あるノルマ
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たくみが六歳になった冬、ようやくランドセルが与えられた。春から小学校に通うたくみの胸は希望に満ち溢れていたのだが、シスターから受け取ったそれは今年中学に進学した兄弟のお下がりで、その色は黒色で、乱暴に使ったのか、ぺたんこに潰れてしまっていた。
自室で机に座り、ぼうっとランドセルを眺めるたくみに、圭が声をかけた。
「大丈夫か」
「……ぅん、」
ふへ、と笑って見せるが、元気が出ない。
しばらく顎に手を付いて足をぶらぶらさせていたが、突然圭のほうを向いて、ニコッと笑った。
「圭ちゃんと同じ色だから、許す!」
「……そっか、」
圭は眉を落として笑い、たくみの頭を撫ぜた。
小学校に進学すると、シスターとの接点も少なくなっていた。宿題や明日の支度は圭が見てくれるし、身の回りのことはすべて自分で出来るようになっていた。それに、シスターがいればその場から去るという回避方法も自然と身につけてしまっていた。
小学校に入った園の子供たちには、あるノルマが課せられる。それは、手作りクッキーとレモネードの屋台販売だ。学校組総動員でクッキーとレモネードを手作りし、チャペルの前で販売するのだ。それが毎年、燈明祭が終わってからハロウィンまでの間に一日だけ行われていた。
「なんか、今年は量が多くないか?」
完全に声変わりをした一番年上の男の子が調理室を見渡して言った。
「そーだな、」
「そんな気がする」





