで、肌がテカテカ、くちばしの付いた、黒色の河童だ。

 姉川のずっと先のほうでは、色とりどりの河童が仲間で水遊び中だった。

 琥珀色の瞳でその様子をちらりと見て、黒色の河童はごろんと横になった。

 空は青く、白い雲がふわふわ浮かび、猛禽が旋回している。のどかな光景に、目を瞑った。


 ―気持ちがいいな


 このまま眠りに引き込まれそうになっていた、その時。


「おい、今日も怠けか」


 尖った調子の言葉に目を開ければ、先ほど水浴びをしていた河童たちに囲まれていた。黒色の河童は無言で上半身を起こすと、


「いいご身分だな」


 緑色の河童が黒色の河童の肩を小突いた。


「人を川へ引きずり込まない河童なんか、要らないんだよ」


 今度は黄色い河童が黒色の河童のくちばしを掴んで左右に揺すり、放るように手を離した。

「だからさ、俺らが必要としてやるよ」


 深緑色の河童が黒色の河童の顔を覗き込んで、くちばしをにやりと歪めた。


「最近子供らが川原で遊ばなくなったせいで、尻子玉不足なの知ってるだろ? で、俺らむしゃくしゃしてるわけ。だからさ、ちょっと殴られろよ」


 紫色の河童が腹を蹴ったのを合図に、総攻撃が始まった。




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