姉川の河童
神父の見ている方向へ目を向けると、人が数人川に入って遊んでいる。桜が満開の時期なのだから、水はとても冷たいはずだし、そもそも姉川は泳いでよかったのだろうか……?
歩みと共に距離が縮まってゆくと、川に入っている人が人ではないことに気が付いた。
それは頭の天辺がつるつるで、皮膚がてかてかで色とりどり、くちばしの付いた、二足歩行の……
「あれなに」
分からなくて神父に問うと、
「河童ですよ」
当たり前の様に言うものだからたくみは驚いた。
「かっぱ!」
「ええ、そうです。行ってみましょう」
神父は堤防を降りて河童に近づいていった。
「おはようございます」
気さくに挨拶をした神父に、川に入っている河童は一斉に振り向いて。
「おー、お前か。おはよ」
と、河童が気さくに返事をしたのだから、たくみは言葉も出ない。
すると河童はたくみをじっと見つめている。一人だけじゃない、そこにいるすべての河童がたくみをじっと見据え、ゆるゆると首が動いていき、全員が小首を傾げてしまう。
その雰囲気は、歓迎と言う感じではなかった。探りを入れるような目つきに場の空気が張り詰める。すると、
「……ぉい、長老様を呼んで来い」
青色の河童がたくみを凝視しながらいぶかしげに言うと、桃色の河童が短く返事をして姉川に姿を消した。





