反省箱
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シスターの罰が減るのは、地下室に幽霊が現れた翌朝から三日間ほどだった。にこにこと掃除をするシスターを見ていて、たくみは思い出した。
「シスターは皆に愛を注ぎすぎて疲れてしまう事があるのです、だから、みなでシスターを今まで以上に愛しましょう」
昨年の春、河童の長老に会ったあと寄った蕎麦屋で、注文したおそばを待っている間、神父はそんな話をした。
その話を聞いて、たくみなりに努力した。
これから干す洗濯物の皺を伸ばすのを手伝ったり、落ちてるゴミを拾ったり、自分でできることは自分でこなした。
けれどシスターは、それを見てもありがとうとも、よく出来たねとも言わなかった。
冷めた目で眺めるならまだいい。明らかに無視をしているときのほうが多かった。
それでも、たくみは黙って自分の出来る事をこなし、それはいつしか己の成長に大きくつながっていったことは間違いない。
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たくみの人生二回目の燈明祭も、圭に手を引かれて楽しく参拝した。楽しい祭りのあとのきもだめしは、昨年の記憶が鮮明な子供達はたくみ一人に押し付けた。
全く怖くないたくみは弥一と一緒に懐中電灯片手に廊下をるんるんで歩いてしまった。そのせいでシスターに見つかって――
現在、シスターが事務をする部屋の前の廊下で、恐怖の反省箱に収まっているところだ。眠る支度をする子供たちがぱたぱた通り過ぎてゆく腰から下を、小さな覗き窓からぼうっと眺めるだけの、虚しい時間だ。弥一は箱の前にいて一人で喋ってくれるが、たくみが声を出して話すことは出来なかった。





