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国友鉄砲鍛冶衆の娘  作者: 米村ひお
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謎の扉

 

 わきあいあい、人ならざる者達の話が続く蔵で、


「賑やかになったね」


 たくみはにこやかに話すと、河童が言った。


「そういや一本たたら、来ないな」


 その場にいる皆が、周りを見渡して頷いた。


 すると蓑火が、

「みゅーじあむのまえで」

「こえかけた」

「たくみのとこ」

「いこーって」


 と話したが。

 その晩、一本たたらは現れなかった。


 翌朝、朝ごはんの時間になってもシスターは現れなかった。きゅうりをかじり水分補給をしっかりしていて体調万全のたくみは、遊びに来てくれた皆が総出で鍵を開けた蔵を飛び出した。

 一本たたらが来なかったことが気になって、皆と別れを告げると。リュックを背負って麦藁帽子を被った昨日釣りに行った装備のまま国友鉄砲ミュージアムへと走っていき、二階へ駆け上がった。


 “たたちゃん”


 薄暗い展示室で呼びかけても、返事は無い。今までこんな事はなかったのに。更に心配になって奥へと進めば、初めて一本たたらと出会った場所へと立った。


 “たたちゃん”


 もう一度呼びかけたとき、視界の隅に半開きのドアを見つけた。

 ドアからは、黒い下敷き越しにお日様を覗いたときのような美しい橙色の光が、微かに漏れている。


 ―こんなドア、あったかな


 とは思うものの、光に導かれて足はドアへ向かって動き出す。


 ―なんだろう、きれいな灯りだ


 橙色の光も気になる、もしかしたら一本たたらがこの中にいるかもしれない、と思い。

 ノブに手をかけ、そっと中へ入った。





「お? たくみが? そんな事があったのか」


 道行きで河童に会った一本たたらは千鳥足で、事情を聞いて目を丸くした。


「一本たたらは何してたんだ? みんな心配してたぞ。たくみなんかいの一番でミュージアムへお前を探しに走っていったぞ」


「甲賀のほうで二百年ぶりに寄り合いがあってだな、朝帰りってわけさ。……あったまいてぇ……あぁ、たくみが探してんだな、分かった、ミュージアムへ戻ってみる」


 酒臭さに眉をしかめた河童だった。


「おーい、たくみぃ」


 ミュージアムに帰ってきた一本たたらはたくみを呼んでみるが、展示室には誰もいなかった。


「たくみぃ、帰ったぞぉ……うぅ、おやすみぃ」


 展示室の床で泥の様に眠ってしまうのだった。




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